内省

興味がないものは、視界に入っていてもちゃんと見えてはいない

先日アルバイト先の塾でこんなことがあった。いつもの様に高校生の授業をしていたら、担当している生徒が「高校の英語の先生が面白くて、宮崎駿に似ている」という話をし始めた。写真があるというので見せてもらったら、髭をたくわえたおじさんではあるもの…

素直になるのが、たぶん一番難しい

脳科学者の中野信子さんのブログ記事を見ていて、「ああそうか、『ブログ』って本来はウェブ上のログのことだから、変にがんばらずに気軽にログを取っていけばいいのか」と思い、今回はいつもより気楽な感じで記事を書いている。ちなみにそのブログ記事はこ…

言葉の問題、検索の問題

昨日、母とメールで「格差」についてのやりとりをした。私は最近読んでいるモイセス・ナイム『権力の終焉』の内容などを引き合いに出しながら、こんな風に書いた。 「世間ではトマ・ピケティの書いた『21世紀の資本』などを中心に、格差、格差と言っているが…

ドラマ「いつかティファニーで朝食を」の第一話を見て

10月10日から日本テレビで始まったドラマ、「いつかティファニーで朝食を」の第一話をHuluで見た。あるシーンを見て吐き気がするほど気持ち悪いと感覚を抱き、一度見るのをやめてしまったのだが、「そんな風に何かを途中で投げ出したり切り捨てたりするのが…

何を自動化し、何を自動化しないか

普段ニュースといったらSmartnewsとNewsifyというアプリの2つを中心に使っている。ちなみにテレビは見ない。そのNewsifyで読んでいた記事の中に、「Newsphere」という見慣れないニュースサイト(記事は日本語)があった。 newsphere.jp そのサイトをMacBook…

検索エンジンと人間の関係について考える

【目安時間:10分】 関心の変化 検索エンジンの役割について再考する あえて情報を引き出す手間をかけることの意義 人工知能と検索エンジンの関係という問題 関心の変化 久々にブログを更新する。前回の記事は大学院の院試の直前で、まだそれに向けてルベー…

また明日からルベーグ積分の勉強がんばろう。

2ヶ月以上も更新していなかった。今年は割とちゃんと記事を書き続けてきたものの、最近になって急に記事を書く気がなくなってしまっていた。いろいろと悩んだりすることもあり、精神的に停滞しきっていた。 それでもひょんなことがきっかけであっさり元通り…

幽霊論

【字数:950字 目安時間:2分】 (出典:【画像も】怖いくらいに美しい松井冬子の作品の値段などを大発見! | まとめアットウィキ - スマートフォン いずれも東京芸大出身の画家、松井冬子さんによる作品。不気味なものがまさにその不気味さを前面に出し、そ…

電車の中のセル・オートマトン

【432字 目安:1分】 電車の中で、音出してスマホのゲームしてるヤンキーみたいな格好した若いあんちゃんがいて、シャンシャンシャンシャン音がうるさいから直接言おうかと思ったけど、今日はできなかった。 彼は他の人に言われることもなく、したがって自分…

高校の数学Aを日常に応用する

【509字 目安:1分】AならばBが成り立つとき、BだからといってAとは限らない。日本人だから人間だ、が成り立つからといって人間であれば日本人であるとは限らない。能力や人格が優れた人ならばお金をたくさん稼げる、が成り立つからといって、たくさん稼げた…

両極端に走りがちな世論

【1745字 目安:3分】 ISIS=イスラム教徒=悪者 という謎の方程式がでっちあげられている印象を受ける。 そしてメディアではその反動として、「イスラム教徒は危ない人達ではない」と主張する記事も増えている。直近で見たものだと例えばこれ。 <a href=…

しるしのつながり

私はよく誤解をする。「〜は〜だからではないか?」「〜と言ったあの人の意図は〜ということなのではないか?」「〜というこの状況は〜ということを意味しているのではないか?」など、それはもう色々なしかたで誤解する。 「精神的な距離は物理的な距離とし…

「かわいそう」と「ひいてる」の使い方

「かわいそう」という言葉は、「かわいそうだ」と思う人のいるその場で使ってはいけないんだと思う。「かわいそう」という言葉もまたその人を傷つける。 同じように、「〜さんひいてるじゃん」という言い方も、その「ひいてる」ように見える人のいるその場で…

群選択における群の階層

「群選択」(group selection)という言葉を使う場合、通常は自分個人ではなく、自分の所属する集団にとって望ましい選択とされる。気になるのはこの「自分の所属する集団」というところで、互いに階層の異なる複数の集団にある個人が所属している場合、個人…

SNSにおける「悪意」の拡散

SNSを見ていると、「悪意」をもった書き込みがすごい勢いで拡散・展開していくのをよく目にする。「いいね!」や「RT(リツイート)」など、SNSは個人の投稿を拡散することがシステムの根幹をなすように設計されている。特にFacebookは「羨み(Envy)」を拡…

