日常

恐怖の原点はどこにあるか

霊、妖怪、化け物、エイリアン、モンスター…。国は違えど人間は恐怖の対象に形を与えずにはいられないものらしい。それは「形がない」(対象自体を認識できない)という事態を少しでも解消したいという欲望がそうさせるのではないか。それらは姿形が与えられ…

文字の美しさについて

汚い字に共通するのは、ある文字が画数によらず、線が離れ切っておらず、続け字のように連続的になっているという特徴をもっている点である。それは「止め跳ね払い」がしっかりしていないという言い方もできる。それに対して美しい字というのは離散的である…

あっちとこっちをつなぐ

次から次へと新しい記事や本を読むということが自分にとってはどんな意味をもっているのかについて、最寄り駅から自宅に戻る途中で、特にセブンイレブンの近くを歩きながら考えたことについて書こうと思う。 新しい言葉や言説を読むと、それがきっかけとなっ…

後ろに誰かがいるという感覚

ロードバイクでアルバイト先の校舎まで通勤しているとき、途中で前を走る男性がいた。30代後半から40代ほどの年齢だろうか。彼もロードバイクで走っていた。いくつかの交差点を通過したとき、私は彼を追い越して、彼は私の後を走った。私が交差点で止まるた…

仙人掌(さぼてん)

以前に母と電話で話していた時、母から送られてきた小さな仙人掌のことが話題に上った。仙人掌というのは、鉢の大きさによって、もっと正確に言うと植わっている土の広がりによってどこまで大きくなるかが変わるらしい。私の自宅には今、3つの仙人掌があり…

数学の考え方と人間の心

塾で授業をしていてふと思ったことがある。「方程式に数値を代入する」という考え方は、もともと人間の中に「自分だったらどうか」とか「あのときこうだったら今どうなっていたか」と想像してみる能力があったから生まれたのではないか。逆にいえば、そうい…

文章を書くことと社会との関わり

多くの人がブログやSNSという形で、インターネットを日常に不可欠のものとして使うようになって以降、ものを書く人が増えた。かつてはパブリックな場で見ることのなかった周縁の、或いは末端の「声なき声」は、日常的に可視化され、記録に残るようになった。…

認証技術と私の意識と身体

Googleで私が私のiPhoneで「タミル語」と検索するのと、別の人間がその人のiPhoneで同じ語句を検索するとき、その2つは違うものだとみなされる。それぞれの検索履歴上に「タミル語で検索し、これこれのページを見た」という記録が残り、そこから先の検索で…

情報との向き合い方について

情報の時代だとか情報爆発などと言われる。私個人についていえば、フィード購読アプリFeedlyを使って、毎日色々なメディアの記事をチェックしている。精読するのはごく少数の記事に限られるけれども、それでも色々な記事を読むことになる。新聞を隅から隅ま…

アダム・スミス批判を展開するバリー・シュワルツの記事を読んで

『なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術』*1という本を書いたバリー・シュワルツ(Barry Schwartz)という人がいる。TEDで講演*2もしている。私が彼のことを知ったのはTEDの「The Paradox of Choice」(選択のパラドックス)という講…

蛙の自我とはなんだろう

入浴中、蛙の自我について考えていた。「ニュートリノ」の自我について、埴谷雄高が考えていた*1のに触発されたのだろう。彼は考えた。たとえば人間が、「自分が自分であること」(自我)を意識するのは、何かにぶつかるからだ。何かにぶつかれば「ああ、今…

隠喩としての鉄道或いは自転車

「レールの上を進む人生」という表現がよく使われる。レールとはそもそもは鉄道のレール(線路)のことだから、これは隠喩である。隠喩とは、「まるで〜」とか「〜のように」という表現を付けず、何を例えたのかはっきりさせないままで使う比喩表現である。 …

IoTとジェスチャーと身体

Feedlyでこんな記事を見つけた。鍵を鍵穴に差し込んで回すとそれがスイッチになってTwitterでツイートできたり、Uberでタクシーが呼べたり、とAPI連携を利用していろいろなことができるようになるというデバイス。IFTTTやmyThingsなどとも連携できるらしい。…

弱いAIがもたらすものー虚体から虚思考へ

「もっと他のことを考えたい!」という欲求から、いろいろなことを「自動化」(=習慣化)していきながら、そうやって習慣化されたことは無意識に沈殿し、意識の領域に影響を及ぼす。 意識の領域で考えられることを増やすために習慣化したのに、皮肉なことに…

なにがどう転ぶかわからない、そしてどんなラッキーに巡り合うかもわからない

休日ということで、昨日はハロウィンで盛り上がっていたらしい渋谷を一応今日も避け、近場の吉祥寺にロードバイクで出かけた。 東急の近くにある駐輪場に自転車を駐め、そこから歩いてコピス吉祥寺の中のジュンク堂書店に入り、面白そうな本を買い、また外へ…

