コラーゲンとコラーゲンペプチド

 

 時代遅れの「常識」をアップデートしないまま素朴に信じ続けることについて、訪問販売員の方とのやりとりを通して私が学んだことについて、自戒を込めてここに書いておこうと思う。

コラーゲンの効果

 先日明治の訪問販売の人が来た。R-1や牛乳、ブルガリアヨーグルト、LG21など、馴染みの商品がカタログに並ぶ中、「明治うるおうコラーゲン」という商品が目に止まった。私はその時点ではコラーゲンの効果を信じておらず、「あの明治がコラーゲン飲料を?」と思い、販売員の方にもコラーゲンに関する自分の知識を元にいろいろ話をした。

 やがてひとしきり話が済み、私はR−1の宅配サービスを契約したのだが、販売員の方が帰ったあと、商品が紹介されているパンフレットのコラーゲン飲料のところに書かれていた「低分子コラーゲン」という用語が気になり、さっそくググってみた。もしかしたらただのコラーゲンとは違い、低分子のコラーゲンなら効果があるということなのではないかと思ったからだ。

 一般に「コラーゲン」と呼ばれるものは経口摂取では体内でアミノ酸に分解されてしまうので、他の食材と違いはないということが知られていて、もはや効果がないことは科学的な常識といっていいレベルだと私は思っていたため、そんなものをあの明治が堂々と売り続けているのもおかしいという思いもあった。商品開発に携わった人たちがとっくに効果の否定されたものを使って商品を作り続けるはずがないと思ったのだ。少し前に「水素水」が話題になったので、もしかしたら企業によっては効果の疑わしいものでも開発して世に出してしまうところもあるのかもしれないが、さすがに明治は違うのではないか、と。

 検索の初めの方で目にしたページはコラーゲンペプチド(低分子に分解されたコラーゲンのこと)の効果について懐疑的に書かれているページが多く、そういうページを読んでいて私は「なんだ、結局低分子でもコラーゲンは効果ないんじゃん」と思った。たとえば明治大学このページではコラーゲンペプチドの効果について懐疑的な立場をとっている。該当箇所を少し引用しよう。まずは一般的なコラーゲンの経口摂取について。

コラーゲンをはじめ、タンパク質を食べると、胃や腸の中で分解され、アミノ酸(もしくはごく短いペプチド)の形で吸収されるのが普通である。アミノ酸は体内の色々な部位に運ばれ、そこでタンパク質として再合成される。つまり、コラーゲンを食べたからといって、それが体の中にそのままの形で運ばれ、機能するということではないのだ

 冒頭で示したコラーゲンに関する私の理解もこれと同じで、「どうせ体内で分解されてバラバラになるんだから意味ないじゃん」と思っていた。私に限らずコラーゲンについてこうした理解をしている人は少なからずいるのではないだろうか。続いて少し長いがコラーゲン一般でなく低分子コラーゲン、つまりペプチドに分解されたコラーゲン(コラーゲンペプチド)の場合はどうかという箇所を引用する。

 次に、コラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)言説について説明する。 
 前述のように、高分子であるコラーゲンは消化吸収性が悪いため、体内においてコラーゲンを再合成する役には立たないとの指摘がある。では、コラーゲンをゼラチンに加水分解し、それをさらに酵素分解したコラーゲンペプチド(分子量が少ないということ)であるならば、吸収力も高くなり、体内でのコラーゲン生成にも役立つのではないか、というのがコラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)の簡単な理論である。 
 つまり、コラーゲンペプチドの形で経口摂取すれば健康効果が期待できる、といったものである。さらに、体の中に運ばれたコラーゲンペプチドが細胞に対して何らかの「シグナル」を送っており、それが細胞を活性化させているのではないか、といった仮説も現在提案されている(1)。 
 ただし、このコラーゲンペプチドの「シグナル」説などは面白い仮説ではあるが、現在のところ、それをきちんと立証できているとはいえない。 
 コラーゲン言説と比べると、コラーゲンペプチド言説の方が理論的な説明として整っており、また、今はまだ不明瞭なことは多いものの今後の発展性をうかがえるだろう。 
 しかし全体を総括すると、理論面は“推論”の域を出ておらず、秩序だった説明になっていないことがいえる。

 端的にまとめれば、理論的な仮説としてはありうる話だが、立証されていないというのがコラーゲンペプチドの経口摂取による効果に対するこの記事の評価といえる。

 「立証されていない」という表現に私は満足しそうになった。こういう表現はそれ以上の探求を阻む効果のある強い表現だと思う。立証されていないと言われてしまえば、ついつい「それじゃあだめだな」と思ってしまう。そして私はそのまま考えを進めた。販売員は組織の末端であり、科学的な知識が十分とは言えない。そのため必ずしも効果があると実証されたわけではない商品を、そうと知らないまま売らなければならない可能性がある。もし販売員が何かのきっかけでそのことを知った場合、良心の呵責を感じたりするかもしれない。そういう記事を過去に読んだこともあった。私はこういう考えを裏書きするようなことを優先的に思い出してしまっていた。確証バイアス利用可能性ヒューリスティックかもしれない。

アップデートのきっかけを発見

 しかし、そんな風に考えつつも私は検索を続け、「効果がある」という立場のページを探した。するとやがてそれらしいページを見つけた。もし効果があるということであれば、私のコラーゲン理解の一部(低分子コラーゲンに対する理解)はアップデートされることになる。効果があるということの裏付けになりそうな箇所を記事の中からいくつか引用しよう。まずはコラーゲンが体内で消化される場合の特徴について。

 通常、“たんぱく質”は20種類のアミノ酸がつながったもので、それを食べると膵臓から出た消化酵素でバラバラに分解されて、単体のアミノ酸として小腸から吸収され、体の中で作り変えられます。ですので、牛や豚を食べても、体が牛や豚にならずに、ヒトの体の材料として使われます。

 ただ、たんぱく質の中でコラーゲンだけは、ヒトの消化酵素で分解し難く、ジペプチド(アミノ酸が2個くっついたもの)、トリペプチド(同3個)などのペプチドの形で小腸から吸収され、血液中に移行して存在します。

 これらのことがはっきりわかってきたのは、ここ5年くらいのことですので、コラーゲンの専門家でなければご存知ない先生も多いです。最近では、ジペプチドなどで吸収されることが、管理栄養士の国家試験においても出題されるようになりました。(出典:コラーゲンペプチドの機能性研究〜皮膚・関節・骨について〜|コラーゲンの全てがわかる情報サイト|コラーゲンナビ)

  このページの元になった講演会が開催されたのは2015年11月13日なので、引用箇所の中で「ここ5年くらいのこと」と書かれている時期は2010年頃からと考えられる。すると今度はその期間に出た論文の中に、このことを裏付けるものがないかということが気になる。そういう実験について言及している箇所が記事の中にないかなと思いながら読み進めていると気になる箇所があった。少し引用しよう。

食品の「ゼラチン」ゼリー等でもPOなどの活性型コラーゲンペプチドを吸収できますが、「コラーゲンペプチド」のサプリメントとして摂取した方が2倍近く多く吸収でき、吸収の個人差も少ないというデータがあります。

 そうすると今度はこういうことを実験で確かめた論文を探せばよさそうだという方針がたった。引用したこのページの関連リンクの中に「そうだったんだ!コラーゲン!!〜コラーゲンが効くメカニズム解明〜」と題されたページを見つけたので、論文を探す参考になりそうだと思い、まずはそのページへ飛んだ。すると記事の中でいくつかの論文に言及している箇所を見つけた。少し長いが引用しよう。

 かなり以前から、肌や関節の状態が改善されるとのエピソードがありました。近年では、その体感性の高さからコラーゲン市場は拡大しています。国民レベルでは、コラーゲンが肌に良いのは合意事項になっています。かたや、アカデミアでは、今は変わってきましたが、「そんなことあるはずがない」、「プラセボ効果に決まっている」との批判が続いていました。

 批判があったのは当然のことで、従来の栄養学では、タンパク質・ペプチドを食べると、胃、小腸で、アミノ酸と小さなペプチドに分解され、アミノ酸が2個、3個つながったペプチドの形で小腸が吸収することはあるが、血中に移行した時点でアミノ酸まで分解されてしまう、ということが常識でした。

 つまり、コラーゲンペプチドを食べても、アミノ酸が吸収されるだけ。ヒドロキシプロリンは再利用されない(体内のタンパク質合成には不要)。コラーゲンの他の主なアミン酸であるグリシン、アラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギンは、ブドウ糖から合成可能。これらから、コラーゲンペプチド食べなくても、タンパク質は合成される。と言われていました。

 それに対して、コラーゲンペプチドの研究が進んできて、2009年には、プラセボを用いた二重盲検試験(本人にわからないように偽薬とコラーゲンペプチドを食べてもらう群を分けて測る)において、1日5gのコラーゲンペプチドを4週間摂取することで、30歳以上の被験者では、肌の角質水分量の上昇が認められました(大原ら 日本食品科学工学会誌 56, 137-145, 2009)。

 2014年の直近の発表では、同様のきちんとした試験において、1日2.5g、あるいは、5gのコラーゲンペプチドを4週間摂取することで、50歳以上の被験者では、肌の弾力が20%以上上昇することが認められ、また、1日5gを4週間摂取することで、45歳〜65歳の被験者の肌のシワ容積が減ることが確認できました。その際、被験者の肌の組織を取って調べたところ、コラーゲンやエラスチンなど、肌のタンパク質の合成が促進されていることもわかりました(Skin Pharmacol Physiol 2014;27:47–55)。

(出典:そうだったんだ!コラーゲン!!〜コラーゲンが効くメカニズム解明〜|コラーゲンの全てがわかる情報サイト|コラーゲンナビ)

  論文執筆者の名前や発表年など、論文に関する情報がより具体的に示されていたので、これらの情報を手がかりとしてGoogle Scholarで検索してみたらすぐに見つかった。引用中「大原ら日本食品科学工学会誌 56, 137-145, 2009」と書かれた論文がこれで、「Skin Pharmacol Physiol 2014;27:47–55」と書かれた論文(英語)がこれである。

 つまり、初めに引用した明治大学のページを含めたいくつかのページの執筆者はは2009年の大原らによる論文やその後2014年に出たE. Prokschらの論文を知らない可能性がある。つまり知識がアップデートされていない、と。もっとも私自身もそれは同様で、こうして時間をかけてコラーゲンペプチドの効能についてググらなければ、私の中のコラーゲンに対する知識はアップデートされないままだったかもしれない。つまり訪問販売員の方は商品の効果について心配する必要もなく、自信をもって売ればいいということだったのだ。玄関口でアップデートを怠った中途半端な知識をもとに「でもコラーゲンって経口摂取だと効果ないですよね」などと知ったかぶりのようなツッコミをした私が間違っていたのだ。全くもって情けない話である。訪問販売員の方になんとかして電話でこのことを伝えようかとまで思ったが、結局電話はかけなかった。もしもまたその方に会う機会があったら、そのときに伝えようと思っている。

反証可能性とアップデート

 今回はたまたま気付いたからよかったようなものの、私が今頭の中に抱えたまま、アップデートされずにいるあれやこれやの知識の中に、現在では評価が180度変わってしまったものも含まれているかもしれない。それら全てを無事にアップデートできればいいが、アップデートする前にその知識を訳知り顔で他人に開陳し、相手も相手でそれについて特に詳しいわけでもないから素朴に信じてしまったりするかもしれない。いや、これまでの経験上、そういうことは何度もあった。なまじ「色々なことを知っている」と思われるばっかりに、相手も簡単に信じてしまったりして、科学的知識の前提である反証可能性(falsifiability)が担保されない環境で知識が広まってしまう。アップデートのためのなにかいい方法を考えなければと思った。

ハイパーリンク島宇宙

 これはあくまで推測だが、たとえばコラーゲンペプチドをコラーゲンと区別せず、上に紹介した大学の研究所のような権威のありそうなページが効果がないことの「根拠」とされているページが少なくないとしたら、それを読む多くの人々はいちいち自分で反証を探したりせず、「まぁ大学の研究所がそう言ってるんだから正しいに決まってる」と結論づけてしまうかもしれない。つまり「効果あり」ということを解説したページとの間にリンクが存在せず、効果なしと解説されたページ同士のつながりだけで完結して閉じてしまっているとしたら。

 情報社会論の文脈では、しばしば政治的な問題に対する立場をめぐってインターネット上に複数の「島宇宙」ができてしまっていることを指摘する議論を何度も目にした。アメリカでは国民どうしの分断が問題になっているが、ネット上でも分断は起こっている。

 ハイパーリンクが貼られたページへ飛ぶ人間がどれくらいいるのかはわからないが、そもそもハイパーリンクが貼られていないページとなると遥かにアクセスしづらくなる。ハイパーリンクの有無がネット上のページのアクセス数の分布は変わってくる。特に今回のように科学的な専門知が問題となる話題については、島宇宙によるページ集合の分断はやっかいだ。コラーゲンペプチドなら効果なしと信じていても実害はないが、これが原発遺伝子組み換え作物食品添加物となってくるとそうはいかない。

 

新書とハイパーリンクとランク付け

 

時間軸上の棲み分けの混乱と短期ブラックホール

 加計学園東芝SMAP解散など、不祥事や事件が起こると専門家は原因追求、マスメディアは主に犯人探しに奔走し、大衆はマスメディアの情報を通して「犯人(責任者)は誰か」に関心を向ける。東芝のトップは誰か、東電の幹部は誰か、安倍総理の側近の官僚は誰か…。一方で「そういう事件が起こった背後にはどんなメカニズムがあるのか」というようなことについて書かれた記事は少ない。専門家による調査や分析がなされ、その成果が公開されても、それは大衆とマスメディアのどちらからも目につかないような、目立たないところにあったりする。

 大衆とマスメディアがソーシャルメディアを介して相互作用している頃、専門家たちはその場からは少し距離を置いて迂闊な発言は控え、事件の詳細を調べることを優先する。専門家の作業には時間がかかるが、やがて形がまとまれば書籍化を通じて社会にフィードバックされる。もちろん専門家の中には、事件が進行している最中に自身の専門的判断を示す記事を書いてソーシャルメディアに投稿する人間もいる。けれどもそれは、他の多くのわかりやすいセンセーショナルな報道なり投稿なりの影にかくれて目立たないことが多い。

 マスメディアによる報道と専門家によるフィードバックはそもそもタイムスパンが異なる。それはそれぞれが果たす役割の違いに由来する。いわば「時間軸上の棲み分け」である。マスメディアは事件の推移についてなるべくリアルタイムに近く報道し、一方で専門家は時間をかけて事件の内容を検証し、その内側にはたらく論理や他の事件との関係、あるいはその事件が起こる背景にはどういう要因が存在するのかといったことについて、まとまった分量の作品を出して世間に知恵のフィードバックを返す。たいていは大衆が特定の話題に飽きた頃、経済的な論理に従ってマスメディアが話題を変えた頃になって初めて、書籍が登場する。しかし書籍は、犯人探しに目を向けた人々の数に比べればごく一部の物好きたちにしか届かない。知恵は社会にフィードバックされても、共有されなければ意味がない。

 書籍というかたちで結晶化した知恵が機能不全になった背景には、ソーシャルメディアの影響力が増した状況がある。ソーシャルメディアでバズるかどうかは短期的な現象であって、バズらなければ人々は目にする機会がない。そもそも目にされなければ、それは存在しないのと同じであるという考えから、マスメディアだけでなく専門家たちもまた、バズるかどうかという短期志向に引っ張られてしまう。ソーシャルメディアの普及が生み出した「短期レース」というところだろうか。

 そして書籍化にも階層が生まれ、大体は参考文献も索引も適当な新書でお手軽に「結局どうすればいいのか」という処方箋を強調する短期志向なものばかりが書かれ、「どうしてそういう対処法がいいと考えたのか」に十分な紙幅が割かれなっている。理解なくして応用はできない。結果だけを示されて過程を理解する努力を怠っていても、応用などできるはずがなく、そういう本を読んでいてもうまくいかないのは当たり前のことではないかと感じる。

 たとえば「時間がないからさっさと結果だけを教えてくれ」と言われて、「E=mc^2」という式を示したとして、それを現実で応用できる人が何人いるだろうか。一方でどのような過程を経てこの式ができたのかという導出の過程まで含めて式を丁寧に理解した人間は、結果だけを示された人間よりも応用がきくのは自然なことだろう。過程を理解するには時間がかかるし、過程を示すのにも時間がかかる。それでは短期レースに飲み込まれず、時間軸上の棲み分けをうまく機能させるにはどうすればいいのだろうか。これについて考えるためのとっかかりとして、新書とカリキュラムの機能から始めようと思う。

読書のカリキュラム

 新書とは別に単行本も存在するが、新書しか読まない人は単行本へアクセスしづらい。この点はもう少し説明が必要だろう。新書ではよく「はじめに」の部分で、「あくまでも本書を足がかりとして、〇〇の分野の奥深さを探求し続けて頂ければ」云々といった但し書きがある。しかし紙幅の都合のためか、巻末に参考文献がないこともよくあって、「この後は何を読めばいいのか」がわからないままになってしまいがちなのがもったいないと感じる。

 ここでまず私個人のこだわりについて触れておく。「青森県民は…」や「20代の女性は…」などのカテゴリーで個人を判断するのが偏見につながりかねないので注意が必要なのと同様に、書籍においても「ライトノベル」や「新書」といったカテゴリーで内容の善し悪しを判断したくはない。その意味では「新書だからよくない」と考えるより、「新書がうまく活かされてない」という方向で考えたい。これが私のこだわりである。

 新書は一般に、ある分野や問題について考えるための入口、導入、入門書という位置づけで書かれることが多い。それを反映して、「はじめに」の中であくまで導入ということを強調する一文が挿入されることも少なくない。問題は入口、導入、入門書の「その先」へのアクセス方法が新書の中で示されているかどうかという点にある。

 これを大学の講義にたとえると、初回のガイダンスや各回の講義の冒頭(イントロ)に相当するのが新書であって、それ自体は必要であることは間違いないが、それだけで完結してもらっては困る。もし大学の講義でガイダンスしかなかったり、講義の冒頭のイントロで終わってしまったら、学生はどう思うだろうか。

 新書という媒体は、もしもそれが導入として書かれたものであるならば、その新書自体を含む複数の書籍を読むことがカリキュラムのように想定されていることが重要で、そういうカリキュラムを構想するのは著者でも編集者でもその両方でも構わない。「さらに知りたい方のために」と巻末で関連書籍を紹介している新書の場合、複数の媒体にまたがった読書経験のカリキュラムについての構想を著者が示してくれている。講談社ブルーバックスなどの理系の本ではこういうものがけっこうある。「自分の媒体を超えて他の媒体を跨ぐ」というインセンティブは著者にしかないのだろうか。

 私がここで新書の抱える問題やカリキュラムということを書いたのは、新書を読むのは短期であり、カリキュラムは長期であるということと関係する。言い換えれば新書しか読まないというのはマスメディアの報道に触れているのと本質的にはあまり変わらず、一定の時間をかけてカリキュラムのようなものに沿って複数の本を読むということをしなければ、本当は知恵を得ることはできないのではないかと考えるためである。もちろんマスメディアの報道だけに触れているよりは関連する新書を1冊読む方がましではあるが、ある問題の全体像を理解するには、新書で十分という想定は、私にはできない。

 WELQなりNAVERなりの「キュレーションメディア」*1が生まれる前からずっと、思えば「本」こそがもっとも質の高いキュレーションメディアとして機能し続けてきたのではないか。正確な情報を知りたいと感じる人間が、雑誌や新聞やテレビ番組でなく、単行本として出版された本を参照するのもこういう認識が背景にあるのではないか。そしてこの「キュレーションメディアとしての本」という定義に即していえば、ウェブにおけるハイパーリンクと同じように、本はその本来のポテンシャルが十分に発揮されてないのではないか。

 ここでいきなりハイパーリンクがなんの脈絡もなく登場したように思われるかもしれないが、1冊の新書で終わらずに他にも複数の本を読むという発想は、ハイパーリンクの前提にある発想とも共通するというのが私の考えである。次節ではこの点について説明しようと思う。

ハイパーリンクの哲学

 ハイパーリンクというのは、ある一つの単位がそれ単体で完結していることが稀であって、それと関係する他の複数の単位と結びつくことで一つの全体像が明らかになるという、本や論文の構成と通じる認識が背景にある。物事を何かひとつの単体で理解するのではなくて、複数の要素の関わりとして捉えるといってもいい。しかし人々は、検索エンジンを使い続けるうちにハイパーリンクのこうした基本認識から離れ、「自分が知りたいことと一番関係ありそうなページ」のランク付けにどっぷり浸かり続け、もはやそのことに疑問すら抱かなくなってしまうほどに慣れきってしまったのかもしれない。人間に限ったことではないが、生物は反復によって外的環境に適応する。それが道具との関わりであっても事情は同じであるようだ。

 ランク付けを至上命題とする検索エンジンに対して、Wikipediaのいいところは、検索ボックスに打ち込んだ語句との関連性よりもむしろ、個々のページどうしの関連性を整理することに主眼を置いて作られているところではないか。「何か一つのページを見ればそれで解決!」ということを防ぐ可能性がシステム自体に初めから内在しており、当然ながらそれはハイパーリンクの思想とも相性がよい。Wikipediaは内部のページどうしのハイパーリンクだらけである。この結合は極めて自然なものに思える。

