様々なる情報処理
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名前からして当然といえば当然なのかもしれないが、情報処理の効率性についての研究が一番進んでいるのはやっぱり情報科学の分野だろう。
情報処理に使う「要素」の数の多さに対する効率性という点で。
この分野の技術進歩は著しく、今やインテルのCore i7プロセッサーに詰め込まれたトランジスタの数は7億7400万個。中国の人口の半分の数の要素がひとつのパソコンの中に詰まっている。そしてスペックは様々ながらこうしたパソコンやスマートフォン、タブレットが世界中に散らばって広大なネットワークを形成し、時には独立に、時には並列分散の計算を行っている。
今から50年前に発表された「ムーアの法則」はコスト的にそろそろ限界じゃないかと言われているものの、今の時点で情報処理に費やされる要素の数はインターネットがダントツで一番多い。もともとは脳における神経細胞のネットワークに着想を得て設計されたものが、脳を遥かに超える要素からなるネットワークとして世界中に広がっている。
2番目は神経科学(脳科学)だろう。
人間の脳細胞の数は、大脳新皮質だけでも150億だから、現在の地球の人口の二倍以上の要素を使っての情報処理ということになる。脳全体では1000億。これだけの数の要素をうまく利用するために、言語や概念を利用している。並列分散型の情報処理を行っている。
3番目は社会科学だろうか。たとえば政治学の領域で扱う「政治的意思決定」という名の情報処理は、中央集権の極限としての独裁から、代議制民主主義、直接民主制などいくつかのバリエーションがあり、「国家」を単位として、要素の数は数百万〜数億の規模がほとんどだ。世界的には今のところ「代議制民主主義」という情報処理形態に最も人気があるということになっている。
経済学であれば、経済を構成する成員に対する効率的な資源配分という形で最適化を考える。配分に歪みをもたらすものはなるべく取り除く一方で、外部性などの欠陥は政府の介入を許して対処する。
ミクロ経済学であれば一企業を中心に情報処理を考えるから、極端な話数人の規模から大きなものでは数十万人の規模まで、広い範囲の集団による情報処理を統一的に扱う。
マクロ経済学であれば、単位は基本的には国家であるから、要素の数は政治学と同じだ。
国際経済学となるとプレイヤーが「国家」ということになるから、要素の数はざっと2〜200程度になる。
4番目に生物学が入ってくる。
「社会性昆虫」としてしばしば引き合いに出されるミツバチが、食料を集めるために動員するコロニーの規模は数万匹。古代ギリシャのポリスと同じくらいの規模。
ちなみに日本の生産年齢人口6000万、或いは国家公務員35万人で1億2000万人を対象とした情報処理をやるとしたら、どうなんだろう。
情報処理は様々なレベルで存在する。要素の集まりが有機的に結びつき、全体として何らかの機能を持つ場合に、それを「システム」と呼ぶとすると、システムはミクロからマクロのどのレベルにも存在する。
さてそんな中で、人間の集団による情報処理の問題を扱うとき、どんな風に考えればよいだろう。社会科学はこれまで、情報処理の観点から理論を洗練させるという視点はほとんどなかった。
大規模なシミュレーションが可能になった今、どんな情報処理の形態がありうるだろうか。