金髪で深緑のコートを着た女性

井の頭線吉祥寺駅の改札近くにスターバックスがある。久しぶりにそこで読書をしながら過ごしている。窓際の席だから、窓から駅の構内を移動するいろいろな人が歩いたり走ったり誰かを待っていたりするのが見える。 さっき、金髪で深緑のコートを着た女性が駅…

クラウド上の記憶と人間の記憶

「記憶」(memory)ということについて、EvernoteやDropboxなどのクラウド上にデータを保存するサービスを使っていてたまに考えることがある。 EvernoteやDropboxなどのサービスを使ってクラウドに保存したものは、保存した人間自身も自分の頭の中に記憶して…

アカウントと自分

アカウントにログインするとき、私はアイデンティティを自覚させられる。つまり私は他ならぬ私自身なのだということを突きつけられる。メールアドレスやアカウント名(ユーザー名)とパスワードを打ち込み、自分のアカウントにログインすると、そこには自分…

オリジナリティとはなんだろう

塾で高校生に英語の授業をしていた時、いつもの調子で何気なく生徒が言った「うまく言えないんだけど〜」という表現について、ふと考えていた。 言葉というのは、「空気を読む」や「やばい」など、特定の言葉をみんなが使うようにしておくことで、話し手と聞…

あえてシンプルに、文章だけを書くこと

「ブログ」というと、リンクを貼ったり図を入れたり、ツイートを埋め込んだりと、いろいろな「付け足し」をしながら書いていくものとされているところがある。そういうものが「リッチなコンテンツ」などと呼ばれ、持て囃されたりもする。少なくともPVの数を…

ロードバイクを買って思ったこと

ロードバイクを購入した。以前はネットで30000円クラスのものに乗っていたが、パーツ交換などでやたらお金がかかることもあって、ある程度値段のするちゃんとしたロードバイクを実店舗で買おうと考えた。 自分がここへきて突然のようにロードバイクの購入を…

私たちが対話の相手ではなく画面を見つめるようになって何が変わったか

高校生の現代文で出てくる評論の文章からは学べることがかなりあるのでたまに読み返してみたりする。昨日も若林幹夫「メディアと市民的公共性」という文章を読んだのだが、メディアと人間の関係について改めて考えさせられるいいきっかけになった。こういう…

漫画のワンシーンから考える人間とテクノロジーの関係

自宅の近くに餃子とラーメンが食べられる(定食もある)店がある。さっき久しぶりにその店で食べてきた。 注文した札幌ラーメン(味噌)とチャーハンを待っている間、店の入り口に並べられた漫画の中から面白そうなものを探していると、以前から書店で見知っ…

「人間は変わらないさ」とアルゴリズムは考える

Feedlyで購読しているTechCrunchのサイトで「Past Behavior Does Not Determine Future Purchase」というタイトルの記事を見つけた。*1 タイトルを意訳風に訳すと「ネット上での過去の行動によって、これから買うものは決まったりしないよ」というところ。最…

キャベツを食べていて思ったこと

冷蔵庫の中のキャベツがそろそろ食べないと危なそうだな〜という感じだったので、半分は玉ねぎと一緒に野菜炒めに、残りはドレッシングをかけて食べた。なんともお粗末な料理だけれども、美味しかった。 キャベツを食べていて「とてもおいしいなあ」と思いな…

タグをもとに検索しても新しいものに出会えないのはなぜか

よくツイッターなどでハッシュタグ(#)のついたツイートを検索したりする。そこで新しいものが見つかるかもしれないと思って、いろいろなユーザーのツイートを見るのだが、基本的には新しいものに出会えることはない。それはどうしてか考えていて、さっき…

興味がないものは、視界に入っていてもちゃんと見えてはいない

先日アルバイト先の塾でこんなことがあった。いつもの様に高校生の授業をしていたら、担当している生徒が「高校の英語の先生が面白くて、宮崎駿に似ている」という話をし始めた。写真があるというので見せてもらったら、髭をたくわえたおじさんではあるもの…

素直になるのが、たぶん一番難しい

脳科学者の中野信子さんのブログ記事を見ていて、「ああそうか、『ブログ』って本来はウェブ上のログのことだから、変にがんばらずに気軽にログを取っていけばいいのか」と思い、今回はいつもより気楽な感じで記事を書いている。ちなみにそのブログ記事はこ…

言葉の問題、検索の問題

昨日、母とメールで「格差」についてのやりとりをした。私は最近読んでいるモイセス・ナイム『権力の終焉』の内容などを引き合いに出しながら、こんな風に書いた。 「世間ではトマ・ピケティの書いた『21世紀の資本』などを中心に、格差、格差と言っているが…

ドラマ「いつかティファニーで朝食を」の第一話を見て

10月10日から日本テレビで始まったドラマ、「いつかティファニーで朝食を」の第一話をHuluで見た。あるシーンを見て吐き気がするほど気持ち悪いと感覚を抱き、一度見るのをやめてしまったのだが、「そんな風に何かを途中で投げ出したり切り捨てたりするのが…