 これに対してGoogleで検索結果として表示されたページのリストでは、1位が一番のあなたの関心に関連性があり、2位が2番目、3位が3番目に…と続くが、1位と2位のページはお互いにどんな関連性があるのかということは重視されない。そこがWikipediaとは明確に異なる。

 マスメディアと書籍というメディアの間の棲み分けと短期のブラックホール、短期のブラックホールに影響されるように生じる新書ブームと読書のカリキュラム、そしてハイパーリンクについて順を追って述べてきた。ここまできてようやく、これらのことがらと私個人の特徴との関係が示しやすくなったのではないかと思う。何かについて芋づる式に調べることが好きな私のような人間からすれば、自分が知りたいことに一番関係がある本やウェブページだけで満足しろというのがそもそも無理な話で、たいていの場合は複数の本を読んだり、検索して出てきたウェブページを複数見ることになる。そういう場合はWikipediaの発想で構成されたものの方が助かる。そもそもひとつのページの中で自分の知りたい情報が全て網羅されているとどうして想定できるのか。そういう場合もときにはあるだろうが、そういう場合だけを前提としてシステムが構築されているとすれば、それは困る。 

 思うにこれはずっと本を読み続けていることと深い関係があって、何かについて理解するときの基本となるプロセスが、一冊の本がどうやって構成されているかということと同じ様に、多くの要素の適切な配置を実現させるという方針で進むことになる。

検索への欲望と検索についての他者の欲望

 最近ようやく内定をもらい、9月からは働き始めることになりそうだ。ここ2ヶ月ほどの就活では、ウェブ上の情報を有効利用する方法について、自分の持つ構想を語ることが何度もあった。それに対して相手が「検索する前にコンピュータが予測して結果をVRで確認できたらいいよね」と返答した場合が複数回あって、エリック・シュミットと発想が同じだと感じた。おそらくはGoogle的なものと接し続けているうちに、ユーザーもどんどんエリック・シュミットと似たような発想をするように変化してきたということなのではないか。逆にいえば、Googleを使わない人間はそういう影響を受けにくく、これから現れる全く別の検索エンジンを抵抗なく受け入れやすいかもしれない。そういう発想が「アメリカ的」とか「シリコンバレー的」とか「技術決定論的」とかいろいろ呼ぶことができるだろうが、そういうラベリングのどれが適当かということとは別に、特定の発想にいつのまにか影響されているのではないかということの方が気になる。

 2015年の11月4日、ルネ・ジラールが亡くなった。人間は対象自体を欲望することはできず、他者の欲望を欲望することしかできないのではないかと彼は考えた。もしかしたら検索に関する我々の多くの欲望は、検索自体よりもむしろ特定の誰かの欲望に感染してそれを欲望しているにすぎないのかもしれない。

*1:もっともキュレーションメディアによるキュレーションというのは、実態としては著作権や肖像権の侵害を辞さない素人集団による編集者不在の不法行為と言ってしまった方が妥当かもしれない。もちろんこの定義が「キュレーション」という言葉の本来の意味とまったく異なる意味であることはいうまでもない。美術館のキュレーターの方たちはキュレーションメディアの炎上についてどう思っているのだろうかと思ったりもする。

アンドリュー・ゾッリ『レジリエンス 復活力』参考文献リンク

 最近ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)の"Antifragile"が翻訳され、『反脆弱性』というタイトルで出版された。出てからひと月以上経つが、さてこの本をどういう文脈で読もうかと考えていると、アンドリュー・ゾッリ(Andrew Zolli)の『レジリエンス  復活力ーあらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か』(原題:Resilience、以下『レジリエンス 復活力』と表記する)の内容と重なるのではないかとふと思った。

 レジリエンスの概念とタレブの反脆弱性の概念は微妙に違うものだが、外的なショックに対するシステムの耐性について考えるときに2つの概念を比べると面白いのではないかと考えた。そこで『レジリエンス 復活力』について、再読も兼ねてまずは巻末の参考文献のリストをハイパーリンク付きで公開することにする。リストが完成したら本文の索引も別途作ろうと考えている。なお今回はそれぞれの記事や論文の著者について、英語表記のみとし、掲載メディアや掲載時期もタイトルの後ろに付した。『反脆弱』をどう読もうかと思案している人や『レジリエンス  回復力』を読んでいる方、あるいは心理学的な意味でのレジリエンスをテーマにしたシェリル・サンドバーグの『OPTION B』を読んでいる人など、色々な人の参考になれば幸いである。

 

序章 レジリエンスとは何か

  1. James Mckinley Jr., "Cost of Coan Soars, Forcing Mexico to Set Price LimitsNew York Times, January 19, 2007……3, 401
  2. "Mexicans stage tortila protest" BBC News, February 1, 2007……3, 401
  3. Ioan Grillo, "75,000 Protest Tortilla Prices in MexicoWashington Post, Feburuary 1, 2007……4, 401
  4. Robert L. Bamberger and Lawrence Kumins, Oil and Gas: Supply Issues After Katrina and Rita, Congressional Research Service, October 3, 2005……4, 401
  5. Elliot Blair Smith, "Katrina cripples 95% of gulf's oil productionUSA Today, August 30, 2005……4, 401
  6. Kent Berhard Jr., "Pump prices jump across U.S. after Katrina" MSNBC.com, September 1, 2005……4, 401
  7. Timothy A. Wise, Agricultural Dumping Under NAFTA: Estimating the Costs of U.S. Agricultural Policies to Mexican Procedures, (Washington, DC. Woodrow Wilson International Center for Scholars, December 2009), 4……5, 401
  8. Ana de Ita, "Fourteen years of NAFTA and the tortilla crisis" bilaterals.org, August 2007……5, 401
  9. Laura Carlsen, "Behind Latin America's Food Crisis" WordPress.org, May 20, 2008……5, 401
  10. Walden Bello, "Manufacturing a Food CrisisThe Nation, June 8, 2008……5, 401
  11. "China Emerges as the Second Largest U.S. Agricultural Export Market" USDA Foreign Agriculture Service, December 20, 2010……5, 401
  12. Miguel Llanos, "2011 already costliest year for natural disasters" MSNBC.com……7, 400
  13. The best explanation to resilience - YouTube……10, 400
  14. C. S. Holling, "Resillience and stability of ecological systemsAnnual Review of Ecological Systems, 4 (1973): 1924.  See also B. Beisner, D. Haydon, and K. Cuddington, "Alternative stable states in ecologyFrontiers in Ecology and the Environment, 1, no.7 (2003): 376-82……10, 400
  15. Maeten Scheffer, "Catastrophic shifts in ecosystemNature, 413 (2001): 376-82……10, 400
  16. Johan Rockstorm et al., "A safe operating space for humanityNature, 461 (2009): 472-75/ doi: 10.1038/461472a. ……12, 400
  17. U.S. Geological Survey, Twitter Earthquake Detector (TED)……14, 400
  18. Nathan Eagle, "Engineering a Common Good: Fair Use of Aggregated, Anonymised Behavioral Data" In press……14, 400
  19. Nathan Eagle et al., "Community Computing: Comparisons between Rural and Urban Societies using Mobile Phone Data" IEEE Social Computing (2009):144-50……14, 400
  20. Alexandra Alter, "Yet Another 'Footprint' to Worry About: WaterWall Street Journal, Feburuary 17, 2009……15, 400
  21. Hervert Simon, "The architecture of complexityProceedings of the American Philosophical Society, 106 (1962): 462-482……16, 400
  22. Brian Walker and David Salt, "Resillience Thinking: What a Resillient World Might Lool Like" Sockeye Magazine, Autumn 2007……26, 400
  23. Rob Hopkins, "The Transition Companion: Making Your Community More Resilient in Uncertain Times" (London: Chelsea Green Publishing. 2011)*1……28, 399
  24. Spence Cooper, "Theatre of the Absurd: Starring Del Monte's Single Plastic Packaged BananasFriendsEat……30, 399

第1章 頑健だが脆弱なシステムはどう崩壊するか

  1. J. M. Carlson and John Doyle, "Highly Optimized Tolerance: Robustness and Design in Complex Systems" Physical Review Letters 84 (2000): 2529-32……33, 399
  2. John Doyle, "The Architecture of Robust, Evolvable Networks: Organization, Layering, Protocols, Optimization, and Control" reserch overview for the Lee Center for Advanced Networking……35, 399
  3. John Doyle, "The "robust yet fragile" nature of the Internet" Proceedings of the National Academy of Sciences 102, no.41 (2005):14497-502……38, 399
  4. Ashley Frantz, "Assnage's 'poison pill' file impossible to stop, expert says" CNN.com, December 8, 2010……39, 399
  5. John Leyden, "Anonymous attacks PayPal in 'Operation Avenge Assange'" The Register, December 6, 2010……39, 399
  6. Richard W. Zabel et al., "Ecologically Sustainable YieldAmerican Scientist, March-April 2003, 150-57……43, 399
  7. L. S. Kaufuman, "Effects of Hurricane Allen on Reef Fish Assemblages near Discovery Bay, Jamaica" Coral Reefs 2 (1983):43-47……44, 399
  8. Office of National Marine Sanctuaries, National Oceanic and Atmospheric Administration. http://sanctuaries.noaa/gov/about/ecosystems/coralimpacts.html……44, 398
  9. Nancy Knowlton, "Sea urchin recovery from mass mortality: New hope for Caribbean coral reefs?Proceedings of the National Academics of Science 98, no.9 (2011):4822-24……44, 398
  10. 同上。
  11. "The California Sardine Industry" Trade Environment Database.  See alsoJohn Radvich, "The Collapse of the California Sardine Industry: What Have We Learned?" *2Resource Management and Environment Uncertainty (New York: Wiley, 1981)……46, 398
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  16. James Sanchirico, Martin D. Smith, and Douglas W. Lipton, "An Approach to Ecosystem-Based Fishery Management" Resources fot the Future Discussion Paper, DP-06-40 (2006)……50, 398
  17. Robert M. May, Simon A. Levin, and George Sugihara, "Ecology for bankers" Nature 451 (2008): 893-95….52, 398
  18. Kimmo Soramaki et al., "The Topology of Interbank Payment Flows" Federal Reserve Bank of New York, Staff Report no. 243, March 2006……54, 398
  19. Fedwire Funds Service annual data. http://www.fedralreserve.gov/paymentsystems/fedfunds_ann.htm  ……54, 398
  20. Soramaki et al., "The Topology of Interbank Payment Flows"……54, 398
  21. 同上。
  22. Andy Haldane, "Rethinking the Financial Network" speech delivered at the Financial Student Association meeting, Amsterdam, April 2009.  ……55, 398
  23. 同上。……61, 398
  24. Andy Haldane, "Rethinking the Financial Network" speech delivered at the Financial Student Association meeting, Amsterdam, April 2009……63, 397
  25. International Swaps and Derivatives Association.  www.isda.org/uploadfiles/_docs/ISDA_Bronchure_2011.pdf……67, 397
  26. David Bellwood, Terry Hughes, and Andrew Hoey, "Sleeping Functional Group Drives Coral-Reef Recovery" Current Biology 16 (2006):2434-39. ……74, 397
  27. Peter Temin and Gianni Toniolo, The World Ecology Between the Wars (Oxford: Oxford University Press, 2008), 96. ……75, 397
  28. http://www.digitalhistory.uh.edu/database/article_display.cfm?HHID=462 ……75
  29. "Times Topics: The Great Depression"……75, 397
  30. Tobias Studer, "WIR and the Swiss National Economy" translated by Philip H. Beard, WIR Bank, Basel ……75, 397
  31. James P. Stodder, "Reciprocal Exchange Nerworks: Implications fot Macroeconomic Stability" conference proceedings, 2000 IEEE EMS. [accessed August 17, 2017]……76, 397

第2章 感知し、拡大し、参集する

  1. Inspire, issue 3, November 2010……397
  2. Scott Shane and Souad Mckhenner, "Imam's Path from Condemming Terror to Preaching Jihad" New York Times, May 9, 2010, A1. ……397
  3. Inspire, issue 3, November 2010……397
  4. "UPS cargo plane crashes in Dubai, killing two" BBC News, September 3, 2010….397
  5. "Bomb was designed to explode on cargo planeーUK PM" BBC News, October 30, 2010……397
  6. "French Minister Says Yemen Bomb Detected 17 Minites Before Exploding" Voice of America, November 4, 2010. ……397
  7. Inspire, issue 3, November 2010……397
  8. Caroline Gammell, "Christmas bomb plot: nine men remanded over plan to 'blow up Big Ben and Westminster Abbey'" Telegraph, December 27, 2010……396
  9. John Arquilla and David Ronfeldt, eds., Networks and Netwars: The Future of Terror, Crime, and Militancy (California: RAND Monograph Reports, 2001)……396
  10. "Tuberculosis" fact sheet 104, World Health Organization, November 2010……396
  11. "2010/2011 Tuberculosis Global Facts" World Health Organization……396
  12. "Tuberculosis" fact sheet 104. 
  13. サラ・フォーチュンとのEメールでのやりとりより。
  14. "Tuberculosis and MDR-TB" Partners in Health. ……396
  15. "Greatest Engineering Achievements of the 20th Century" National Academy of Engineering. ……396
  16. The Emerging Smart Grid, Global Environment Fund and Center for Smart Energy, October 2005, 1……396
  17. 同上。
  18. 同上。
  19. Final Report on the August 14, 2003 Blackout in the United States and Canada: Causes and Recommendations, North American Electric Reliability Corporation U.S.ーCanada Power System Outage Task Force Report.
  20. Northeast blackout of 2003 - Wikipedia *3
  21. www.semp.us/publications/biot_reader.php?Biot ID=391
  22. "Blackout Stalls Economy, Transportation, Public Services" Fox News, August 15, 2003. ……396
  23. www.illinoislighting.org: The Costs Of Losing Our Night Skies
  24. Massoud Amin and Philip F. Schewe, "Preventing Blackouts" Scientific American 296 (2007): 60-67……395
  25. 同上。
  26. Kim Zetter, "H(ackers)2O: Attack on City Water Station Destroys Pump" Wired.com November 18, 2011……395
  27. Bart Tichelman, "Using a Smart Grid to Address Our Aging Infrastracture" Utility Automation, October 1, 2007, 56-56 ……395
  28. Martin LaMonica, "Cisco: Smart grid will eclipse size of Internet" CNET News, May 18, 2009 ……395
  29. Sustain the Mission Project: Casualty Factors for Fuel and Water Resupply Conveys, Army Environmental Policy Institute, September 2009 ……395
  30. Bryant Jordan, "Gas Costs $400 a Gallon in Afganistan" Military.com, October 20, 2009 ……395
  31. Marine Corps Expeditionary Energy website. *4……395
  32. Rick Maze, "NetZero' aims to cut greenhouse gases on bases" Marine Corps Times, July 12, 2011. www.marinecorpstimes.com/news/2011/07/military-energy-defense-department-bases-071211w/ ……395
  33. Kris Osborn, "Amy evaluating transportation solar-powered tents" December 8, 2010 ……395
  34. "Solar Energy Powers Marines on Battlefield" press release, Office e o f Nava 1 Research, December 7, 2009 ……395
  35. Wayne Arden and John Fox, Producing and Using Biodiesel in Afghanistan, June 2010 ……395
  36. Matthew W. Kanan and Daniel G. Nocera, "In Situ Formation of an Oxygen-Evolving Catalyst in Neutral Water Containing  Phosphate and CO2+" Science 321 (2008): 1072. doi:10.1126/science.1162018 ……395
  37. "Tata funded MIT founded startup Sun Catalytix to provide solar power storage for low income houses in India" Panchabuta.com, November 30, 2010 ……395
  38. Smart Grid Facts, Energy Future Coalition. ……394
  39. Amy J. Cuddy and Kyle T. Doherty, "Opower: Increasing Energy Efficiency Through Normative Influence" Harvard Business School Case Study N2-911-016, November 3, 2010 ……394
  40. Robert B. Cialdini, "Don't Throw in the Towel: Use Social Influence Research" Association for Psychological Science Observer, April 2005 ……394
  41. Michael Watts, "The neighbourhood energy revolution" Wired, August 2011 ……394
  42. Leslie Brooks Suzukamo, "Minnesota gets A+ for energy report cards" St. Paul Pioneer Press, August 13, 2011, A12 ……394
  43. "Opower to Save One Terawatt Hour of Energy by 2012" press release, June 15, 2011 ……394

第3章 多様性を密集させる

  1. United Nations Population Division, "An Overview of Urbanization, Internal Migration, Population Distribution and Development in the World" paper presented at the United Nations Expert Group Meeting on Population Distribution, Urbanization, Internal Migration and Development, New York, NY, January 21-23, 2008 ……394
  2. The Brookings Institution, State of Metropolitan Amarica: On the Front LInes of Demographic Transformation, Metropolitan Policy Program at the Brookings Institution, 2010 ……394
  3. Geoffrey B. West, James H. Brown, and Brian J. Enquist, "A General Model for the Origin of Allometric Scalling Laws in Biology" Science 4 (1997): 122-26 ……394
  4. Hillard Kaplan, Kim Hill, Jane Lancaster, and A. Magdalena Hurrado "A Theory of Human Life History Evolution: Diet, Intelligence and Longevity" Evolutionary Anthropology 9 (4):156-185 ……394
  5. Luis M. A. Betttencourt, Jose Lobo, Dirk Helbing, Christian Kuhnert, and Geoffrey B. West, "Growth, Innovation, Scaling and the Pace of Life in Cities" PNAS 17 (2007): 7301-6 ……393
  6. "Primates in Peril: The World's 25 Most Endangered Primates" Primate Conservation 24 (2009): 1-57 ……393
  7. S. A. Wich et al., "Distribution and conservation status of the orang-utan (Pongo spp.) on Borneo and Sumatra: How many remain?" Oryx 42 (2008): 329-39 ……393
  8. C. Nellemann, L. Miles, B. P. Kaltenborn, M. Virtue, and H. Ahlenius (eds.), The Last Stand of the Orangutan, United Nations Environment Programme, 2007 ……393
  9. "Promoting the growth and use of sustainable palm oil" RSPO fact sheet, 2008 ……393
  10. "The other oil spill" Economist, June 24, 2010 ……393
  11. Elizabeth Rosenthal, "Once a Dream Fuel, Palm Oil May Be an Eco-Nightmare" New York Times, January 31, 2007 ……393
  12. "Envisat focuses on carbon-rich peat swamp forest fires" European Space Agency website ……393
  13. How the Palm Oil Industry Is Cooking the Climate, Greenspace report, November 8, 2007 ……393
  14. E. Purwanto and G. A. Limberg, "Global Aspirations to Local Actions: Can Orangutans Save Tropical Rainforest?" July 2008 ……393
  15. "Willie Smits" profile page, Ashoka.org ……393
  16. Jane Braxton Little, "Regrowing Borneo, Tree by Tree" Scientific American Earth 3.0, 18, no.5 (2008): 64-71 ……393
  17. "Steaming Ahead"……393
  18. "Steaming Ahead"……392
  19. "Ray of conservation light for berneo"……392
  20. Jane Braxton Little, "Regrowing Borneo, Tree by TreeScientific American Earth 3.0, 18, no.5 (2008): 64-71 ……392