イライラを活かす

私は基本的に怒らない。それは疲れるということもあるけれども、なにより「怒っても問題は解決しない」と経験的に感じているから。怒るくらいなら何が問題かをきちんと話し合う方が前に進める。しかしだからといって、イライラしないかというとそうでもない…

集団を支配する無意識

「集団がまずあって、個人というものがそこから分化して発生してきたという順序だと私は考えている」というようなことを以前の記事に書いた。しかし、今は「個人」(individual)というものが生まれた後の時代であるから、「個人から集団へ」という順序もあ…

「らしさ」ってなんだろう

「〜らしい」という言葉がよく使われる。「女性らしい」とか「◯◯さんらしい」とか「日本人らしい」など、例はいくらでもある。しかしどれも「それってどういうこと?」と聞かれると、それほどうまく答えられるものではない。 例えば「女性らしさ」というのは…

エビングハウスの実験と記憶について

「エビングハウスの忘却曲線」というのがある。最初に何かを覚えてから、時間が経つにつれてどれくらい忘れていくかということを曲線で表したもので、よく勉強法の話題などで取り上げられる。 (出典:エビングハウスの忘却曲線 | SAKURA PRESS) この画像に…

都市の人々は地動説を獲得できるか

(品川区南大井にて撮影) (三鷹市井の頭の三鷹台駅ホームにて撮影) 都市には高層ビルが立ち並び、高い壁に遮られた空は、人々にとって高く感じられる。それは人々の立つ地上の遥か上空に地上と平行に拡がっているように感じられやすいだろう。 しかしもし…

「最高の娯楽は学ぶこと」に対する不安

私にとって、最高の娯楽は学ぶことであり、普通の遊びを私はほとんど知らない。「遊びを知らない男はつまらない」という世間の価値観があまりに強すぎて、私は自分の足元がぐらついているように感じることがこれまでに何度もあった。今でもたぶん心のどこか…

私は他者と出会っているか

前回の記事では、「祭り」において私と他者とが互いの異質性を失い、同質な存在として集合するということを考えた。或いはもう少し前の記事では、「叶わぬ願望」を契機として、偶像化された他者と、現実とは反転した「理想としての私」とがどのような形で関…

祭りをめぐる集合意識と個人の同質性

最近、木村敏さんの『時間と自己』(中公新書)を読んだ。もともと興味があった本ということで読み始めたのだが、近頃の関心である「大衆」や「集団と個人」というところとも関係する内容であることに気付かされた。 大衆については「多数決で正しいことを決…

バレンタインデーの1日

今日は日記風に書いてみようと思う。 バレンタイデーということでGoogleのトップページも案の定面白いことをしている。 去年の10月以来、久しぶりに髪を切った。すっかり前髪が伸びてしまっていて、風の強い日は少し鬱陶しさを感じるような状態だったが、そ…

アイドル・偶像・ヒーロー

ある個人の心の隙間に入り込むものについて、以前に記事を書いた。そこでは個人の絶望や断念が、心のうちに隙間を生み出し、他者と連帯していく事態を中心に記した。それに対して今回は、絶望や断念が、特定の他者のもとに帰属し直す事態、つまりアイドル・…

安易な一般化の問題ーりんごが赤いからといって、果物がすべて赤いとは限らない

このブログもついに100個目の記事になった。なんだか妙に感慨深い。 今回は固定観念とかバイアスということについて、最近の例も挙げつつ書いてみようと思う。あらゆる暴力性や残酷性は、必ずしも悪意に由来するとは限らず、無知や偏見に由来する場合もあっ…

天気みたいなもの

トピック「本屋」について、幾つかの本をもとに「天気」について考えていることを書いてみようと思う。 天気といえば、国境などおかまいなしに広がって刻々と変化していて、ある時ある国の上空にあった雲が、風に流されて他の国の上空に移動したり、あるいは…

好きということ

誰かが誰かを好きになるとき、相手のどこが好きになったのか、わかる場合とわからない場合がある。「わかる」というのは「相手のどこを好きになったのか」と聞かれて答えられる、くらいの意味だ。 それに対して、相手をずっと好きでいることは、「わからない…

表現の自由をめぐる空気と「何が消えたか気付かない問題」について

近頃は色々な出来事について、色々な人が色々な立場から色々なコメントをしているけれども、一つの大きな潮流として「表現の自由を守れ!」というのがある。 イスラム国(ISIS或いはISIL)による日本人の人質事件、フランスのシャルリー・エブド紙の風刺画の…

こころの隙間に入り込んでいくもの

「考えずにお手軽にインストールすること」の根本的な問題について考えたことを書こうと思う。 福岡にいた頃には、新興宗教や詐欺の勧誘を経験することがなかった。しかし東京に出てきて以降、そういう勧誘を何度か経験した。ときにはかなり危ないところまで…