 第4章 人はいかに心の傷から回復するか

  1. Sarah Moskovitz, "Longitudinal Follow-up of Child Survivors of the Holocaust" Journal of the American Academy of Child Psychology 24, no.4 (1985): 402 ……392
  2. Anna Freud and Sophie Dann, "An Experiment in Group Upbringing" Psychoanalytic Study of the Child 6 (1951): 127-68 ……392
  3. Moskovitz, "Longitudinal Follow-up of Child Survivors of the Holocaust" 404 ……392
  4. Norman Garmezy and Elliot H. Rodnick, "Premorbid adjustment and performance in schizophrenia" Journal of Nervous and Mental Disease 129 (1959): 450-66 ……392
  5. Norman Garmezy "Vulnerability Research and the Issue of Primary Preservation" American Journal of Orthopsychiatry 41 (1971): 101-16 ……392
  6. Elwin James Anthony, "Risk, vulnerability, and resilience: An overview" in The Invulnerable Child (New York: Guilford Press, 1987), 3-48.  C. Kauffman, H. Grunebaum, B. Cohler, et al., "Superkids: Competent Children of Psychotic Mothers" American Journal of Psychiatry 136 (1979): 1398-1402.  E. E. Werner and Ruth S. Smith, Vulnerable but Invincible: A Longitudinal Study of Resilient Children and Youth (New York: McGraw-Hill, 1982) ……392
  7. Ann S. Mastren, "Ordinary Magic: Resilience Processes in Development" American Psychologist 56(2001): 227-38 ……392
  8. 同上。 
  9. George Bonanno, The Other Side of Sadness (New York: Basic Books, 2009)1-231 ……392
  10. Sigmund Freud, Mourning and Melancholia, XVII, 2nd ed.(originally published in 1917; reprinted by Hogarth Press, London, 1955) ……392
  11. Eric Lindemann, "Symptomatorology and Management of Acute Grief"*5 American Journal of Psychiatry 101 (1944): 1141-48 ……391
  12. Elizabeth Kubler-Ross, On Death and Dying (NewYork: Routledge, 1973)(エリザベス・キューブラー=ロス『死ぬ瞬間』川口正吉訳、読売新聞社、1971年、『死ぬ瞬間』鈴木晶訳、読売新聞社、1998年/中央公論社、2001年)……391
  13. CLOC Study: Changing Lives of Older Couples: A Multi-Wave Prospective Study of Bereavement ……391
  14. K. Boener et al., "Resilient or At-Risk? A Four Year Study of Older Adults Who Initially Showed High or Low Distress Following Conjugal Loss" Journal of Gerontology: Psychological Science 60B(2005): 67-73 ……391
  15. G. A. Bonanno, C. Rennicke, and S. Delel, "Self-Enhancement Among High-Exposure Survivors of the September 11th Terrorist Attack: Resilience or Social Maladjustment?" Journal of Personality and Social Psychology 88, no.6(2005): 984-98 ……391
  16. G. A. Bonanno et al., "Psychological Resilience After New York City in the Aftermath of the September 11th Terrorist Attack" Psychological Science 17, 2007 181-186; G. A. Bonanno et al., "What Predicts Resilience After Disaster? The Role of Demographics, Resources, and Life Stress" Journal of Consulting and Clinical Psychology, 75, 2007 671-82; G. A. Bonanno et al., "Psychological Resilience and Dysfunction Among Hospitalized Survivors of the SARS Epidemic in Hong Kong: A Latent Class Approach" Health Psychology 27(2008): 659-67 ……391
  17. J. H. Block and J. Block, "The role of ego-control and ego-resiliency in the organization of behavior" Development of Cognition, Affect, and Social Relations: Minnesota Symposia on Child Psychology, 13 (1980) : 39-101 ……391
  18. S. C. Kobasa, "Stressful life events, personality, and healthーInquiry into hardness" Journal of Personality and Social Psychology 37(1979): 1-11 ……391
  19. Kenneth I. Pargament, The Psychology of Religion and Coping: Theory, Research, Practice (New York: Guilford, 1997)……391
  20. C. Geertz, The Interpretations of Cultures: Selected Essays (New York: Basic Books, 1973), 107-8.(クリフォード・ギアツ『文化の解釈学Ⅰ』179-180ページ、吉田禎吾/中牧弘允/柳川啓一/板橋作美訳、岩波書店、1987年)……391
  21. E. Fuentes-Afflick, N. A. Hessol, and E. J. Perez-Stable, "Testing the epidemiologic paradox of low birth weight in Latinos" Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine 153 (1999): 147-53; J. B. Gould, A. Madan, C. Qin, and G. Chavez, "Perinatal Outcomes in Two Dissimilar Immigrant Populations in the United States: A Dual Epidemiological Paradox" Pediatrics 111 (2003): 673-82. ……390
  22. E. E. Werner and R. S. Smith, Journeys from Childhood to Midlife: Risk, Resilience and Recovery (Syracuse, N.Y.: CornellUniversity Press, 2001) ……390
  23. S. M. Nettles, W. Mucherah, and D. S. Jones, "Understanding Resilience: The Role of Social Resoueces" Journal of Education for Students Placed at Risk, 5 (2000): 47-60 ……390
  24. S. D. Pressman, S. Cohen, G. E. Miller, A. Barkin, B. Rabin, and J. J. Treanor, "Lonliness, Social Network Size, and Immune Response to Influenza Vacccination in College Freshman" Health Psychoolgy24 (2005): 526-33 ……390
  25. A. M. Stranahan, D. Khalil, and E. Gould, "Social isolation delays the positive effects of running on adult neurogenesis" Nature Neuroscience 9 (2006): 526-33 ……390
  26. "History of the Study" Dunedin Multidisciplinary Health and Development Research Unit ……390
  27. A. Caspi et al., "Influence of Life Stress on Depression: Moderation by a Polymorphisim in the 5-HTT Gene" Science 301 (2003): 386-89 ……390
  28. S. J. Suomi, "Risk, Resilience, and Gene X Environment Interaction in Rhesus Monkeys" Annals of New York Academy of Science 1094 (2006): 52-62.  J. C. Carrol et al., "Effects of mild early life stress on abnormal emotion-related behaviors in 5-HTT knockout mice" Behavioral Genetics 37 (2007): 214-22 ……390
  29.  Srijan Sen, Margit Burmeister, and Debashis Ghosh, "Meta-analysis of the association between a serotonin transporter promoter polymorphism (5-HTTLPR) and anxiety-related personality traits" American Journal of Medical Genetics Part B (2004): 85-89 ……390
  30. Elaine De Neve, "Functional Polymorphism (5-HTTLPR) in the Serotonin Transporter Gene Is Associated with Subjective Well-Being: Evidence from a U.S. Nationally Representative Sample" Journal of Human Genesis 56 (2011): 456-59 ……390
  31. A. Lutz, L. I. Greischar, N. B. Rawlings, M. Ricard, and R. J. Davidson, "Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchorony during mental practice" Proceedings of the National Academy of Science 101 (2004): 16369-73 ……389
  32. R. Davidson and A. Lutz, "Buddha's Brain: Neuroplasticity and Meditation" IEEE Signal Process Magazine 25 (2008) 172-176 ……389
  33. E. Maguire et al., "Navigation-related structural change in the hippocumpi of taxi drivers" Proceedings of the National Academy of Science 97 (2000): 4398-4403 ……389
  34. C. Gaser and G. Schlaug, "Brain Structures Differ Between Musicians and Non-Musicians" The Journal of Neuroscience 23 (2003): 9240-45 ……389
  35. S. Laser et al., "Mindfulness Practice Leads to Increases in Regional Brain Gray Matter Density" Psychiatry Research: Neuroimaging 191(2011): 36-43 ……389
  36. "Meditation Experience Is Associated with Increased Cortical Thickness" NeuroReport 16, no.17 (2005): 1893-97 ……389
  37. E. Epel et al., "Accelerated Telomere Shorening in Response to Life Stress" Proceedings of the National Academy of Science 101(2004): 17312-15 ……389
  38. T. Jacobset al., "Intense Meditation Training, Immune Cell Telomerase Activity, and Psychological Meditators" Psychoneuroendocrinology 36 (2011): 664-81 ……389
  39. R. Kalisch et al., "Anxiety Reduction through Detachment: Subjective, Physiological, and Neural Effects" Journal of Cognitive Neuroscience 17 (2005): 874-83 ……389
  40. E. A. Stanley et al., "Mindfulness-based Mind Fitness Training: A Case Study of a High-Stress Predeployment Military Cohort" Cognitive and Behavioral Practice 18 (2011): 566-76; E. A. Stanley and A. P. Jha, "Mind fitness: Improving operational effectiveness and building warrior resilience" Joint Force Quarterly 55 (2009): 144-51 ……389

第5章 協力と信頼はいかに生まれるか

  1. H. H. Dale, "On Some Physiological Actions of Ergot" Journal of Physiology 34(1906): 163-206 ……389
  2. V. du Vigneaud, C. Ressler, et al., "The Synthesis of Oxytocin1" Journal of the American Chemical Society 76 (1954): 3115-21 ……389
  3. Andrew Ross Sorkin, "Lehman Files for Bankruptcy: Merril Is Sold" New York Times, September 14, 2011 ……388
  4. Joshua Zumbrun, "Greenspan Says Crisis 'By Far' Worst, Recovery Uneven" Bloomberg, Feburuary 23, 2010 ……388
  5. Jenny Anderson and Andrew Ross Sorkin, "Lehman said to Be Looking for a Buyer as Pressure Builds" New York Times, September 10, 2008 ……388
  6. Suzanne McGee, Chasing Goldman Sachs: How the Masters of the Universe Milted Wall Street (New York: Random House, 2011), 354 ……388
  7. "Ultimatum by Paulson Sparked Frantic End" Wall Street Journal ……388
  8. 同上。
  9. P. J. Zak, R. Kurzban, et al., "The Neurobiology of Trust" Annals of the New York Academy of Science 1032 (2004): 224-27; M. Kosfeld, M.Heinrichs, et al., "Oxytocin increases trust in humans" Nature 435 (2005): 673-76; Paul J. Zak, "The Neurobiology of Trust" Scientific American, June 2008, 88 ……388
  10. Kosfeld, Heinrichs, et al., "Oxytocin increases trust in humans……388
  11. 同上、673。
  12. A. C. Grayling, "Beware the Destructive Nature of Greed" New Scientist, November 5, 2008 ……388
  13. Zak, "The Neurobiology of Trust……388
  14. David Cho and Neil Irwin, "No Bailout: Fed Made Policy Clear in One Dramatic Weekend" Washington Post, September 26, 2008 ……388
  15. Ptrick Rizzo and Joe Bel Bruno, "Financial Crisis as Dow Drops 504 Points" The Associated Press, September 15, 2008 ……388
  16. W. D. Hamilton, "The genetical evolution of social behaviour, Ⅰ" Journal of Theoretical Biology 7(1964): 1-16 ……387
  17. R. L. Trivers, "The evolution of reciprocal altruism" Quarterly Review of Biology 46 (1971): 35-57 ……387
  18. R. Axelrod, The Evolution of Cooperation (NewYork: Basic Books, 1985):3-27.(ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学ーバクテリアから国際関係まで』松田裕之訳、ミネルヴァ書房、1998年)……387
  19. Drew Fundenberg, David Rand and Anna Dreber, "Slow to Anger and Fast to Forgive: Cooperation in an Uncertain World" American Economic Review. In press ……387
  20. S. Brosnan and F. B. M. de Waal, "Monkeys Reject Unequal Pay" Nature 425 (2003): 297-99 ……387
  21. Frans de Waal, "Frans de Waal Answers Your Primate Questions" Freakonomics blog, May 7, 2008 ……387
  22. Solomon, Berman, Craig, and Mollenkamp, "Ultimatum by Paulson Sparked Frantic End" Wall Street Journal, September 16, 2008 ……387
  23. 同上。
  24. C. K. W. de Dreu, L. L. Greer, et al., "Oxytocin promotes human ethnocentrism" PNAS 108 (2011): 1262-1266 ……387
  25. S. Muzafer, O. J. Harvey, B. J. White, W. R. Hood, and C. W. Sherif, The Robbers Cave Experiment: Intergroup Conflict and Cooperation (Norman: University of Oklahoma Press, 1961) ……387
  26. S. Rytina and D. L. Morgan, "The Arithmetic of Social Relations: The Interplay of Category and Network" American Journal of Sociology 88 (1982): 88-113 ……387
  27. Edward O. Wilson, On Human Nature (Cambridge, Mass: Harvard Univetsity Press, 1978): 163(エドワード・O・ウィルソン『人間の本性について』岸由二訳、筑摩書房、1997年)……387
  28. 同上。
  29. S. C. Wright et al., "The extended contact effect: knowledge of cross-group friendship and prejudice" Journal of Personality and Social Social Psychology 73 (1997): 73-90; see also the Interpersonal Relationships Lab at SUNY Stony Brooks……387
  30. Benedict Carey, "Tolerance over Race Can Spread, Studies Find" New York Times, November 6, 2008 ……387
  31.  US Geological Survey……386
  32. "Haiti quake death toll rises to 230,000" BBC News, February 11, 2010 ……386
  33. "Haiti will not die, President Rene Preval insists" BBC News, February 12, 2010 ……386
  34. "Red Cross: 3M People Affected by Quake" CBS News, March 9, 2010 ……386
  35. "Some positive feedback" Mission 4636 blog, Feburuary 10, 2010 ……386
  36. Ryan Ferrier, "Crowdsourcing the Haiti Relief: One Year Later" CrowdFlower blog, January 11, 2011 ……386
  37. M. S. Granovetter, "The Strength of Weak Ties" American Journal of Sociology 78 (1973): 1360-80 ……386 
  38. S. Aral and M. V. Alstyne, "Networks, Information Sharing and Brokerage: The Diversity-Bandwidth Trade-off" April 15, 2010. Forthcoming in the American Journal of Sociology ……386
  39. Disaster Relief: The Future of Information Sharing in Humanitarian Emergencies.  United Nations Foundation Report ……386
  40. 同上。

第6章 リスク志向を抑制する多様性と寛容さ

  1. Letter quated in John Adam's Risk (London: UCI, Press, 1995), 113 ……386
  2. D. Allbury and J. Schwartz, Partial Progress (London: Pluto Press, 1982), 9-24 ……386
  3. S. Peltzman, "The effects of automobile safety regulation" Journal of Political Economy 83 (1975): 677-726 ……386
  4. J. Adams, "The efficacy of seatbelt legislation: A comparative study of road accident fatality statistics from 18 countries" Department of Geography, Occasional Paper, University College, London (1981) ……386
  5. J. Adams, "Seat BeltsーBlood on My Hands?" Blog post on John Adams's website, March 5, 2008 ……385
  6. B. A. Morrongiello, B. Walpole, and J. Lasenby, "Understanding children's injury-risk behavior: Wearing safety gear can lead to increased risk taking" Accident Analysis and Prevention 39 (2007): 618-23 ……385
  7. M. Cassell et al., "Risk competition: The Achilles'Heel of Innovations in HIV Prevention" BMJ 332 (2006): 332 ……385
  8. "Climber 9-1-1" Northwest Mountaineering Journal ……385
  9. V. Napier, "Risk Homeostasis: A Case Study of the Adoption of a Safety Innovation on the Level of Perceived Risk" Vic Napier's website ……385
  10. Adams, Risk; see also G. J. S. Wilde, "Clinical Issues in Risk Homeostasis Theory" Risk Analysis 2 (1982): 249-58 ……385
  11. Adams, Risk, 15
  12. G. J. S. Wilde, Target Risk: Dealing with the Danger of Death, Disease and Damage in Everyday Descisions (Toronto: PDE Publications, 1994), chapter 7.1.
  13. W. K. Viscusi, "Consumer Behavior and the Safety Effects of Product Safety Regulation" Journal of Law and Economics 28 (1985): 527-53 ……385
  14. Quote taken from a speech given at the National Petrochemical and Refiners Association conference in San Antonio, Texas, on March 19, 2007 ……385
  15. Jad Mouawad, "For BP, a History of Spills and Safety Lapses" New York Times, May 8, 2010 ……385
  16. Scott Bronstein and Wayne Drash, "Rig survivors: BP ordered shortcut on day of the blast" CNN website, June 8, 2010 ……385
  17. "Oberon Houston: Beyond Petroleum – Events in the Gulf of Mexico affect us all" conservativehome.blogs.com, June 3, 2010 ……385

  18. J. M. Farrell and A. Hoon, "What's Your Company's Risk Culture?" National Association of Corporate Directors Directorship, April 15, 2009 ……385
  19. Scott Page, The Difference: How the Power of Diversity Creates Better Groups, Firms, Schools and Societies (Princeton, N.J.:Princeton University Press, 2007), 197-39.(スコット・ペイジ『「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき』水谷淳訳、日経BP社、2009年)……384
  20.  K. Dunber, "How scientists really reason: Scientific reasoning in real-world laboratories" in R. J. Sternberg and J. Davidson (eds), Mechanisms of Insight. (Cambridge, Mass: MIT Press, 1995), 365-95 ……384
  21. ダンバーは研究室の名称や個人を特定する情報については、評価に悪影響が及ぶ可能性を考慮して非公表としている。
  22. S. Aral and M. V. Alstyne, "Networks, Information and Brokerage: The Diversity-Bandwidth Trade-off" American Journal of Sociology, April 15, 2010 ……384
  23. P. Watson, "On the failure to eliminate hypothesis in a conceptual task" Quarterly Journal of Experimental Psychology 12 (1960): 129-40 ……384
  24. H. L. LaMarre et al., "The Irony of Satire: Political Ideology and the Motivation to See What You Want to See in The Colbert Report" International Journal of Press/Politics 14 (2009): 212-31 ……384

第7章 コミュニティの適応能力

  1. Andrew Meharg. Venomous Earth: How Arsenic Caused the World's Worst Mass Poisoning (London: Palgrave Macmillan, 2004), 6 ……384
  2. Julie Reed Bell and Seth Borenstein, "2010's world gone wild; Quakes, floods, blizzards" Associated Press, December 19, 2010 ……384
  3. Maggie Black, The Children and the Nations: The Story UNICEF (New York: UNICEF, 1986), 301 ……384
  4. Meharg, Venomous Earth, 7. ……384
  5. Fighting Human Poverty: Bangladesh Human Development Report 2000 (UNDP: 2000) ……384
  6. Meharg, Venomous Earth, 13 ……384
  7. Meharg, Venomous Earth, 12 ……383
  8. "Arsenic Mitigation in Bangladesh" UNICEF Fact Sheet (October 12, 2008) ……383
  9. "Water Related Diseases: Arsenicosis" World Health Organization ……383
  10. Barry Bearak, "New Bangladesh Disaster: Wells That Pump Poison" New York Times, November 11, 1998 ……383
  11. 2011年2月16日、アンドリュー・メハーグの調査について、メハーグ本人とEメールと電話でやりとりした会話に基づく。……383
  12. "Arsenic Mitigation in Bangladesh" ……383
  13. "Researchers Warn of Impending Disaster from Mass Arsenic Poisoning" press release, World Health Organization, September 8, 2000 ……383
  14. S. Hanchett, "Social Aspects of the Aesenic Contamination of Drinking Water" in Selected Papers on the Social Aspects of Arsenic and Arsenic Mitigation in Bangladesh (Dhaka. Arsenic Policy Support Unit: Government of Bangladesh, 2006), 2 ……383
  15.  Bangladesh Arsenic Mitigation Water Supply Program (BAMWSP) ……383 
  16. F. Sultana, "Gender Concerns in Arsenic Mitigation in Bangladesh" in Selected Papers on the Social Aspects of Arsenic and Arsenic Mitigation in Bangladesh (Dhaka. Arsenic Policy Support Unit: Government of Bangladesh, 2006), 53-84 ……383
  17. E. Field, R. Glennerster, and R. Hussam, "Throwing the Baby Out with the Drinking Water: Unintended Consequences of Arsenic Mitigation Efforts in Bangladesh" Feburuary 14, 2011 ……383
  18. Sultana, "Gender Concerns in Arsenic Mitigation in Bangladesh" 68 ……383
  19. 同上, 53-84. ……383
  20. 同上, 64. ……383
  21. Field, Glennerster, and Hussam, "Throwing the Baby Out with the Drinking Water" 2. ……383
  22. Sultana, "Gender Concerns in Arsenic Mitigation in Bangladesh" 69 ……382
  23. Hanchett, "Social Aspects of the Aesenic Contamination of Drinking Water" 13 ……382
  24. Selected Papers on the Social Aspects of Arsenic and Arsenic Mitigation in Bangladesh (Dhaka. Arsenic Policy Support Unit: Government of Bangladesh, 2006), 1-92 ……382
  25. Towards an Arsenic Safe Environment, a joint Publication of FAO, UNICEF, WHO and WSP, March 2010 ……382
  26. K. Lokuge, et al., "The effect of arsenic mitigation interventions on disease burden in Bangladesh" Environmental Health Perspectives 112 (2004): 1172 ……382
  27. 同上。……382
  28. A. Schoefeld, "Area, Village and Household Response to Arsenic Testing and Labeling of Tubewells in Araihazar, Bangladesh" Masters Thesis, Columbia University, September 6, 2005 ……382
  29. Towards an Arsenic Safe Environment ……382
  30. 同上, 4. ……382
  31. プライバシー保護のため仮名を使用。……382
  32. Bob McCarry, "2008: Chicago Murders Total Tips U.S. Soldier Death in Iraq" Now Public website, January 5, 2009 ……382
  33. Centers for Disease Control, "Pneumocystis pneumoniaーLos Angeles" Morbidity and Morality Weekly Report (1981): 250-52 ……382
  34. Sharon Block, "25 Years of AIDS: June 5, 1981ーJune 5, 2006" University of California San Fransisco Hospital website ……382
  35. 同上。……382
  36. I. Rosenstock, V. Strecher, and M. Becker, "The Health Belief Model and HIV risk behavior change" in R. J. DiClemente and J. L. Peterson (eds.), Preventing AIDS: Theories and Methods of Behavioral Interventions (New York: Plenum Press, 1994), 5-24 ……382
  37. M. Fishbein and S. E. Middlestadt, "Using the theory of reasoned action as a framework for understanding and changing AIDS-related behaviors" in V. M. Mays, G. W. Albee, and S. F. Schneider (eds.), Primary Prevention of AIDS: Psychological Approachs (London: Sage Publications, 1989), 93-110 ……381, 382
  38. M. J. VanLandingham et al., "Two views of risky sexual practices among Northern Thai males: The Health Belief Model and the Theory of Reasoned Action" Journal of Health and Social Behavior 36 (1995): 195-212 ……381
  39. S. E. Middlestadt and M. Fishbein, "Factors influencing experienced and inexperienced college woman's intentions to tell their partners to use condoms" paper presented at the International Conference AIDS at University of Illinois at Urbana-Champaign, June 20-23, 1990 ……381
  40. Pam Belluck , "End of a Ghetto" New York Times, September 6, 1998 ……381
  41. A. Hill, D. G. Rand, M. A. Nowak, and N. A. Christakis, "Emotions as infectious diseases in a large social network: he SISa model" Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, July 7, 2010 ……381
  42. CeaseFire Evalation Report, Institute for Policy Reseach at Northwestern University (2008) ……381
  43. Data and Research, CeaseFire ……381

第8章 コミュニティを支える「通訳型」リーダー

  1. パラオの漁の文化史を理解するうえで、ロバート・アール・ヨハネスの内容豊かな民族誌は必読書である。Robert Earle Johannes, Words of the Lagoon: Fishing and Marine Lore in the Palau District of Micronesia (Berkley: University of California Press, 1981) ……381
  2. Johannes, Words of the Lagoon, 17. ……381
  3. 同上。
  4. V. Krebs and J. Holley, "Building Smart Communications Through Network Weaving" 2002-2006; and "Building Sustainable Communities Through Network Building" 2002 ……381

第9章 レジリエンスの習得

  1. "Fact sheet: Kilimo Salama" Syngenta Foundation. ……380
  2. 同上。
  3. Rose Goslinga, speech at the 2011 Poptech conference ……380
  4. Jim Roth, Michael J. McCord, and Dominec Liber, The Landscape of Microinsurance in the World's Poorest 100 Counties (The MicroInsurance Centre, 2007)
  5. See Alvin Toffler, Future Shock (New York: Bantam Books, 1970) and Henry Mintzberg, The Structuring of Organizations: A Synthsis of the Reseach (Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall, 1979) ……380
  6. http://www.naturalcapitalproject.org/marine/MarineInVEST_Apt2010.pdf ……380
  7. http://epidemiq.com ……380
  8. エピデミックIQの最高技術責任者ロブ・マンローとの直接のやりとりより。……380
  9. http://open311.org ……380
  10. John Burnett, "Mexican Cartels Open New Front in War: Online" National Public Radio, November 18, 2011 ……380
  11. Ashish Khetan, "60 Dark Hours at Hotel Taj" in 26/11 Mumbai Attacked, H. Baweja (ed.), (New Dehli: Roli Books, 2009), 46-83 ……380
  12. H. Raghav Rao, "Beyond Information Assurance: Information Control and Terrorism" ……380
  13. www.naturalcapitalproject.org/marine/MarineInVEST_Apt2010.pdf ……380
  14. James Pat Smith, Leadership and Mission in Resilient Organizations: Hancock Bank as a Case Study, Community and Regional Resilience Institute ……380

*1:see also the website of the Transition movement: www.transitionnetwork.org

*2:reference:http://calcofi.org/publications/calcofireports/v23/Vol_23_Radovich.pdf

*3:日本語版の記事はこちら

*4:reference:Marines.mil - The Official Website of the United States Marine Corps

*5:リンク先のPDFは読みづらいという方はこちら($35だそうです)

Google社員の「女性はエンジニアに向かない」文書問題について

 

  Google社員のジェームズ・ダモア(James Damore)氏が社内向けの文書で「女性はエンジニアに向かない」と書いた問題、さっそくWIkipedia彼のオリジナルの文書を扱った記事[1]ができている。10ページに渡り10000字を超えるその文書のタイトルは「Google’s Ideological Echo Chamber.(グーグルの思想的エコーチャンバー)」。例によってWikipediaの日本語版の記事は今のところないようだ。

 ちなみに「エコーチャンバー」*1とは、東京大学情報学環の橋元良明教授によるこの記事での定義によると、以下の通りである*2

エコーチェンバー現象とは、人は自分の考えることと同じもの、似たもの、賛同できると言う人にアクセスする傾向があるため、結局自分が興味を持つ範囲、考え方が同じ自分が賛同する範囲においての情報共有になるということ。

メディアの反応

 この件に限ったことではないが、この問題について500文字や1000文字程度の記事*3が多く、もちろんそれらはダモア氏の発言の「一部」を切り取って解釈したものがほとんどであり、最初からダモア氏の文書が全文公開されていたらGoogleへの印象も違っていただろう。

 公平を期して言えば、中にはダモア氏の文書を全て読むことを勧めるITmedia NEWSの記事(こちら[2])や、私のこの記事と同様、原文を参照しながら分析するGeekなぺーじの記事(こちら[3])もあった。しかしこれらの記事もまた、ダモア氏が差別に反対であり、ダイバーシティの実現を目指しているという基本的な立場を指摘していなかった。それはいささか残念なことである。文書は英語だが、Google翻訳にコピペすれば日本語で読める。ちなみにGizmodoで公開されたダモア氏の文書の全文はこちら[4]。

 ある人物の意見の一部だけが切り取られて報じられることで、それに対する世論の反応の方向性も決まってくる。そしてさらにその世論に対する企業側の反応も決まってきて…というかたちで事態が進み、当の問題自体が置き去りにされている感がある。原文を読むと、ダモア氏も基本的にはジェンダーバイアスや差別に反対の立場を文書中で繰り返し示している。それにも関わらず文書の一部だけを切り取って「偏見だ」という枠で議論を展開するのはあまりに誠意に欠ける行為ではないか。仕事で忙しい一般人の気軽なツイートならまだしも、発信それ自体を仕事としているメディアの書き手たちすら文書を全て読まずに論評していたりするのを見るとがっかりさせられる。

 たとえばこの記事[5]。

www.itmedia.co.jp

 記事[5]の筆者は記事中、「かなり長いのですが、ざっと読んだところ」と書いている。さらっと書いているがこういう表現はなかなか厄介である。記事の読者のほとんどは「ざっと読んだところ」という箇所で詰まることはないのではないか。

ダモア氏の立場を原文に即して考える 

 ダモア氏の文書のオリジナルをよく読むと、少なくとも二番目の脚注([2])で自分にもバイアスがかかっているだろうということを認めている。その箇所を引用しよう。

 [2] Of course, I may be biased and only see evidence that supports my viewpoint. In terms of political biases, I consider myself a classical liberal and strongly value individualism and reason. I’d be very happy to discuss any of the document further and provide more citations.

(筆者による訳:もちろん、私にもバイアスがかかっているかもしれず、私の視点に合致するような証拠だけしか見ていない。政治的バイアスの観点からすれば、私自身は古典的なリベラルで、個人主義と理性を高く評価するものと考える。私はこの文書のあらゆる箇所についてさらなる議論が進み、より多く引用されることを好ましく思う。)

 

  この脚注を読むだけでも、記事[5]の筆者が言うように「女性を差別しているつもりは全然ないみたい」とは言えないのではないかと私は思う*4。これは私の解釈だが、引用箇所でダモア氏は「自分自身もまたなんらかのバイアスの影響を免れないこと」を示した上で、それでもGoogle側が抱えるバイアスとは別の視点を示すことがエコーチャンバーの状況を解消するために必要であり、Googleが企業として推進を目指しているダイバーシティを保つ上でも重要であるということを念頭に置いているのではないだろうか。少なくとも私はそのように読んだ。

  もちろんダモア氏にまずい点がないとは言わない。上の記事[5]でも指摘のある通り、文書の前半に登場する女性の特徴についての箇条書きの部分は「思い込み」や「決めつけ」と区別がつかず、科学的な根拠が示されていない箇所もある。今回この文書が問題となったのも主にこの箇所について偏見だと感じた人が多かったことが原因ではないかとも思う。その箇所について先のGizmodoの記事[4]から引用する。

Personality differences

Women, on average, have more:

  • Openness directed towards feelings and aesthetics rather than ideas. Women generally also have a stronger interest in people rather than things, relative to men (also interpreted as empathizing vs. systemizing).
  • These two differences in part explain why women relatively prefer jobs in social or artistic areas. More men may like coding because it requires systemizing and even within SWEs, comparatively more women work on front end, which deals with both people and aesthetics.
  • Extraversion expressed as gregariousness rather than assertiveness. Also, higher agreeableness.
  • This leads to women generally having a harder time negotiating salary, asking for raises, speaking up, and leading. Note that these are just average differences and there’s overlap between men and women, but this is seen solely as a women’s issue. This leads to exclusory programs like Stretch and swaths of men without support.
  • Neuroticism (higher anxiety, lower stress tolerance).This may contribute to the higher levels of anxiety women report on Googlegeist and to the lower number of women in high stress jobs.

(筆者による訳:

性格の違い

平均的に見て、女性の方が以下の特徴をより強く持っている。

  • 物事よりも感情や美学に対して開放的である。また女性は一般に物事よりも人々に対して男性よりも強い関心を持つ。
  • これら2つの点は、女性の方が社会的あるいは芸術的な領域の仕事を好む理由を一部は説明する。コーディングはシステム化を必要とするため、男性の方がコーディングを好むのかもしれず、ソフトウェア工学(SWE)の領域においてすら、女性の方が人々と美学の両方を扱うフロントエンドで働くことが比較的多い。
  • このことは女性は一般に給料の交渉をしたり、昇級を求めたり、声を上げたり、指揮をしたりすることに苦痛を感じることへつながる。これらはあくまでも平均的な違いであって、男女で共通する部分もあるという点に注意してほしいが、一方でこの点に関して言えば完全に女性の方の問題であると思われる。これはストレッチや援助なしの男性による束縛のような特別なプログラムへつながる。
  • 神経不安(より強い不安、より低いストレス耐性)。これはGooglegeistで女性たちが報告する強い不安や、ストレスの強い仕事で女性の数が少ないことの理由になっているのかもしれない。) 

 

  もちろんこうした主張の前後には、やはり差別や偏見に反対するダモア氏自身の基本的な立場を強調する文があり、誤解を生まないよう気を付けて書いていることが伺える。

 また箇条書きされたいくつかの項目の中には、ソフトウェア工学の職業における男女比など、単なる偏見というよりも端的な事実を指摘したものもあることがわかる。もちろんその事実というのが女性にとって好ましくないということはあるかもしれないが、事実は事実であることに変わりなく、偏見と事実は異なるものである。

建設的な読解

 私は先に「科学的な根拠が示されていない箇所もある」と書いたが、すでに紹介したGeekなぺーじの記事[3]では、科学的根拠といえそうな研究として2015年のTelegraphで紹介されたオックスフォード大学の研究OECDのの研究の2つを紹介している。単に偏見だとして感情的に反発するよりは差別や偏見の解消のためによほど建設的な読解だと感じる。

 端的な事実の指摘の他にも、ダモア氏が文書で指摘している点の中には妥当なものもいくつか含まれている。例えば人材のダイバーシティ実現のために行なっているGoogleの取り組みが、今のままでは好ましくないことを指摘する箇所などを読むと、ダモア氏ばかりではなくGoogleもまた非難されるに値するのではないかと感じる。

 BBCの記事によると、サンダー・ピチャイCEOは今回の問題について以下のようにコメントしている。記事から引用する。

ピチャイCEOは、「この会社の職場で、危険な性別のステレオタイプを推進しようとした」この文書は、一線を越えてしまったと指摘した。

ピチャイ氏は、グーグル社内で表現の自由を守る重要性について行数を割き、「文書に書かれた内容の多くは、議論に値するものだった。グーグル人の大半が賛成するかしないかは関係ない」と強調した。

しかしその上でピチャイ氏は、「とはいえ、同僚の一部が、生まれつき仕事に向いていないなどと示唆するのは、不愉快で不適切だ」と批判した。「我々の基本的な価値観や行動規範にもとるものだ。この会社の行動規範は、『すべてのグーグル人が最善を尽くして、いじめや威圧や偏見や違法な差別のない職場文化を作る』よう求めている」。

 

 今回の問題が起こる以前、Googleは2014年時点で社員の男女比のデータを公表する(記事はこちら[6])など、ダイバーシティ実現へ向けて動いてきた経緯からすれば、むしろGoogle側はダモア氏と話し合う機会を作り、解雇という形で話し合いの場から退場させない方がよかったのではないか。ロイターの記事はこうした見解を示す著名人のコメントをいくつか紹介している。ダモア氏はすでに解雇されてしまったが、ダモア氏が文書の中で指摘したGoogleの問題は今も残っている。ダイバーシティの問題は専門の部署のトップであるダニエル・ブラウンさんが今後も話し合う姿勢を示しているが、その場にはダモア氏はいない。

原文の長さと世論の趨勢の関係

 今回の問題について、いろいろなメディアの記事を見ていると、原文の長さと世論の趨勢の間にはある種の関係があるのではないかとふと思った。つまり、原文が長いほどメディアはその一部しか取り扱わず、メディアを通して人々が目にする論点も部分的なものに留まり、ひいては世論の方向性も極端なものになる確率が相対的に高いというような関係があるのではないか。

 原文が短ければ、それはそれで解釈が分かれるため議論が発散しやすいという問題はありそうだが、原文が長い場合にはそれとは別に、原文を読む人間が少ないために「そもそもどういうことが言われていたのか」ということを人々が理解した上で世論が形成されるという重要な過程が抜けてしまう。もちろんどんな問題についても原文に当たれ、ソースを参照しろというのは時間的に難しいとは思うが、今回のように原文が10ページにも及ぶ文章ともなると、その中に一部でも誤解を招く表現が含まれていた場合に、そこだけがメディアに切り取られて大々的に報じられ、人々の理解の偏りを生むことになる。

 さらに今回の場合、原文は英語であるため、はっきり言って日本人の何人が原文を全て読んだだろうか。そしてもしも読んだとして、そこに書かれていることを日本語と同じようなレベルで理解できただろうか。私はこの記事の中で引用した箇所を日本語に訳していて、いまいち意味がつかみとれず、わかりにくい訳になってしまった箇所がいくつもあった。そしてそういう部分がもとで私の理解が誤っているという可能性もある。もしそうなら文書を書いたダモア氏にも悪いような気さえする。

 何しろ10ページにも渡る量の文書を書いたのだ。決していい加減な気持ちで書いたものではないと文書の分量だけでわかりそうなものだ。ツイッターで気軽に偏見を垂れ流すのとは訳が違うと誰も思わなかったのだろうか。いくつかの記事やツイート、それぞれの記事に対するページ下のコメントを参照した限り誰も指摘していなかったが、10ページという分量自体が、ジェンダーバイアスや職場におけるダイバーシティに対するダモア氏の姿勢を物語っているとは言えないだろうか。そこをきちんと汲んでやらずに、文書の一部だけを取り上げて云々するという姿勢を、誠意がないと言わずになんと言うのか、私にはわからない。

まとめ

 今回の問題でメディアが焦点を当てたのはダモア氏ばかりだったため、Google社内の男女比などのダイバーシティ問題の方は世間でほとんど意識されることがないままだろう。男女比のデータ公表の件が2014年であることからもわかる通り、この問題は決して今回だけの単発的なものではなく、Googleが抱えた息の長い問題である。それについて今後メディアがどう報じるのか、話題性がないとして報じないのか、時系列に沿って分析した重厚な記事がある日突然出てくるのか、気になるところだ。

 この問題は性差別や偏見が問題というよりも、むしろある個人の意見をどれだけ理解しようとするかという誠意の問題なのではないかと感じた。そして相手の意見を丁寧に理解しようとする誠意がなければ、結局は性差別や偏見の問題が解決することもないという本末転倒がそこにある。

*1:この用語にはいくつかの表記があり、「エコーチェンバー」とか「エコーチャンバー効果」とか「エコーチェンバー現象」なども全て同じものである。コンピュータの検索ではこの辺の表記ゆれの影響が小さくなってはいるものの、まだ融通が利かないところがあるので、早くどれかに統一されないと議論の効率が悪いと個人的には思う。

*2:後に上げたハフポストの記事ではエコーチャンバーについて、WIREDにおける定義を採用しているため、相対化のためこの記事ではあえて別の定義を紹介した。どちらの定義も本質的には大差がないと考えていいと思う。

*3:そういう記事の例として、例えばハフポストGIGAZINECNET JapanZUU onlineBBCの記事などがある。

*4:ちなみに記事[2]と記事[5]の筆者は同一人物であり、記事[2]は記事[5]の後に書かれたものである。

イーライ・パリサー『フィルターバブル』索引(※ほぼ完成)

 現在作成中で未完成ですが、現時点で公開しても役に立つという人がいるかもしれないので、一応公開しました。今後も作業を進め、完成を目指したいと思います。海外のサービス、サイト、企業などはカタカナ表記とし、アルファベットでなく五十音順で配置しました。用語についてはかっこ内に英語も載せました。

 サイトのリンクは日本法人がある場合はそちらにリンクを張り、ない場合はオリジナルの方へリンクを張りました。また出版から数年が経過していることもあって、中には現在は存在しないサイトや企業もあるのでご注意ください。(筆者が見落としている可能性ももちろんあるので、もし誤りがある場合はご指摘いただければ幸いです。)

追記(2017年8月16日時点):巻末の原注の部分を除いて完成しました。今後用語や記事など、他の項目についても順次作業を進めていきます。

 

用語索引

A
ADHD注意欠陥多動性障害……129
AugCog……283, 287, 288, 290
B
B2ステルス爆撃機……187
D
DNA……270
DPIDeep Packet Inspection……154
F
Foursquare……68
G
GPS誘導爆弾……187
I
IQ……175
K
kNN(k-nearest neighbor: k近傍法)……177
L
LeanBack……98
Loopt……68
【M】
MORIS……265
N
Nグラム閲覧ページ(Ngram Viewer)……272
NeuroInsights……129
【R】
RFID……269
V
VPN(バーチャルプライベートネットワーク)……189
【あ】
アイデンティティー(identity)……151, 152, 153. 155, 156, 157, 158, 160, 162, 163, 164, 169, 170, 171, 172, 174, 214, 303
アイデンティティーの連鎖……174, 303
アイデンティティループ……314
アーキテクチャー……279
アクセシビリティバイアス(accessibility bias)……170
アソシエーテッドコンテント(Associated Content……101
アデラル(Adderall)……128, 129
アドバター……260, 263, 264
アマゾンウェブサービスAmazon Web Services)……197
アメリカ独立革命(The American Revolution)……83
アンフェタミン(amphetamine)……128
【い】
イエズス会宣教師……145
異縁連想(bisociation)……130, 133, 140
イーサネットEthernet……64
異常値(outlier)……183
遺伝子(gene)……163, 273
遺伝情報……270
意図のデータベース……142
意味脅威……125
医薬品企業……326
インサイダー(insider)……88
インターネット・サービス・プロバイダー(ISP……154
インデックス化……269
【う】
ウィスコンシン州ヨーダー(訴訟)……156
ウィーン貴族……82
ウェブサイトモーフィング……280
薄い規制の層……305
【え】
エッジランク(EdgeRank……59, 60
エリザ(Eliza)……228
塩基配列……270
炎上……153
【お】
オークション(auction)……67
オリュンポス山(Mt. Olympus……103
音声認識……273
オンブズマン……311, 312
オンラインフォーラム(online forum)……188
【か】
解放範囲……132, 134
顔認識……265, 267
核実験禁止条約(Nuclear-Test-Ban-Treaty)……111
学術論文……273
確証バイアス(confirmation bias)……120
拡張現実……282, 283, 284, 287, 288
カクテルパーティー(cocktail party)……88
過剰適合(over-fitting……177, 178, 179, 182
過集中……129
仮想コンピュータ……197
環境知能……262, 270, 287
感情分析(sentiment ananlysis)……167, 193
関連性(relevance)……50, 51, 52, 53, 54, 58, 60, 62, 63, 70, 106, 130, 301, 310
【き】
機械学習(machine learning)……46, 50, 178
技術決定論……243, 254
既知の未知(known unknown)……145
帰納法(induction)……181, 182, 184
基本的な帰属の誤り(fundamental attribution error  ※「根本的な帰属の誤り」の訳語の方が一般的と思われる)……160
キュレーション(curation)……95, 239, 315, 320
キュレーター(curator)……78, 89, 96, 319, 320
極大問題……173, 174
近代戦……281
【く】
グーグルボイス……273
グーグル翻訳……272, 273
クッキー(cookie)……19, 64, 67
クラウド(cloud)……197, 198
クランツバーグの第一法則……254
クリック信号……207
クレイグスリスト(Craigslist……74, 89
【け】
ゲートキーパーgatekeeper……88
下劣世界症候群……201
研究……120-122, 126, 136, 138, 162, 263
現在バイアス(present bias)……161, 162
検索結果(search result)……14, 53, 55, 127, 317
原始スープ(primordial soup)……140
【こ】
広告収入(ad revenue)……83, 101
広告主提供メディア(AFM)……277, 278, 279
向精神薬(Psychoactive drug, Psychotropic)……129
公正信用報告法……324
行動ターゲティングbehavioral targeting……179
行動データ……288
行動リターゲティング(behavioral retargeting)……67
コーディング(coding  ※心理学用語)……136
高度な認知……165
コミュニティ(community)……153
コラボレイティブ・フィルタリング(collaborative filtering)*1……47, 48, 178
孤立集団の街……299, 300, 301
混交の街……299, 300, 301
コンテスト(contest)……178
コンテンツストリーム……216
コンピューター歴史博物館……151
【さ】
再帰的(recursive)……174
サイバネティックス(cybernetics)……46
細胞情報……270
ユーゴスラビア中国大使館……187
サーバー(server)……93, 94
サーバーファーム……260
サブカルチャーのモザイク……300
サブリミナル広告(subliminal ad)……168
サンゴ礁(coral reef)……140
【し】
試験……135, 137
自己充足的予言(self-fulfilling expectation)……155
指数関数的(exponential)……132
実験……125, 136, 160, 170, 171, 175
シネマッチ(CineMatch……177
司法省……198
資本主義(capitalism)……153
ジャーナリズム(journalism)……82
情報決定論(information determinism)……184
情報物理学(information physics)……141
自律(autonomy)……155
神経伝達物質……129
信号(signal……13, 52, 53, 157, 159, 172, 264, 270, 274, 317
人工知能(AI: artificial intelligence)……118, 228, 272, 273
ジンジン(警警)……263
新聞オンブズマン……311
人民日報……187
信用報告書……324
信頼関係……153
心理学的な肥満……302
【す】
推奨エンジン……206
推薦(recommendation)……165
数学(math)……50
スキーマ(schema)……119, 120, 122, 123, 127, 136
スコーピオン…282, 283
スコーピオンプロジェクト……282
ステレオタイプ(stereotype)……179, 232
スマートダスト……270
【せ】
政治献金……326
生物の第7界……243
石油会社……326
セレンディピティ(selendipity)……133, 134, 141, 142, 174, 301, 303, 314, 318
全米ライフル協会……196
【そ】
相関関係……270, 275
臓器提供率……306
ソーシャルグラフ(social gragh)……57, 60, 74, 179, 208, 267
ソーシャルグラフシンポジウム(Social Gragh Symposium)……179
ソーシャルターゲティング(social targeting)……180
ソーシャルデータ(social targeting)……152, 180
ソーシャルユーティリティ……241
民集会……217, 218, 220
【た】
第一次イラク戦争……192
第一次世界大戦(World War Ⅰ)……84
対称性(synmetricity  ※経済学)……168
代表性(representativeness)……145, 146
ダッシュボード(dashboard……101
脱物質主義……212, 213, 216, 217
ダブルクリック(double click  ※Googleの広告サービス)……64
多様性(diversity)……135
【ち】
知識(knouledge)……76, 114, 117, 123, 124, 241, 296, 303
知性(intelligence)……40, 118, 314
知能……270, 272
チャチャ(察察)……263
チャットフォーラム(chat forum)……188
注意欠陥障害(ADD: Attention Deficit Disorder)……128
注意力経済(attention economy……94
注意力の崩壊……25, 78
中国国営テレビ……187
調節(心理学)……123
朝鮮戦争(the Korean War)……114
【て】
定期購読(subscription)……83
デイリーミー(Daily Me)……40
テクニウム……243
テコノミー会議2010……266
データ(data)……159, 160, 162, 168, 179, 180, 181
データバンク(databank)……66
データベース(database)……68, 69, 154, 196, 197, 261, 271, 272, 275, 289
データマイニング(data mining)……178
データロンダリング……289
デフォルトの暴政……306
天安門広場(Tiananmen Square)……188
電気ショック(elecric shock)……160
電子フロンティア財団……153
電子メール……46, 47
【と】
同化(心理学)……123
統計学(statistics)……146
投票行動……205, 208
透明性(transparency)……161, 267, 312
匿名(anonymous)……153, 154
図書館(library)……142, 146
特許公報……273
トール(Tor……189
【な】
ナイトビジョン……282
中抜きの10……87
【に】
ニューラルネットワーク(neural network)……178
認識論……114, 115
認知的不協和(cognitive dissonance)……174
【ね】
ネットフリックスチャレンジ(Netflix Challenge)……178
【の】
脳イメージング……283
ノルエピネフリン(norepinephrine)*2……129
【は】
ハイテクオフィス(hitech office)……140
パーキンソン病(Parkinson's disease)……163
爆撃反対フォーラム……187
白鳥(swan)……181, 182
パターン言語……299
ハッカージャーゴンファイル……238, 240
パネルディレクター……261
パラダイムシフト(paradigm shift)……134
反証(counterevidence, falsification)……182
反証可能性……315
ハンドルネーム(handle name)……154
万里のファイアウォール(Great Firewall)……188
【ひ】
ピカサ(Picasa)……266, 267
ビーコン(beacon)……19
非対称(asynmetory  ※経済学用語)……169
ビッグボード(bigboard)……99, 104, 107
ビットストリーム……268
ヒューリスティック(heuristic)……132
漂泊……143
【ふ】
ファイアウォール(firewall)……189
フィードバック(feedback)……172, 174
フェイト(f8……61
不気味の谷()……159, 160
普通の科学(normal science……134
浮動層……206, 210
プッシュ(push)……97, 98
プライバシー(privacy)……160, 161, 163, 168, 263, 267, 288, 324
ライミング(priming)……171, 174
ブラウザー(blowser)……154, 157
フラクタル(fractal)……146
フラッシュクラッシュ……275
プラットフォーム(platform)……89
フリゲート……82
プル(pull)……97
ブレスレット……268, 269
プロキシ(proxy)……189
ブログリンク(blog link)……77
プロダクトプレイスメント……277, 278, 279
プロパガンダ(propaganda)……188, 193, 272
文脈(context)……120, 299
【へ】
平均購入額……212
国境警備隊……277
ページランクPageRank……50, 52, 310
ペニー新聞(penny paper)……83
ペルソナ(persona)……153
変異(mutation)……133
編集倫理……319, 320
ベンゼン環(benezine ring)……130
【ほ】
ホイットマン空軍基地()……186
包括的カテゴリー(comprehensive category)……136, 137, 139
ホルモン……270
ホロコースト……196
【ま】
マイクロターゲティング……205, 207
マーケティング(marketing)……165, 168, 179, 212, 216, 241, 268, 277
【み】
ミグラコリドス……277
未知の未知(unknown unknown)……145
ミートスペース……237
ミドルクラス(middle class)……84
民主主義(democracy)……17, 18, 35, 46, 82, 84, 85, 88, 106, 107, 200, 217, 218, 219, 220, 221, 250, 251
【む】
ムーアの法則……267
【め】
メトカーフの法則(Metcalfe's law)……64
【も】
「最も無難な番組」理論……97
モノのインターネット……268
モーフィング……281
【ゆ】
友好的世界症候群……200, 202, 204
ユナボマー……235
【ら】
ラザーゲート(事件)……79-81
ラス・ウルティマス・ノティシアス(チリの大手新聞)……101
【り】
リバタリアン……248, 249
リターゲティング(retargeting)……67
流動的なネットワーク……140
量子数学……219
【る】
類語辞典……193
ルック&フィール……280
ルンバ……262, 263
【れ】
レンダリング……259
【ろ】
ロビイスト……326, 327
ローン(loan)……180, 181, 182
論文……155, 170
【わ】
ワイマール共和国……196
ワーキングメモリー……283
ワンタフ・ステート・パークウェイ……236

サイト索引

T
TMZ.com……158
【O】
OKキューピッド・ドットコム……234, 285, 286
【あ】
アップショット(Upshot……102
アリババエンジン*3……189
【う】
ウィキリークスWikiLeaks)……197
【え】
エロウィド(Erowid……128, 129
【き】
ギズモード(Gizmodo……99
【こ】
ゴーカー(Gawker……99, 104, 107
【す】
スレート(Slate……128
【て】
ディグ(Digg……101
デイリーコス(Daily Kos……93
【と】
ドラッジレポート(Drudge Report……80
【ね】
ネットフリックス(Netflix……94, 177, 178, 182
【は】
バズフィード(Buzzfeed……103
パワーライン(Power Line……79
【ふ】
フリーリパブリックドットコム(FreeRepublic.com)……79
フールー(Hulu……94
フレッシュボット(Fleshbot……99
【む】
ムーブオン(MoveOn.org)……16, 17, 93
【ら】
ライトマーチ(RightMarch……93
【り】
リトルグリーンフットボールズ(Little Green Footballs…79, 80, 93
リンクトインLinkedIn……180
【れ】
レディット(Reddit……101
レートマイプロフェッサーズドットコム(RateMyProfessors.com)……154

人物索引

【あ】
シャント・アイエンガー(Shanto Iyenger)……170
ハンス・アイゼンク(Hans Eysenck)……131, 132, 134
アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)……134
アイザック・アシモフIsaac Asimov)……257
ステファン・アーノルド(Stephan Arnold)……198
ダン・アリエリー(Dan Ariely)……117, 234, 306, 347
クリストファー・アレグザンダー(Christopher Alexander)……293, 298, 299, 300, 301, 345, 347
ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)……185
ジュリア・アングウィン(Julia Angwin)……374
ジェームズ・ジーザス・アングルトン(James Jesus Angleton)……112, 113, 115
クリス・アンダーソン(Chris Anderson)……275
ベネディクト・アンダーソン(Benedict Anderson)……345
【い】
ロナルド・イングルハート(Ronald Inglehart)……212, 213, 217, 345
【う】
ティム・ウー(Tim Wu)……89, 344
シヴァ・ヴァイディアナサン(Siva Vaidhyanathan)……126, 164, 228, 242
ラングドン・ウィナー……237, 238
テリー・ウィノグラード(Terry Vinograd)……246
リサ・ウェイド(Lisa Wade)……347
ドリュー・ウェスティン(Drew Westen)……171
ジミー・ウェールズJimmy Wales)……251
フランシスコ・デ・ウリョア(Francisco de Ulloa)……144
アンディ・ウールワース(Andy Woolworth)……302
【え】
ディーン・エクルズ(Dean Eckles)……165, 166, 202, 203
【お】
リー・ハーヴェイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald)……112
バラク・オバマ(Barak Obama)……210, 214, 215, 216
ロバート・オッペンハイマー……218
キャリー・オルソン(Carrie Olson)……16
【か】
デビッド・カークパトリック(David Kirkpatrick)……151
マーシャル・カークパトリック(MarshallKirkpatrick)……373
テッド・カジンスキー(Ted Cazinski)……235
マーティン・カスティー(Martin Caste)……370
エンリケ・デ・カストロ(Enrique de Castro……95
ジョージ・カトーナ(George Katona)……135
ジョシュ・カトーン(Josh Catone)……373
フランツ・カフカ(Franz Kafka)……125
ジョージ・ガーブナー(George Garbner)……200, 201, 202
シャンティ・カラティル(Shanthi Kalathil)……188
デビッド・ガランター……143, 235
ライアン・カロ……29, 262
ロバート・A・カロ……236
ドーン・カワモト(Dawn Kawamoto)……371
アーロン・カントロビッチ……134
【き】
ウィリアム・ギブスン……268
ドナルド・キャンベル……133, 134
ダニエル・ギルバート……117
【く】
ポール・クライン……97
イーラ・グラス……302
メルビン・クランツバーグ……254
ステファニー・クリフォード(Stephanie Clifford)……374
ビル・クリントン……187
ドリス・グレイバー……119
アーサー・クロプレイ……136, 137
ジュリアンヌ・クワン……139
【け】
フリードリヒ・ケクレ……130
アーサー・ケストラー……109, 130, 141, 345
ビル・ケラー……91, 100
ケビン・ケリー……243, 254, 345
ロバート・ゲルマン……198
パトリック・ケーン……16
【こ】
クリス・コイン……284, 285, 348
江沢民……187
クラウディア・コーエン……120
コペルニクス……134
マット・コーラー……173, 174, 303, 347
エルナン・コルテス……144
ゴールドスタイン……171
デビッド・ゴールドバーグ(David Goldberg)……370
スティーブン・コルバート(Stephen Colbert)……320, 346
ガブリエラ・コールマン……230, 231
ダルトン・コンレイ……176, 345
【さ】
ディーン・サイモントン……133
マーク・ザッカーバーグ……57, 58, 59, 60, 61, 151, 152, 160, 161, 244, 245, 247, 250
リーハン・サラム……269
ダニー・サリバン……13, 28, 274, 310
キャス・サンスティーン(Cass Sanstein)……28, 320, 344, 346, 372
シェリル・サンドバーグ……21, 152
アダム・サンドラー……228
【し】
アーロン・シェパード(Aaron Shepard)……370
リー・シーゲル(Lee Shiegel)……34, 371
ジョナサン・ジットレイン(Jonathan Zittrain)……31, 198, 343
クレイ・シャーキー(Clay Shirky)……93, 106, 344
M. G. シーグラー(M. G. Siegler)……373
マイケル・シャドソン(Michael Shudson)……104, 344
ウペンドラ・シャルダナンド(Upendra Shardanand)……370
エリック・シュミット……56, 71, 169, 194, 266, 320, 326, 346
マイケル・シュミット(Michael Schmidt)……348
キャスリン・シュルツ……118
ビル・ジョイBill Joy)……260, 289, 297, 347
スティーブ・ジョブズSteve Jobs……97, 98, 251
スティーブン・ジョンソン(Steven Johnson)……140, 141, 142
デビッド・シールズ(David Seals)……261, 262, 344
アミット・シンガー(Amit Shingal)……310, 347
マイケル・シンガー(Michael Singer)
【す】
マーク・スタイツ……206
ニール・スチュワート……214
チャーリー・ストライカー……179, 180
ロバート・スペクター(Robert Spector)……371
ジャスティン・スミス(Justin Smith)……373
J・ウォーカー・スミス……212
【そ】
ソクラテス……223
ダニエル・ソロブ(Daniel J. Solove)……159, 344
ソルジェニーツィン……247
【た】
エスター・ダイソン(Ester Dyson……87
フレッド・ターナー(Fred Turner)……227, 344
ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)……119
【ち】
ジョナサン・チェイト……124
シャオ・チャン……189
【て】
パム・ディクソン……168
ダン・ティナン(Dan Tynan)……371
ブレット・テイラー……62
ピーター・ティール……247, 248, 249, 250
フィリップ・テトロック(Philip Tetloc)……121, 122
ジョン・デューイ……71, 84, 85, 86, 106, 221, 345
【と】
トム・ドウニー……188
カール・ドゥンカー……135
アレクシス・ド・トクヴィル……185
フョードル・ドストエフスキー……183
リーナス・トーバルズ……231
J・R・R・トールキン……247
クライブ・トンプソン……34, 188, 189, 197
【な】
アーサー・ナウマン……312
ウラジミール・ナボコフ(Vladimir Nabocov)……286, 348
【に】
クレイグ・ニューマーク……251
【ね】
ニコラス・ネグロポンテ(Nicholas Negroponte)……39, 40, 42, 104, 260, 371
ユヴァル・ネーマン……134
チャーラン・ネメス……139
【の】
ユーリ・ノセンコ……111, 112, 113, 114, 115, 116, 146, 147
ピーター・ノーヴィグ……275
テッド・ノードハート……217
ドナルド・ノーマン……344
【は】
デビッド・バイス(David A. Vise)……370
ハイファーマン……251, 252, 253, 254, 255
ジョン・ハウザー(John Hauser)……280, 281, 348
ショーン・パーカー……243
ジョン・バーガー……345
パスツール……134
リード・ハスティングス……177, 178
ハッシャー……171
ジョン・バッテル……142, 162, 345
ロバート・パットナム(Robert Putnum)……32, 372
ティム・バーナーズ=リー……36, 295, 298
ジョンソン・バーナマス(Johnson D. Barnabas)……370
ブラッド・バーナム……306
ユルゲン・ハーバーマス……219
クリシュナ・バラット……90, 91, 92
ヴィンセント・ハリス……209
ジョン・ペリー・バーロウ(John Perry Barlow)……153, 371
サウル・ハンゼル(Saul Hansell)……370
テレンス・バーンハム……263
ジェームズ・バンフォード(James Bamford)……372
【ひ】
ジャン・ピアジェ……123
パブロ・ピカソ……127
ビル・ビショップ……212, 345
デビッド・ヒューム……181
ジョーゼフ・ピューリッツァー……101
ダニー・ヒリス……276
【ふ】
マーサ・ファラー……129
キム・フィルビー……113
ジェームズ・ファラー(James Farrar)……373
ジェームズ・ファローズ……189
ジョシュ・フォア……128, 129
ポール・フォイ(Paul Foy)……372
ピート・フークストラ……210
フィリップ・フォーシー……311
ヴァネヴァー・ブッシュ……257
ジョージ・W・ブッシュ……193, 205
スチュアート・ブランド……226, 227
ルフレート・フラトー……195, 196
プラトン……46, 223
チャールズ・フリード……164
トーマス・フリードマン(Thomas Friedman)……33, 372
パトリ・フリードマン(Patli Friedman)……248
ミルトン・フリードマンMilton Friedman)……249
サーゲイ・ブリン(Sergery Brin)……50, 51, 52, 53, 242, 273, 370
トラビス・プルー……125
ジョアン・ブレイズ……16
【へ】
ブライアン・ヘア……263
ジョン・ペアレス……87
ラリー・ペイジ(Lawrence Page)……50, 51, 52, 53, 56, 130, 131, 272, 370
ゲイリー・ヘイズ(Gary Hayes)……283, 348
サラ・ペイリン……203
トマス・ペイン……83
フランシス・ベーコン……199
ジェフ・ベゾス……44, 45, 46, 50
グレン・ベック……203
リチャード・ベハー(Richard Behar)……374
ゴードン・ベル……149
ヨハイ・ベンクラー……32, 155, 156, 372
【ほ】
ニールス・ボーア……137, 138
ウェス・ボイド……16
ダナ・ボイド(Danah Boyd)……29, 302, 347, 372
リチャーズ・ホイヤー(Richards J. Heuer)……114-116, 345
ニール・ポストマン(Neil Postman)……344
アンドリュー・ボスワース……202
カール・ポパー(Karl Popper)……181, 182
デビッド・ボーム(David Bohm)……218, 219, 220, 345
【ま】
ジャック・マー……189
デビッド・マーク(David Mark)……111
エレン・マクガート(Ellen McGirt)……373
ハリー・マクドゥーガル……79, 81
ジョナサン・マクフィ……162
マック・マクラーティ……65
スタンリー・マクリスタル……94
マーク・マルシード(Mark Malseed)……370
ポール・マンチーニ(Paul Mancini)……282
【み】
ジョン・スチュアート・ミル(John Stewart Mill)……109
スタンレー・ミルグラム(Stanley Milgram)……160
マービン・ミンスキーMarvin Minsky)……344
【め】
モヤ・メイソン(Moya K. Mason)……370
マリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)……169, 242
ビクター・メイヤー=ションバーガー(Victor Mayer Schornberger)……199
ロバート・メトカーフ(Robert Metcalfe)……64
【も】
ロバート・モーゼス(Robert Moses)……236
【ら】
ジェレマイア・ライト……124
デビッド・ライト(David Wright)……270, 287, 289, 348
ダン・ラザー……79, 80
ダグラス・ラシュコフ(Douglas Lushkoff)……229
ガイ・ラズ……151
ジャロン・ラニアー(Jaron Lanier)……41, 291, 344, 371
ドナルド・ラムズフェルド……145
【り】
スタン・リー(Stan Lee)……238
ジェシカ・リビングストン……245
ウォルター・リップマン……76, 82, 84, 85, 86, 194, 318, 319, 344
A・J・リーブリング……107
ザック・リンチ……129
【る】
スティーブ・ルーベル(Steve Rubel)……372
【れ】
ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)……36, 237, 344, 347, 371
スティーブン・レビー(Stephan Levy)……227, 231
ジョン・レンドン……192, 193, 194
【ろ】
ジョーン・ローエンスタイン……126
マーク・ロスシュタイン……163
ジェフリー・ローゼン(Jeffrey Rosen)……346
マーク・ローテンバーグ……324, 346
トッド・ローベル……281
ミット・ロムニー……209
【わ】
リチャード・ワイズマン(Richard Wiseman)……138
デイブ・ワイナー(David Winer)……87
ダンカン・ワッツ(Duncan Watts)……344
ジェイン・ワーデル(Jane Wardell)……348

企業索引

【O】
OKキューピッド……284
P
PKリストマネジメント(PK LIst Marketing*4……168
【あ】
アクシオム(Acxiom……20, 65, 66, 67, 68, 70, 73, 75, 175, 196, 268, 324
【え】
エクスペリアン(Experian……73
【か】
カタリスト……205
カヤックKayak……67
【し】
ジ・インスティテュート(the Institute)……278
【た】
ターガスインフォ(TargusInfo……69
【と】
トラヴェロシティ(Travelocity……67
【は】
パブスト……214, 215
【ひ】
ピークユー(PeekYou……154
【ふ】
フェイス・ドットコム(Face.com)……266
フォーム(Phorm……154
ブルーカイ(BlueKai……20, 67, 75
ブルーカーバ(BlueCava……154
【ま】
マッシブ(Massive)……278
【ら】
ラップリーフ(Rapleaf)……207
【る】
ルビコンプロジェクト(Rubicon Project……69
【れ】
レイセオンアビオニクス(Raytheon Avionics)……281
レコーディドフューチャー(Recorded Future)……198

機関・研究所索引

C
CIA……65, 111, 112, 113, 114, 116, 146, 147, 187, 198
F
FBI……65
K
KGB……111, 112, 116
P
PARC(ゼロックスパロアルト研究所……46, 47, 48
【お】
オセアナ……204
【ひ】
ピュー慈善財団(Pew Charitable Trust……124
【へ】
国防総省高等研究企画庁(DARPA)……283

団体索引

【あ】
アメリカンズ・フォー・セキュリティ……210

地名索引

【う】
ウィリアムズバーグ……216
ウィルクスバリ(ペンシルバニア州)……218
ウェストベリー(ロングアイランド)……236
【く】
クウェート市……192
【こ】
コンウェイアーカンソー州……66
コロラド川……144
【し】
ジュネーブ……111
ジョーンズビーチ(ロングアイランド)……236
【に】
ニューヘイブン(コネティカット州……170
【は】
ハイト・アシュベリー……227
バハ……145
【ひ】
ピュージェット湾……145
【ふ】
ブロックトン(マサチューセッツ州)……265
【へ】
ベオグラードセルビア……187
【ほ】
ポートランドオレゴン州)……214
【ま】
マウンテンビュー(カリフォルニア州……73, 151
【ら】
ラングレー(バージニア州……112
【り】
リンカーンヴィル……217, 220

書名索引

【数字】
1984』(ジョージ・オーウェル)……241
【C】
『CODE VERSION 2.0(原題: Code: And Other Laws of Cyberspace, Version 2.0)』(ローレンス・レッシグ)……344、347
【D】
"Discovering the News: A Social History of American Newspapers"(マイケル・シャドソン)……344
【E】
"Elsewhere, U.S.A.: How We Got from the Compony Man, Family Dinners, and the Affluent Society to the Home Office, BlackberryMoms, and Economic Anxiety"(ダルトン・コンレイ)……345
【F】
"From Counterculture to Cyberculture: Stewart Brand, the Whole Earth Network, and the Rise of Digital Utopianism"(フレッド・ターナー)……344
【R】
"Reality Hunger: A Manifesto"(デビッド・シールズ)……344
【S】
"Safeguards in a World of Ambient Intelligence"(デビッド・ライト他)……348
【T】
"The Big Sort: Why the Clustering of Like-Minded America Is Tearing Us Apart"(ビル・ビショップ)……345
【あ】
『明日の幸せを科学する』(ダニエル・ギルバート)……117
【い】
『田舎医者』(フランツ・カフカ……125
イノベーションのアイデアを生み出す7つの法則』(スティーブン・ジョンソン)……140
『イメージ(原題:Ways of Seeing)』(ジョン・バーガー)……345
『インターネットが死ぬ日(原題:The Futute of the InternetーAnd How to Stop It)』……198, 343
『インターネットは民主主義の敵か(原題:Republic.com 2.0)』(キャス・サンスティーン)……344,346
【え】
エスランディアンの偉業』(ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボ)……143. 144
【お】
オデュッセイア』(ホメロス……143
【か】
『合衆国再生ー大いなる希望を抱いて』(バラク・オバマ)……215
【き】
『教育と学びの創造性(原題:Creativity in Education and Learning ※未邦訳)』(アーサー・クロプレイ)……137
『近代化と脱近代化』(ロナルド・イングルハート)……213
【く】
『グーグル化の見えざる代償ーウェブ・書籍・知識・記憶の変容』(シヴァ・ヴァイディアナサン)……126
【こ】
『公衆とその諸問題』(ジョン・デューイ……85, 345
『心の社会(原題: The Society of Mind)』(マービン・ミンスキー)……344
『孤独なボウリング』(ロバート・パットナム)……32, 253
『コモンセンス』(トマス・ペイン)
【さ】
ザ・サーチ(原題:The Search: How Google and Its Rivals Rewrote the Rules of Business and Transformed Our Culture)』(ジョン・バッテル)……345
【し】
『自由とニュース(原題:Liberty and the News ※未邦訳)』(ウォルター・リップマン)……84, 318
『情報分析と心理学(原題:Psychology of Intelligence Analysis ※未邦訳)』(リチャーズ・ホイヤー)……115, 345
【す】
『スモールワールド・ネットワーク(原題:Six Degrees: The Science of a Connected Age)』(ダンカン・ワッツ)……344
【せ】
セレンディップと三人の王子』……133
【そ】
『創造活動の理論』(アーサー・ケストラー……130, 345
『定本  想像の共同体(原題:The Imagined Community)』(ベネディクト・アンダーソン)……345
【た】
『ダイアローグー対立から共生へ、議論から対話へ(原題:On Dialogue)』(デビッド・ボーム)……345
『愉しみながら死んでいく(原題:Amusing Ourselves to Death: Public Discourse in the Age of Show Business)』(ニール・ポストマン)……344
『誰のためのデザイン(原題:The Design of Everyday Things)』(ドナルド・ノーマン)……344
【ち】
地下室の手記』(フョードル・ドストエフスキー)……183
【て】
『テクニウム(原題:What Technology Wants)』(ケビン・ケリー)……345
【に】
『ニュースの処理(原題:Processing the News: How People Tame the Information Tide ※未邦訳)』(ドリス・グレイバー)……120
『人間はガジェットではない(原題:You Are Not a Gadget: A Manifesto)』(ジャロン・ラニアー)……344
【は】
『パタン・ランゲージ(原題:A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction)』(クリストファー・アレグザンダー、サラ・イシカワ、マレー・シルバーマン)……299, 301345, 347, 348
【ふ】
フェイスブック  若き天才の野望』(デビッド・カークパトリック)……151
『プライバシーの新理論(原題:Understanding Privacy)』(ダニエル・ソロブ)……344
【ま】
『マスタースイッチ』(ティム・ウー)……89, 344, 345
『まちがっている』(キャスリン・シュルツ)……118
『幻の公衆』(ウォルター・リップマン)……85
【み】
『みんな集まれ!(原題:Here Comes Everybody: The Power of Organizing Without Organizations)』(クレイ・シャーキー)……344
【め】
『メディア論(原題:Understanding Media)』(マーシャル・マクルーハン)……374
【よ】
『予想通りに不合理(原題:)』(ダン・アリエリー)……117
【れ】
『レクサスとオリーブの木』(トーマス・フリードマン……33
【ろ】
『ロリータ(原題:Lolita)』(ウラジミール・ナボコフ)……348

記事索引

【A】
"Ads Follow Web Users, and Get More Personal"(ステファニー・クリフォード)……374
【C】
"Compurers That Read Your Mind"……348
【D】
"Decision Making and the Options We're Offered"(リサ・ウェイド)……347
【I】
"Is Google a Monopolist? A Debate"(アミット・シンガー)……347
【N】
"Never Heard of Acxiom? Chances Are It's Heard of You"(リチャード・ベハー)……374
【L】
"Long Live the Web: A Call for Continued Open Standards and Neutrality"(ティム・バーナーズ=リー)……348
【M】
"Mistakes Do Happen: Credit Report Errors Mean Consumers Lose"……346
【P】
"Philip Foisie's memos to the management of the Washington Post"……347
【R】
"Raytheon Unveils Scorpion Helmet Technology"(ジェイン・ワーデル)
【S】
"Streams of Content, Limited Attention: The Flow of Information through Social Media"(ダナ・ボイド)……347
【T】
"The Web Means the End of Forgetting"(ジェフリー・ローゼン)……346
"The Web's New Gold Mine: Your Secrets"(ジュリア・アングウィン)……374
"To Pack a Stadium, Provide Video Better Than TV"(マイケル・シュミット)……348
"Transcript: Stephen Colbert Interviews Google's Eric Schmidt on The Colbert Report"……346
【W】
"When to Morph"(ジョン・ハウザー&グレン・アーバン)
"Why the Future Doesn't Need Us"(ビル・ジョイ)……348

論文索引

O
Of Sirens and Amish Children: Autonomy, Information, and Law(セイレーンの歌声とアーミッシュの子ども)”(ヨハイ・ベンクラー)……155, 原注16
【し】
「人工物は政治的手段か」(ラングドン・ウィナー)……237

番組索引

【A】
"A Better Mouse Trap"……347

*1:協調フィルタリング」の方が訳語としては一般的と思われる

*2:エピネフリンはアドレナリンと同じなので、ノルエピネフリンノルアドレナリン(noradrenaline)と同じ

*3:中国Yahoo!を指すと思われるが、2013年に閉鎖

*4:日本語訳の誤植で正しくは「PKリストマーケティング」と思われる。根拠は第4章 注22(原注 p.17)より

人工知能ってほんとにIQ高いと言えるのだろうか

  人工知能のIQ*1について、4000とか5000とかいう数字が使われるのをときどき目にするが、なるべく少ない情報から一般的な特徴を見抜く汎化能力の高さがIQの要件ではなかったか。サイコロを1000回や2000回振らなければ確率分布がわからないような知性に対して「IQ4000」と言っていいのだろうか。

 ここで誤解を避けるために書いておくと、この記事の趣旨は「『人工知能のIQが4000』という評価は間違っていて、私たちは人工知能を恐れる必要などない」とか「人工知能は賢くないから、人間が負けることはない」というようなことではない。そうではなくて、「知能」とか「知性」、つまりAIの"I"にあたる"intelligence"という言葉が雑に適用されているのではないか、そしてもう少し知性について落ち着いて考え直し、今「知性」とか「知能」と呼ばれて有り難がられているものとは別のしかたで、知性や知能を実現することを考えることも必要ではないか、ということである。


 人工知能とのIQ合戦にはどうせ敵いっこないのだから、IQとは別の知性のあり方を考えてそれを活かしていけば人類にもまだ生きる道が…という立て方の論をときどき見るが、そもそも大前提として人間よりIQ高いと評価できるのだろうか。


 人工知能に「IQ」というものさしを当てはめるとき、大量のデータを与えた結果として問題が解けるようになった後にIQを測るというのは、いってみれば子供の頃は解けなかったIQテストの問題が、大人になったら視野が広がったとか知識が増えたとかで解けるようになりましたというような話で、それはインチキなのではないかと思ってしまう。


 単純化していえば今「人工知能」(正確には深層学習を応用したもの)と呼ばれているものは、人間に比べてはるかに早い速度で経験値を積んだ「玄人」*2にすぎない。決して学習効率が高いわけではない。経験する速度が人間より早いということをもって人間より賢いとはいえない。賢いというのはより少ない経験値で正解を推定したり特定したりすることのできる能力を指すのではないか。 

 

 この意味で賢さということを考えると、たとえばアルファー碁で話題になった囲碁の場合、人間の棋士が研究や実践を通じて学ぶのと同じ数の対局データしか与えなければ、アルファー碁は人間の棋士に勝てない。汎化能力が人間より低いからだ。しかし膨大な数の対局データを与えて1秒に1手みたいなスピードでどんどん対局させると人間に勝てるようになる。しかしそれははたして賢いのだろうか。

 

 もちろん、大量のデータを与えることによって、特定の問題において人間よりも高い能力を発揮するということは言えるし、そういう事例は今も積み上がり続けている。今後も深層学習を中心として機械学習の分野の研究は日進月歩で進み続けるだろう。

 

 とはいえ、多くの課題を達成できる一般的な知性を実現しようとした結果、「大量のデータを与えなければうまくいきません」という機械学習(特に深層学習)に行き着いたというところに、なんというか人間の知性の限界を感じなくもない。機械学習などより汎化能力の高い知性の表現が今後現れないかなぁと思う。問題をうまく特定すればシンプルなアルゴリズムを適用して解けるというようなことはあるが、ここまで強調してきたように汎化能力が高く色々な問題に対応可能な知性を実現するのはまだ時間がかかるのかもしれない。


 チューリングフォン・ノイマンが生きていたら「なんてダサい方法を使ってるんだ。そんな大量のデータがなければ問題を解けるようになれないなんて。しかもそれが『最先端の人工知能』なんて呼ばれている?」というようなツッコミが飛んできそうだ。

*1:この記事では「IQ」という言葉を賢さを表すメタファーとして扱う。知性を評価するものさしとしてIQが適切かどうかという議論があるが、これに立ち入ると面倒なので、はじめに語法を示しておこうと思う。

*2:この意味では深層学習を使った人工知能(Artificial Intelligence)というのは、intelligent(賢い)というよりはむしろwise(経験に裏打ちされて分別がある)の方が適当であって、"Artificial Wisdom"とでも呼ぶ方が本質に近いのではないかとすら思う。

ジェフ・スティベル『ブレークポイント』索引(※作成中)

 

 まだ完全ではありませんが、日本語では見ないような人物や名詞、本や論文も載っているので、ネット(というかGoogle)で調べても知識が増えにくくて効率の悪さに苛立ってる人などは使ってください。

 そのままで使いづらければ各自Evernoteにでもコピーして保存して、検索しやすいように使ってください。論文や記事、動画などについては、ネット上でページが見つかったものは全てリンクを貼りました。これで各自の好奇心に期待して調べさせる手間がいくらか減ると思います。主に索引なので行間を詰めてます。

各章注

第1 序説  トナカイ  ネットワーク……273, 274
第2 アリ  アンターネット  馬糞……275-281
第3 共食い    インターネット……282-286
第4 奴隷  ニューロン  ウェブ……286-291
第5 パン  モバイル  フェイスブック……291-294
第6 チーフ  検索  文脈……294-296
第7 大衆    シェイクスピア……296-299
第8 ホヤ   利益   トラフィック……299-304
第9章 フェロモン  言語  脳……304-309
第10章 EEG  ESP  人工知能……309-313
第11章 結び  シロアリ  絶滅……313-316
第12章 あとがき  インターネットは脳である……316-319

用語索引

A
ARPA(高等研究計画局)……43
C
CDNContents Delivery Network……58 , 59
CERN(欧州原子核研究機構)……88
CYC……263
E
EEG(脳電図)……216, 220, 223
H
HRP-4……227, 311
I
iRobot(企業)……311
ISPインターネットサービスプロバイダー)……246
IXPsInternet Exchange Points……44
N
necomimi(ニューロスカイ社の製品)……224
NSF(全米科学財団)……44
S
synset……194
T
T1, T3(ブロードバンド)……51
TCPトランスミッション・コントロールプロトコル……22-24, 26, 55, 277

【あ】
アカゲザル……217
アカマイ(企業)……58
アクセルペダル……197
亜社会性……315
アドセンス……175
アドワーズ……174, 175
アパッチ(Apache)……139
アーパネット……43
アポトーシス(細胞死、細胞自殺)……19, 84, 95
アルタ・ヴィスタ……29
アンターネット……23
【い】
イーサネット……44, 50, 51
イースター島……38-42, 78, 172
イデア論……261
インテラクソン(企業)……224
【う】
ウィキペディア……139-146, 148, 149
ウミウシ……227
運動皮質……198
【え】
エゼンタイフ(企業)……222
エッジキャスト(企業)……58
NSFネット……44
エモーティブシステム(企業)……223
【お】
オニダルマオコゼ……160
オーバーシュート(生物学)……31, 32, 39, 42, 62
【か】
海馬……262
灰白質……251
活性伝播……131, 194
活動電位……19
火力発電所……54
環境収容力……29, 30, 32, 41, 47-49, 68, 69, 141, 161-163, 170, 214, 245
【き】
記憶……55, 67, 82, 83, 202, 214, 262, 264
擬似社会性……315
ギャモンノイド(ゲーム機)……228, 234, 312
キャリア・ホテル(インターネットを運営するためにコンピュータとケーブルを大量に詰め込んだビル)……56
協調フィルタリング……205
共同社会性……315
【く】
クチクラ炭化水素……182, 184, 185
クラウドソーシング……137, 139
グリア細胞……229
クリティカル・マス……178
クロール……122
群知能……137
【け】
原子力発電所……54
健全性……9
【こ】
酵母菌……28
コンテクスト……122-127, 205
【さ】
サイコグラフィックス……204
サーチエンジン……76, 77, 113-115, 118, 120, 124-126, 128-131, 187, 191, 192, 195
サーバー・ファーム……56
サムライアリ……65-67
【し】
視覚野……261
軸索……24, 59, 81, 252, 254, 259
自然独占……179
社会性……315
集合意識……250
集合的記憶(集団記憶)……15
自由市場……87
渋滞……9
集団知……15
樹状突起……24, 81, 252, 254, 259
準社会性……315
情報過多……8
神経組織発生……28
人工頭脳……253
人工知能……8, 109, 118, 235, 249, 253, 258
真社会性……315
(大脳)新皮質……57, 261
【す】
スパウン……264, 265, 319
水力発電ダム……54
スマートキャップ(エゼンタイフ社の製品)……222
【せ】
ゼオ(企業)……223, 311
前運動皮質……198
前社会性…315
セントマシュー島……5, 31, 33, 47, 78, 273
【そ】
送信……81, 99
【た】
大脳皮質……56, 57, 259
ダンバー数……93
【ち】
知識……8, 119, 120, 140. 142, 215, 234, 262
知性……19, 34, 35, 102, 143
知能……8, 16, 17, 33-35, 58, 59, 62, 137, 138, 187, 212, 217, 227, 228, 234, 235, 247, 249, 263, 265
着信……81,98
中央集権……89, 91, 100, 107
中央統制……88
【て】
ディープブルー……234
テスラ(企業)……225
データセンター……54
【と】
特異点……233-313
独裁制……89
ドーパミン……259
ドーパミンニューロン……317
トップダウン……89
共食い……39
【な】
ナレッジグラフ……121
【に】
ニューログリッド(チップ)……61, 62
ニューロスカイ(企業)……222
ニューロフィードバック……225, 226
【ね】
ネットワーク曲線……25
【は】
ハイパーシメシア……70, 71
ハイパーリンク……254
ハエトリグモ……183
ハキリアリ……236-239, 313, 314
バクテリア……28
バスティーユ牢獄……135
パーソナライズ(パーソナライゼーション)……122, 123, 126, 222
パターン認識……137
半社会性……315
【ひ】
ビッグブルー(ゲーム機)……312
ヒューマン・マシン・インタフェース……121
【ふ】
ファナック ARC Mate……227
風力発電所……54
フリーミアム……168, 180
ブレインゲート(企業)……218-222, 310
ブレインゲート(マイクロチップ……46, 272
ブレークポイント……5, 9-11, 15, 17, 27, 30-33, 37, 39, 41, 42, 47-49, 63, 68, 70-72, 77, 80, 85, 91-93, 95, 112, 140-143, 148, 149, 161, 166, 167, 171, 174-176, 188-190, 211, 244, 247, 266-268
【へ】
隔たり……94, 104
扁桃体……261, 262
【ほ】
ボツカツ……236
ホメオスタシス(恒常性)……6
【ま】
マンハッタン計画……313
【み】
ミエリン鞘……59, 60(「人工版ミエリン」)
ミツバチ……183
ミバエ……183
ミラーニューロン……197-202, 208
民主主義……246
民主制……89
【め】
モリー……24
【も】
モジュラリティー(ネットワークの効果関数)……55-57
【ら】
ライトフライヤー号……230
【り】
リナックスLinux)……139
リバースエンジニアリング(逆行分析)……200, 229, 230, 232, 313
リン脂質……59
【る】
ルンバ……311
【わ】
ワードネット(WordNet)……191, 192, 194, 195, 197, 199, 208

人名索引

【あ】
アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)……313
F・A・C・アゼヴェード……312
ドゥーア・K・アーネン……315
ダン・アリエリー(Dan Ariely  行動経済学者)……164, 271
マイケル・アルビブ(南カリフォルニア大学 神経科学者)……198
トム・アンダーソン……89-91
アナ・パウラ・アンドレード……314
【い】
ジェイソン・イワノフ(Jason Ivanov)……277
【う】
ジェニファー・ヴィエガス……316
テリー・ヴィノグラード(Terry Vinograd)……117
ルイジ・ヴィラ(バックギャモンの世界チャンピオン)……234
エドワード・O・ウィルソン(Edward O. Wilson)……272, 275, 313
ヴァーナー・ヴィンジ(Verner VInge  SF作家)……313
ジョン・ウォルシュ(John Walsh)……273
【え】
クリス・エリアスミス……265319
ジョナス・エリアソン(スウェーデン王立工科大学 交通学教授)……171
エルクラーノ=ラウゼル(リオ・デ・ジャネイロ連邦大学 神経科学者)……52, 53, 312
W・N・エレージー……314
キンバリー・M・エングラー……315
【お】
マイケル・オコーネル……276
【か】
ニコラス・G・カー(Nicholas G. Carr)……75, 85
ガルリ・カスパロフ……234
レイ・カーツワイル……233, 271, 313
L・R・B・カルヴァロ……312
エリック・R・カンデル……276
【き】
デイヴィッド・ギアリー(脳科学者)……212
アニケット・キッター(カーネギーメロン大学教授)……144
スコット・キルスナー……311
ジョージ・ギルダー……318
【く】
グーテンベルク(Gutenberg)……85
デイヴィッド・クライン……273
マルコム・グラッドウェル……104, 105, 257, 272, 317
ニコラス・A・クリスタキス……241, 315
L・T・グリンバーグ……312
スティーヴン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)……274
グラディ・J・グレン……315
【け】
ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)……102, 271, 312
【こ】
ジョージ・コーズ(ブリタニカの社長)……143
デボラ・ゴードン(Deborah Gordon)……13-15, 18-20, 22, 23, 34, 67, 68, 183, 184, 272, 275, 276, 277
ロジャー・E・ゴールド(Roger E. Gold)……315
エルコノン・ゴールドバーグ(Elconon Goldberg)……201, 202
ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)……262, 271, 318
【さ】
マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)……90-92, 100, 148, 166, 173, 176, 177
【し】
ウィリアム・ジェームズ(William James)……276
ニコール・M・ジェラード(Nicole M. Gerard)……314
ダイアナ・L・シックス(Diana L. Six)……315
ダニエル・シーベルグ……75
デバブラット・シャー……204
エリック・シュミット(Eric Schmidt)……263, 318
マーサ・シュルスキー……273
テッド・R・シュルツ(Ted Schultz)……315
ジャン・ショイエルマン……218-220, 222, 310
スティーブ・ジョブズSteve Jobs)……112
スティーヴン・ジョンソン(Steven Johnson)……271
マティアス・シンドラー(ドイツのウィキペディアの役員)……143
【す】
ウィルフレッド・B・スコフィールド……273
テレンス・C・スチュアート(Telence C. Stewart)……319
エド・ステイブラー(UCLA コンピュータ言語学准教授)……186
デイヴィッド・G・ストーク……276
【た】
ジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond)……245, 316
ジェームズ・タウンゼンド(James Taunzendパデュー大学 心理学者)……316
S. ダネット(S Dannet)……318
サンドラ・ルーマン・タルボット(Sandra Luman Talbot)……273
スティーヴン・S・タルボット(Steven S. Talbot)……273
チャーリー・タン……319
ディズニー・S・タン……310
J・M・ダンガーフィールド……314
ロビン・ダンバー(Robin Dunber)……93
【ち】
シュアン・チュー(Shuang Choo)……319
ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)……186
【つ】
ローレンス・ツウィーベル(ヴァンダービルト大学 生物学者)……183
【て】
フランシー・ディープ(Francy Deep)……319
ラヴィス・デウルフ……319
ダニエル・デネット(Daniel Dennet)……21, 230. 254, 271, 276, 313
フレデリック・デルサック……276
【と】
リチャード・ドーキンス(RIchard Dawkins)……227, 271, 312
ジョン・ドナヒュー(ブラウン大学 神経科学者)……218
ジョン・W・トムソン(John W. Thompson)……273
【に】
アントン・ニジョールド……310
【は】
ハリー・N・ハウエル・Jr. (Harry N. Howell Jr.)……315
デイヴィッド・バードソング(David Birdsong  テキサス大学 言語学者)……190
ジョージ・バーナード・ショー(George Barnard Shaw)……184
【ひ】
A. ビョークランド……318
スティーヴン・ピンカー(Steven Pinkerハーバード大学 言語学者)……189, 190, 261, 271, 276
【ふ】
デイヴィッド・ファイロ……113, 166
H. ファウラー……241, 315
J・M・ファーフェル……312
エバーハルト・フェッツ(生物物理学者)……216, 217, 220, 310
R・E・L・フェレッティ……312
モリー・フォアヴェルク……276
ルイーズ・カルロス・フォルティ(生物学者)……314
ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)……233, 234, 313
スティーヴン・ブディアンスキー……170
ジル・プライス(Jill Price  ハイパーシメシアの患者)……70, 71
バラジュ・プラバカー(スタンフォード大学 コンピュータ科学者)……277
プラトン(Plato)……226. 260, 318
セルゲイ・ブリンSergey Brin……166
ジークムント・フロイト(Sigmund Freud……187
【へ】
ラリー・ペイジLarry Page……166
トレヴァー・ベコレイ……319
ジェフ・ベゾス(Jeff Vezos)……207
ヘーパイストス……311
ハンス・ベルガー(天文学者……215-217, 220, 310
バート・ヘルドブラー……242, 275, 313, 314

カール・ヘルプ(Karl Herrup)……278
ワイルダーペンフィールド(Wilder Penfield  マギル大学 神経学者)……188
【ほ】
マリア・アパレシーダ・ボアレット……314
レベッカ・ボイル……319
ブラッドフォード・A・ホーキンス……314
デイヴィッド・ポーグ……311
ジョン・ホークス……211
エリック・E・ポーター……314
ダグラス・ホフスタッター……257, 317
ホメロス(Homer)……226
ブラッドリー・ホロヴィッツGoogleグラス開発責任者)……98
ポンパドゥール夫人……134
【ま】
ジョン・マーコフ……319
ハワード・マーゴリス……256, 257, 317
T・S・マッカーシー……314
ジェームズ・マレー……145, 146
ルネ・マロワ……277
【み】
ウルリッヒ・G・ミュラー……314
ジョージ・ミラープリンストン大学 言語学者)……191, 195, 197
ディニ・M・ミラー……314
ジョン・スチュアート・ミル(John Stewart Mill)……179
【め】
マリッサ・メイヤー(Marrisa Mayer)……109-112, 122, 128, 271
ボブ・メトカーフ(Bob Mecalfe)……48, 50
【も】
マーク・モフェット……242, 316
サミュエル・モールス……60
アルデニス・モレイラ(生物学者)……314
リード・モンターニュ……318
【や】
キンバリー・ヤング……75
ジェリー・ヤング(Jelly Young)……113, 166
スーザン・ヤング(Susan Young)……311
【ら】
ダニエル・ラスムッセン……319
V. S. ラマチャンドラン……198
リチャード・ランガム(ハーバード大学 人類学者)……52
【り】
ジャコモ・リッツォラッティ(パルマ大学 神経科学者)……196, 197
レナート・E・P・リート……278, 312
レオナルド・リード……241, 242, 315
マット・リドリー(Matt Ridley)……242, 315
ジェフリー・リン……219
【る】
ルイ15世(Louis XV)……134, 136, 138
【れ】
ダグ・レナート……318
W・J・フィロー、R・レント……312
【ろ】
ラリー・D・ローゼン……75
ジュリアン・ロペス(Julian Ropez)……314

書名索引

【A】
"Ants at Work: How an Insect Society is Organized"(デボラ・ゴードン)……275
【B】
"Brain-Computer Interfaces: Applying Our Minds to Human-Computer Interaction"(ディズニー・S・タン、アントン・ニジョールド編)……310
【D】
"Deals from Hell: M&A Lessons That Rise above the Aches"(ロバート・F・ブルーナー)……273
【E】
『EQ  こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン)……262, 318
【I】
"I am a Strange Loop"(ダグラス・ホフスタッター)……257, 317
"In Search of Memory: The Emergence of a New Science of MInd"(エリック・R・カンデル)……276
【P】
"Patterns, Thinking, and Cognition: A Theory of Judgment"(ハワード・マーゴリス)……317
【S】
"Scientific American Book of the Brain"……312
"Subterranean Termites"(ロジャー・E・ゴールド、ハリー・N・ハウエル・Jr. 、グラディ・J・グレン、キンバリー・M・エングラー)……315
【T】
"The Ants"(エドワード・O・ウィルソン&バート・ヘルドブラー)……275
"The Insect Societies"(エドワード・O・ウィルソン)……275
"The World Book 2001"……312
【W】
"Wired for Thoughts: How the Brain Is Shaping the Future of the Internet"(ジェフ・スティベル)……312, 316
【Y】
"Your Brain Is (Almost) Perfect: How We Make Descisions"(リード・モンターニュ)……318
【あ】
『アリはなぜ、ちゃんと働くのかー管理者なき行動パターンの不思議に迫る』(デボラ・ゴードン)…..275
【い】
イリアス』(ホメロス……226, 311
【お】
老いて賢くなる脳』(エルコノン・ゴールドバーグ)……201
【か】
『解明される意識』(ダニエル・デネット)……254, 276, 317
【け】
『計算機と脳』(ジョン・フォン・ノイマン)……313
『言語を生み出す本能』(スティーブン・ピンカー……189
【こ】
『心の仕組み  人間関係にどう関わるか』(スティーブン・ピンカー)……276, 318
『国家』(プラトン)……318
【し】
種の起源』(チャールズ・ダーウィン)……274
『心理学(心理学原理の縮刷版)』(ウィリアム・ジェームズ)……276
『人類はどこから来て、どこへ行くのか』(エドワード・O・ウィルソン)……275
【つ】
『つながり  社会的ネットワークの驚くべき力』(ニコラス・A・クリスタキス&H. ファウラー)……241, 315
【て】
『天才!成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル)……258, 317
【と】
『毒になるテクノロジー』(ラリー・D・ローゼン……75
【ね】
『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』(ニコラス・G・カー)……75
【は】
『ハキリアリ  農業を営む奇跡の生物』(バート・ヘルドブラー&エドワード・O・ウィルソン)……314
ハムレット』(シェイクスピア……157
【ふ】
フルハウス  生命の全容ー四割打者の絶滅と進化の逆説』(スティーヴン・ジェイ・グールド)……274
『文明崩壊  滅亡と存続の命運を分けるもの』(ジャレド・ダイアモンド)……245, 316
【ほ】
『ポストヒューマン誕生  コンピュータが人類の知性を越えるとき』(レイ・カーツワイル)……233, 313
【み】
「みんなの意見」は案外正しい』(ジェームズ・スロウィッキー)……148
【も】
『盲目の時計職人  自然淘汰は偶然か?』(リチャード・ドーキンス……227, 312
 

記事索引

【A】
"A Gentler Way to Start the Day"(スコット・キルスナー)……311
"Artificial Brain: 'Spaun' Software Model Mimics Abilities, Flaws of Human Brain"(フランシー・ディープ)……319
【B】
"Better Than Human: Why Robots Will - And Must - Take Our Jobs"(ケヴィン・ケリー)……312
【C】
"CYC-O"(ダグ・レナート&ジェフリー・ゴールドスミス)……318
【E】
"Entrepreneurs See a Web Guided by Common Sense"(ジョン・マーコフ)……319
【I】
"I, Pencil"(レオナルド・リード)……241, 315
【M】
"Meet Spaun, the Most Complex Simulated Brain Ever"(レベッカ・ボイル)……319
【P】
"Patient Shows New Dexterity with  a Mind-Controlled Robot Arm"(スーザン・ヤング)……311
【S】
"Subterranean Termite Biology Behavior"(ディニ・M・ミラー)……314
【T】
"The Information Factories"(エリック・シュミット)……318
"The Normal Well-Tempered Mind"(ダニエル・デネット)……313
"The Robot in the Next Cubicle"……312
"The Worst Mistake in the History of the Human Race"(ジャレド・ダイアモンド)……316
"To Sleep, Perchance to Analyze"(デイヴィッド・ポーグ)……311 

論文索引

【A】
"A Large-Scale Model of the Functioning Brain"(クリス・エリアスミス、テレンス・C・スチュアート、シュアン・チュー、トレヴァー・ベコレイ、トラヴィス・デウルフ、チャーリー・タン、ダニエル・ラスムッセン)……319
"Amy Ants Trapped by Their Evolutionary History"(フレデリック・デルサック)……276
【C】
"Capacity Limits of Information Processing in the Brain"(ルネ・マロワ&ジェイソン・イワノフ)……277
【D】
"Deciphering Ant Communication"(モリー・フォアヴェルク)……276
"Dopamine Neurons"(S. チンタ&J. アンダーセン)……318
"Dopamine Neuron Systems in the Brain: An Update"(A. ビョークランド&S. ダネット)……318
【E】
"Equal Numbers of Neuronal and Nonneuronal Cells Make the Human Brain an Isometrically Scaled-up Primate Brain"(フレデリコ・A・C・アゼヴェド、ルドミラ・R・B・カルヴァロ、リー・T・グリンバーグ、ホセ・M・ファルフェル、ルナータ・E・L・フェレッティ、レナータ・E・P・レイテ、ウィルソン・ジェイコブ・フィロー、ロベルト・レント、スザーナ・エルクラーノ=アウゼル)……278, 312
【L】
"Latitudinal Gardients in Colony Size for Social Insects: Termites and Ants Show Different Patterns"(エリック・E・ポーター、ブラッドフォード・A・ホーキンス)……314
"Lichens from St. Matthew and St. Paul Islands, Bering Sea, Alaska"(スティーヴン・S・タルボット、サンドラ・ルーマン・タルボット、ジョン・W・トムソン、ウィルフレッド・B・スコフィールド)……273
【N】
"Nest Architecture of Atta laevigata (F. Smith.1858) (Hymenoptera Formicidae)"(アルデニス・モレイラ、ルイーズ・カルロス・フォルティ、アナ・パウラ・アンドレード、マリア・アパレシーダ・ボアレット、ジュリアン・ロペス)……314
"Neurological Stamp"……310
"New Measure of Human Brain Processing Speed"……277
【O】
"Operant Conditioning of Cortical Unit Activity"(E・E・フェッツ)……310
【S】
"Serial vs. Parallel Proessing: Sometimes They Look Like Tweedledum and Tweedledee but They Can (And Should) Be Distinguished"(ジェームズ・タウンゼンド)317
【T】

"The Control of Neuron Number"(ロバート・W・ウィリアムズ、カール・ヘルプ)……278
"The Evolution of Agriculture in Insects"(ウルリッヒ・G・ミュラー、ニコール・M・ジェラード、ドゥーア・K・アーネン、ダイアナ・L・シックス、テッド・R・シュルツ)
"The Instruction, Increase, and Clash of Reindeer on St. Matthew Island"(デイヴィッド・クライン)……273
"The Mound-Building Termite Macroterms michalseni as an Ecosystem Engineer"(J・M・ダンガーフィールド、T・S・マッカーシー、W・N・エレージー)
"The Regulation of Ant Colony Foraging Activity without Spatial Information"(バラジュ・プラバカー&デボラ・ゴードン)……277
 【W】
"What Killed the Reindeer of Saint Matthew Island?"(デイヴィッド・クライン、ジョン・ウォルシュ、マーサ・シュルスキー)……273

講演・スピーチ索引

【T】
"The Emergent Genius of Ant Colonies(邦題:「デボラ・ゴードンのアリにかける情熱」)"(デボラ・ゴードン)……275
【あ】
アイデアがセックスするとき」(マット・リドリー)……315

サイト索引

【I】
Internet World Stats……276
【N】
Netcraft……277
【Y】
YouTubeの独自の統計……277

映像索引

【A】
"Ants: Nature's Secret Power"……314
【E】
"Evoluthion Intelligence: Daniel C. Dennet Interview"(『2001年ーHAL伝説』番組中のデイヴィッド・G・ストークとマイケル・オコーネルによるダニエル・デネットへのインタビュー)……276
【T】
"Tesla's Big Gamble: Can the Electric Car Go Mainstream"("All Things Considered"内のコーナー)……311

 

 

人工知能をどう考えるか

 人工知能についてどういう風に考えるべきかということをときどき考える。人間の仕事を奪うとか、人間には思いもよらないような解決の仕方を発見するとか、あるいは人間の存亡を脅かすのではないかなど、いろいろな語られ方をしているが、そのどれもが自分にはいまいちピンとこないような感覚があった。人工知能に対する懸念を表面する人間としてしばしば取り上げられるのはビル・ゲイツホーキング博士イーロン・マスクの3人だろうか。少し調べてみたところ、どうも彼らの懸念の根拠になっていそうなのがニック・ボストロム(Nick Bostrom)の"Superintelligence"(未邦訳)で、これは去年手に入れて初めの何ページかを読んで以来、止まってしまっている。副題が”Paths, Dangers, Strategies”(経路、危機、戦略)であることからもわかる通り、人工知能の危険性を意識していることが伺える。邦訳がまだないということもあってか、GoogleTwitterで検索してもこの本に言及したり考察したりしている記事をほとんど見つけることができない*1

言葉の中身が明らかでない

 しばしば指摘される点であるが、そもそも「人工知能」(artificial intelligence)といわず「機械学習」(machine learning)という言葉を使った方が中身がわかりやすいし、変な誤解を招かずに済む。もっと言えば機械学習のどの手法を使っているのかまで明示した方がいいだろうと思う。これは人工知能の件に限ったことではないが、一般に何かについて語る場合、たとえ専門用語であっても固有名詞はなるべく使った方がいい。それを見てもし気になった人がいれば、その人はその言葉をググることが簡単になるし、関心のない人はスルーすればいい。ネット以前の世界よりは言葉の意味を調べることのハードルは下がっている。話の筋を戻すと、世間で「人工知能」と呼ばれているものの実態は、機械学習の分野の中の特定の手法を指すことになる。最近では特に深層学習(deep learning)を指すものも多いだろう。深層学習以外にもサポートベクターマシンSVM)、ボルツマンマシン(BM)など、ひとくちに機械学習といっても手法はいくつもあり、映画やアニメやマンガに出てくるような、人間に似た姿形をしたロボットや画面に文字が表示されるだけのコンピュータといったものは人工知能の本質とは関係がない。人工知能について考えるときにそういうものをイメージするよりは、機械学習とはどういう考え方で成り立っているものなのかをまずは理解する方がずっと建設的ではないかと思う*2

 残念ながら人工知能の基本的な考え方というのは一定の数式を使わなければきちんと理解することはできないため、専門的な内容としてテレビや雑誌などではあまり踏み込んで解説されることがない。松尾豊『人工知能は人間を越えるか』や大関真之『機械学習入門』、『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』などなど、数式なしで人工知能なり機械学習なりの内容を解説する本はすでにいくつも出ているし、その中には面白い本もあることにはあるが、一時の関心に止まらずに本質を理解しようと思ったら数式を理解することは避けられない。これがある種の敷居の高さとなって、人工知能とはどういうものなのかについて世間の人々が具体的にイメージすることを遠ざけてしまっている。しかしそういう考え方なりモデルなりについて知らないまま人工知能について考えることは、何か正体のわからない妖怪、怪物、あるいは宇宙人について考えるようなものではないか。原発について素人が抱くイメージとある意味では変わらないように思える。エンターテイメントとしてはそれでもいいかもしれないが、実際的ではない。

 人工知能について、しばしば将棋やチェスで人工知能が人間のプロに勝ったことがテレビ番組や雑誌の特集などで取り上げられ、その影響は将棋やチェスに留まらず、タクシーや医療における診断、法曹における最適な判例の抽出と提示など、広く様々な分野へ多大なインパクトを与えるだろうと言われたりする。そういうときに「人工知能」という言葉で何が名指されているものはとてもぼんやりとしていてはっきりしないことが多い。さきほどと違う喩えを使うと、常人から見れば天才は何を考えているのかさっぱりわからないということと同じように見える。

 例えば将棋の対局のときに羽生善治がどう考えているかを素人が見抜くことは難しいということと同じなのではないか。人工知能が中身の見えないブラックボックスとして、恐怖感を募らせているだけだとすれば、先ほども述べたがエイリアンなりモンスターなりを恐れているのと変わらないのではないか。本当にブラックボックスならばしかたないが、深層学習なら深層学習で、どういう理屈なのかということははっきりしているわけで、まずはそういうもののロジックを理解すればボックスの中身が次第に見えてくるだろう。

どのように問うべきか

 どういうモデルなり考え方を使って人工知能が実現されているのかということに注意すると、「人工知能は私たち人間を脅かすのか」と問うのではなく、たとえば深層学習によって考えるということは、将棋の問題を人間が考えるということとどこがどう違うのかと問う方がよいのではないか。

    人工知能が色々な領域で応用されていくとすれば、深層学習の考え方はそれぞれの領域でそれぞれの分野の人間たちが仕事をしているときに意識的に、あるいは無意識のうちに使っているものの考え方とどこがどう違うのか、さらにいえば深層学習という考え方は、社会で起こる問題について考え、判断するというときにどれほど普遍的に使えるものなのかというふうに問う方がよいのではないか。

    それはたとえば帰納法演繹法がどれくらい使える考え方なのかを考えることと同じ類のことではないか。将棋で先の展開を読む場合、どうして深層学習という考え方で先が読めるのか、そしてその考え方はタクシーの利用者がどういう場所にいるかを予測するのにも使えるのはどうしてなのか、それはタクシーの運転手が予測をするのとどう違うのかということを考える方が、人工知能について漠然としたイメージをもとに考えるよりもずっとましだろうという気がする。

 たとえば深層学習が、人間のものの考え方や脳内の神経細胞の活動パターンと似通っているとすれば、膨大なデータをより早く正確に処理できるコンピュータの方が有利に決まっている。やや込み入った疑問であるが、深層学習なり、あるいは他の色々な機械学習のモデルなりの考え方というのが、PDCAなりMECEなり、あるいはマクロ経済学におけるDSGEモデル(Dynamic Stochastic General Equilibrium:動学的確率一般均衡モデル)やゲーム理論におけるミニマックス法*3のような特定の学問領域のモデルといった、人間が学んで意識的に使いこなしている考え方と似ているのか、それともニューロンの発火や神経伝達物質の伝達のパターンのような、人間が特に意識しないうちに実行されている思考の基盤となる物理的な反応と似ているのかというところは気になる。

 「人間の知能を人工的に再現する」という人工知能研究のもともとの目的と、脳内のニューロンのネットワークを形式的に表現するところから始まったのがニューラルネットワークであったという二点を考慮すれば、後者との類似性を考える方が自然ということになるが、現実にはむしろ前者、つまり個々の業界の現場の人間の従来の考え方と、人工知能の「考え」との違いに注目が集まっているように見える。その最たる例といえそうなのが囲碁の戦略であり、プロ棋士人工知能に破れたとき、人間は実は広大な囲碁の世界のほんの一部の戦略しか知らなかったということを思い知らされることになった。人工知能がとった奇抜な戦略を学び、積極的に取り入れるということも起こっている。最初は人工知能が教わる側であって、教える側である人間の過去の対局から学んだ人工知能が、学習スピードと記憶容量の点で人間をはるかに上回り、今度は人間の方が人工知能に学ぶようになるという逆転が起こった。こういうことは囲碁の世界に限らず、他の様々な領域においても起こる現象だろうと思う。

 一方で機械学習では人間が「直観」と呼んでいるもののはたらきは実現することができないといわれる。この点では人間にもまだ分があると考えられる。ここで「直観」とは、ある状況において何が問題であるのかを見抜く力を指す。プログラム(program)とは予め(pro)書く(gram)というのが語源であるように、コンピュータが実行するどんな処理も、人間の側から前もってやり方を伝えた通りにしか実行されない。

    もちろん直観といっても、本人には説明できないだけでやっていることの中身は機械学習と同じだということが脳科学の研究によって今後明らかになれば、これも人間には分が悪いということになってしまう。それは人間と人工知能の違いというよりは、同じ考え方をしていても計算が早い人間と遅い人間がいて、計算が早い人間の方が有利ということと同じである。

 あるいは汎化能力の点でもまだ人間の方が上だろうと思う。これは以前に他の記事でも書いたことがあったかもしれないが、たとえばさいころを振ったときに1から6までの目がそれぞれ6分の1ずつの確率で出るということは、人工知能よりも人間の方がはるかに早く学習する。極端な話、人間ならば実際にサイコロを降らなくても、サイコロを見ただけで出る目の確率分布を見抜ける人間もいるだろう。

 しかし人工知能となると、実際にサイコロを何度も何度も振ったデータを食わせないと確率分布を学習できないし、もしも食わせたデータに偏りがあれば間違った確率分布を答える可能性すらある。この点は特に重要で、全く同じモデルであっても与えたデータが異なるだけで人工知能の学習の精度が違ってくる。人間も教材が違えば成果が違うということはあるかもしれないが、よほどひどい教材でない限り、ちゃんと使えばそれなりに正しく学習できるのではないだろうか。人工知能は教材を選ぶというのは少し厄介だなと感じる。深層学習による画像認識の精度の向上が進んでいるとしても、まだ今のところは画像認識だけで人工知能がサイコロの出る目の確率分布を当てることはできないだろうと思う。

 ただし大量の「適切な」データが集まれば人工知能の方が学習精度が高くなる例はすでにいくつも出てきているわけで、今はまだごく限られた領域でしかデータが揃っていないかもしれないが、センサーが至る所に張り巡らされてそこからデータがどんどん蓄積され、それをもとに人工知能が学習を続けるということが日常的になれば、人間が敵わない領域というのはどんどん増えていくだろうと思う。それを危険視する見方もあるが、自分たち(ホモ・サピエンス)では解決できない問題を、自分たちよりも賢い存在(人工知能)を生み出すことによって解決できるならいいのではないかと思ったりもする。そういうかたちでの進歩というのはおそらく人間以外にはないユニークな戦略であって、人間が人間らしい賢さを示すいい機会なのではないかと個人的には思ったりする。もちろんその結果として自分たちが滅びたとしたら、人間の知性なんてその程度だったということになってしまうわけだが。そういう可能性もなくはないなとも思う。

 深層学習によって答えを出すことと、人間がなんらかの枠組みに基づいて考えて答えを出すことではどこがどう違うのかということについて詳しく書かれた本というのを、私はまだ見つけることができていない。そもそも世の中に出ていないのか、私が見つけられないだけなのか、個人的には後者であって欲しいと思っている。 

 

【追記】

最近ジャン=ガブリエル・ガナシアというフランスの哲学者が書いた『そろそろ、人工知能の真実を話そう』という本を見つけ、読み始めた。まだ第5章までしか読んでいないが、この記事の問題意識に通じるようなことが書かれていて面白い。読み終えたらこの記事を更新し、より内容を充実させられればと思う。

Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies

Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies

 
人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)
 
アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか (ベスト新書)

アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか (ベスト新書)

 

 

 

*1:数少ない例として次の2本の

記事が挙げられる。イーロン・マスクが同書に言及していることに言及している。

tkybpp.hatenablog.com

 

http://businessnewsline.com/news/201408072228110000.html

*2:余談になるが、「不気味の谷」という言葉がある。人工知能に対して抱く感情について、利便性がある段階を越えると人間は人工知能に対して快適さを感じるが、ある特定の範囲内ではむしろ不気味さを感じるというものである。映画で描かれる人工知能の多くはこの不気味の谷におさまるのではないかという印象がある。エンターテイメントとしてわざと狙っているのか、それとも無意識に不気味な人工知能しか想像できないだけなのかはわからないが、快適さを感じる人工知能を描く作品がもっと出てきてもいいのではないかと個人的には思う。

*3:ミニマックス法機械学習でも使われている考え方なので、他分野の例としては適切ではないかもしれない。

美容院を変える客と囚人のジレンマ

 もう一年以上前のことになるが、私が使っている美容院でスタイリストの方と話したことを書こうと思う。ちょうど今日、久々にその店でまた髪を切ったのだが、別のスタイリストの方とこの話をして、以前より話の筋がまとまったので、文章にすることができるだろう。

 美容院側は、客がどうして美容院を変えたのかを知ることができない。それを知ることができれば、客が離れないようになんらかの手を打てるかもしれない。客からの意見なり感想なりのフィードバックがあるかないかは、美容院側の対応の効率と質を大きく左右するが、各美容院は囚人のジレンマと同じ状況に直面しており、そのせいで必要な情報を得ることができないでいるのではないか。

 どういうことか、具体的なケースを想定してみる。二つの美容院Aと美容院Bがあり、ある客Xが美容院Aから美容院Bに変えたとき、美容院AのスタイリストたちはXが美容院Bに変えた理由を知ることができない。一方Bの方は、新規でやってきたXに対して、アンケートなどの手段を通して自分の美容院へ来た理由を聞くことができる。その理由を分析すれば、客が元の美容院を変えた理由がわかるかもしれない。しかし、美容院Bが競合相手である美容院Aとその情報を共有するインセンティブは存在しない。あえて教科書的にいえば、一般に市場経済では、競争を通じてよりよい企業が生き残るとされる。そこでは自企業の情報を他企業に教える企業など存在しない。競争上不利になるからだ。美容院Aと美容院Bが逆の場合でも同じことで、やはり競争という条件が他企業との情報の共有を妨げる。

 ところが、実は二つの美容院Aと美容院Bは、それぞれ新規の客に対するアンケートの情報を互いに共有することによって、どちらもよりよいサービスを提供できる可能性が高まる。ゲーム理論に沿っていえば、相手を出し抜こうとするよりも協力した方が合理的であるとわかっていても、相手が裏切った場合のことを考えてしまって協力できないでいる。典型的な囚人のジレンマの状況である。

 データベースを作り、店舗の垣根を超えてそれを共有すれば、何もしない場合よりも全ての美容院にとってプラスになるが、競争しているのだからそんなことできないとでもいうかのように、情報の共有は発生しない。だから店を変えた客がどうしてそうしたのかを示す情報のフィードバックは生まれないままだ。

 今日話したスタイリストの話では、ある美容院では店を離れた客に返信用の封筒も添えてハガキを送り、どうして店を変えたのかを教えてもらうよう促しているらしいのだが、1000通送って返ってくるのはほんの数通という程度らしい。10通で1%だから返信率は1%未満ということになる。これでは母数が少なすぎるし、サンプリングバイアス*1の可能性も否定できないため、統計的にも役に立たない。それならばまだデータベースの共有の方が確実だと思うのだが、現実にはそういうことは起こらないのだろう。なんとももったいない話である。

 もしも囚人のジレンマが当てはまるならば、対処法はもう決まっている。「抜け駆けなど考えず互いに協力するのがベスト」である。現実に協力が生まれないのは、当事者たちが自分の置かれている状況が囚人のジレンマだと気付いていないからなのか、それとも気付いてはいても協力を阻む要因があるということなのか判断がつかないが、少し希望が持てることはスタイリストの方から聞いた。なんでも昔に比べて美容師たちの店舗を超えた交流が活発化しているらしい。こういう交流を通じて客が美容院を変えた理由についてもお互いに理解が深まることがあればと思う。

*1:この例の場合、わざわざ返事のハガキを送ってくれる客というのはあらゆるタイプの客とはいえず、特定のタイプの客に偏っている可能性があるということになる。

ルールの役割について

 

 論理学はほんの少しかじった程度だが、それでも論理学は私にとって大いに役に立つ。あることについて考えるばあいに、間違った考え方をするのを避けられるからだ。近頃の私は、個別と一般の関係について考えることが多い。おそらくは家で過ごすことが多く、外に出て特定の問題にかかずらうことがほとんどないために、こういう抽象的なことを考えがちになってしまうのだろう。今回はルールの役割について、論理学における全称記号(∀)と存在記号(∃)の区別に基づいて考えようと思う。本題に入る前に、まずは全称記号と存在記号の区別から始める。

「一概にA」という言い方

 「一概にAだ」といえないことに対して、無理にそうだと決めつけるのは筋が悪い。けれども人はしばしば、この種の誤りを犯す。「XはA」と考えるか「XにはAであるものもあれば、Aでないものもある」と考えるかは大きく異なる。私がこの問題について考えさせられた最初の例は、「逆もまた真」という言葉だった。論理学によれば、あるいはそんなに大げさなことでなく高校の数Aによれば、ある命題が真であるとき、「対偶もまた真」は常に成り立つが、「逆もまた真」は常に成り立つわけではない。真か偽かはケースバイケースで決まる。しかし「逆もまた真」という言葉を、どんな場合にも成り立つ原則ででもあるかのように使っているのを時折目にする。単なる私の思い違いかもしれないが、もしもそうでないとしたら、これは一概にAとはいえないことを一概にAと考えるという過ちを犯している例といえる。

ケース1:長財布と知性

 具体例を二つ挙げよう。一つ目は「長財布で改札を通る人間は、まず間違いなく頭が悪い」について*1。このままでは論理学の枠組みで扱いにくいので、意味が変わらないように注意しながら「ある人間が改札を通るときに長財布で通るならば、その人間は頭が悪い」という言い方に変える。これを命題Pとすると、対偶は「ある人間が頭がいいならば、その人間は改札を通るときに長財布で通らない」となり、命題Pが真ならば対偶も常に真である。今度は命題Pの逆を考えると「ある人間が頭が悪いならば、その人間は改札を通るときに長財布で通る」となる。命題Pが真であるとしても、逆が常に真とは限らない。この場合、長財布で改札を通らない人間の中にも、頭の悪い人間がいるからだ。これが反例になる。

ケース2:秦王朝と官僚制

 一つ目の例はそもそも真かどうかが怪しい命題だったので、二つ目は明らかに真だといえるものを扱う。「世界で初めて官僚制を採用した国は、中国の秦王朝である」について。これも言い換えると「ある国が世界で初めて官僚制を採用した国であるならば、その国は中国の秦王朝であるといえる」となる。これを命題Qとする。これは確認できる歴史的事実であって、真である。対偶は「ある国が中国の秦王朝でないならば、その国は世界で初めて官僚制を採用した国とはいえない」であり、これも真である。逆は「ある国が中国の秦王朝であるならば、その国は世界で初めて官僚制を採用した国であるといえる」であり、この場合逆もまた真といえる。すでに述べたように、「逆もまた真」というのは、成り立つ場合もあれば成り立たない場合もあり、ケースバイケースである。

全称記号と存在記号

 冒頭で全称記号と存在記号についてと書いた割に、今のところどちらも登場していないが、下準備としてこれに関係することについてはすでに述べたので、以下でこの二つの記号について述べようと思う。

全称記号について

 全称記号とは「任意のXについて」という言い方で表現できることがらを記号で表すもので、「∀X」と表す。たとえば「任意の個人について、その個人はDNAによって髪や皮膚、目の色などの遺伝的特徴が表現されている」のように使う。全称記号とはその言葉の通り、全てのことがらに対して当てはまるような性質を述べるときに使う。「任意のXについて」は「全てのXについて」と言い換えて差し支えない。英語で考えた方がわかりやすければ、「for any X」とか「for all X」と表現できる。

存在記号について

 一方で存在記号とは「あるXについて」という言い方で表現できることがらを記号で表すもので「∃X」と表す。たとえば「ある個人について、その個人は日曜になると後ろ向きにしか歩かない」のように使う。全称記号に対して存在記号は、存在という言葉の通り、全てそうだというわけではないが、中にはこういうものもあるというようなものについての性質を述べるときに使う。こちらも英語で考えれば「for some X」と表現できる。

「一概にA」の話とどうつながるのか

 「一概にA」の話とこれらの二つの記号がどうつながるか、察しのいい読者や論理学に明るい読者などはすでに気付いたかもしれない。つまり、「一概にX」といえるものは全称記号を使って表現でき、「一概にX」とは言い切れないものは存在記号を使って表現することになる。冒頭で取り上げた「逆もまた真」という表現はどうかといえば、これは一概にそうとはいえないので、「ある命題については、逆もまた真である」とはいえるが「任意の命題について、逆もまた真である」とはいえない。∀ではなく∃を使うべきである。

 私は冒頭で「個別と一般の関係について考えることが多い」と述べたが、それについてここまでの話を踏まえていえば、「一概にA」と言えることや全称記号で表現されることは一般的に考えてよいこと、それに対して存在記号で表現されることは個別に考えるべきことであるといえる。個性があるものは、個別に考えるべきものであると考えられるが、人は一般に、ある問題について個別に分割して考えることが面倒であるために、本来は個別に考えるべきものでもひとくくりにして一般的に考えてしまう。そういう「手抜き」が偏見*2の生まれる原因のひとつであることは明らかである。目の前にいる人間が女性であると、その人個人を見ることなく「女性なんてどうせ◯◯」とか「これだから女は…」などと考える方が楽なのだ。個性と向き合うのは簡単でない。そして個性について本当に理解するためには、一般性についても理解しなければならない。けれども人間は一般に、ものを考えることを厭う存在であるなら、人間の判断は存在記号よりも全称記号を使って表現される方へ偏りやすくなる。人間には一般にそういうバイアスがあるのではないか。世の中に存在する、ありとあらゆることについての判断に対して全称記号と存在記号を割り当てていくと、おそらくは全称記号で表現されているものの中には、本来なら存在記号を使って表現されるべきものがかなり混じっているのではないか。

ルールの存在意義について

 ここまでは原則めいた話ばかりしてきたが、どうして私が全称記号と存在記号の区別などについてこのように真面目に考えているのかというと、それは私が以前から関心のあることがら、つまり法律やマニュアル、条例など、一般に「ルール」と呼ばれるものが存在する意義について考えるときに、この区別が重要な意味をもつと考えるからだ。どういうことか。それについて考える前に、まずはルールというものを分類することから始める。

 ルールには大まかにいって二つの種類があるといえる。一つはケースバイケースでの判断のコストを削減するという効率の観点から説明できるもの、そしてもう一つは、原則的に禁じられるべきという道徳の観点から説明できるものである。別の言い方をするならば、「そうした方がよいからそうする」(better)なのか「そうすべきだからそうする」(should)なのかの違いともいえる。冒頭から「一概にA」とか全称記号と存在記号の区別などの下準備を通して私が主に考えてきたのは、もちろん前者のルールについてである。以下ではこの二つの種類について、それぞれ例を挙げて説明を試みる。

効率の観点から説明がつくもの

 私は以前に、責任と意思の関係について扱った記事*3の中で、法律の存在意義について少しだけ触れたことがある。本題とは直接関わらないことがらだったので、その記事では簡単に触れるに留めたが、この記事ではルールの意味ということについて考えてみようと思う。その記事の中でもすでに触れたように、私はルールの存在意義は、ケースバイケースで個人が判断するコストを減らすことにあると考えている。信号の例がわかりやすいと思うので、信号の例を使って考える。

赤信号で渡ってはいけないということ

 「赤信号で横断歩道を渡ってはいけない」というのは、幼稚園児でもわかることだ。けれども赤信号を無視して横断歩道を渡る大人は今でも存在し続けている。私自身も、おそらくは保育園にいた頃にはすでに赤信号で横断歩道を渡ってはいけないということはわかっていたが、大人になった今でも、私は時として赤信号でも横断歩道を渡っている。そしてこれは私個人に限ったことでもなく、日本人に限ったことでもなく、アメリカやヨーロッパ、アジアでも見られることであるから、国や宗教、あるいは文化の違いとも関係なく起こる現象といっていいだろう。赤信号を渡ってはいけないというルールは確かに存在し、それは広く知られているのに、それを破る人間が後を絶たないという事実は、いったいどうすれば説明がつくのか。

 それは、「赤信号で横断歩道を渡っていいかどうか」ということは、本来はケースバイケースで判断すればいいことであるが、各個人にケースバイケースで判断してもらうよりも、一律に禁止しておいた方が事故を防ぐには効果的だと考えられるからではないかと私は考えている。赤信号ならいかなる場合であっても横断歩道を渡ってはいけないということを道徳的に根拠づけることなど、本当はできない。ときどき無理して道徳的に許されないという方向に話を進めようとしている人間を目にするが、側から見ていると無理を感じる。本人も本当は無理だと感じながら、それでも他の説明が思いつかなくてしかたなくそうしているのかもしれない。しかし端的に言って、苦し紛れの感が否めない。

 本当は、赤信号であっても横断歩道を渡って問題ないケースというのが存在する。全称記号と存在記号の区別に絡めていえば、赤信号のルールというのは本来は存在記号(∃)で説明されるべきものを全称記号(∀)に置き換えることによってルールが成立している例であるといえる。つまり、ある場合には赤信号でも渡ってよく、別のある場合には赤信号で渡ってはいけないという代わりに、すべての場合について、赤信号で渡ってはいけないと定めるのである。

 明らかに周りで車が走っていない場合に、赤信号を渡ることにどんな問題があるというのか。ここで「赤信号を渡ってはいけないということが法律で決まっているから」という答えは適切でない。それは「ダメなものはダメ」という単なるトートロジーにすぎない。トートロジーでもいいではないかと考える人間ならばそれでもいいのかもしれないが、あいにく私はその手のタイプではない。横断歩道を渡るときに、周囲の状況を確認して、渡っても問題ないと判断できる場合なら、渡ってもかまわないと私は考える。とはいえ私も、交番の目の前の横断歩道なら、たとえ車が全く走っていなくても赤信号で渡らないが、本当は交番の目の前でも渡ってかまわないはずだと心の中では思っている。警官が立っているからダメというのは筋が通らない。警官の目の届くところでは、法律で定められていることが常に守られていなければならないというのも、よくよく考えれば怪しい理屈だと思う。私が交番の前ではどんなに車がなくても赤信号で渡らないのは、警官に注意を受けるのが面倒だと考えるからにすぎない。つまりこれも時間や手間を省くという意味で、ある種の効率化にすぎない。

 赤信号で横断歩道を渡ることは、本来は一概に禁じられるものではないが、あえて一概にダメだと決めておくことによって、個々人は判断の手間を省くことができる。先に「存在記号を全称記号に」と書いたのはこのことである。もちろん判断の手間を省くだけなら、赤信号で横断歩道を渡ることを義務付けるのでもよいが、それは結果として望ましくないので、望ましい結果になるように選択肢を一通りに定めるのである。それがルールが存在する意義なのではないか。

スポーツのルールはどうなのか

 他の例として、スポーツのルールを考える。例えばテニスで、サーブは常にクロス(斜め前)に打つことになっている。本当はクロスでなく、ストレートに打っても構わないが、どちらかに決めておいた方が、ゲームが進めやすいのだと思う。もしもクロスとストレートのどちらでもよいと決めてしまうと、サーブだけで点が決まりやすくなり、ゲームは面白くなくなってしまうだろう。それなら常にストレートに打つと決めるのはどうかというと、これでは相手が簡単にサーブを打ち返せてしまい、それはそれで面白くない。クロスに打つと決めることによって、サーブだけで点が決まる場合もあるし、打ち返してラリーが続くこともあるという風にしてゲームの展開に幅が生まれ、面白みが増すのである。これは赤信号の例に比べて、ケースバイケースでの判断がずっと難しくなる例だといえる。いや、難しいどころかそれを認めてしまうと、上に述べたようにゲームが成り立たなくなることすら考えられるため、初めから「一概にクロス」と決めているともいえる。これもまた、存在記号を全称記号に変えている例であるといえる。ある場合にはクロス、別のある場合にはストレートというように決めてはゲームが面白くならないから、全ての場合についてクロスに打つことを定めるのである。

道徳の観点から説明されるもの

 とはいえ、ケースバイケースでなく、常に許されてはならないことというのも確かにある。わかりやすい例は殺人である。情状酌量の余地がある場合もあるとはいえ、殺人は基本的にどんなケースでも許されない。これは効率とは関係なく、道徳によって判断される。そういうものは時代や地域を問わず、本来的に、ルールによって「一概にA」という形で定められる対象になる。これは先に取り上げた効率の観点から説明されるルールとは異なり、原則的に全称記号を使って表現されるほかないものである。殺人の場合、「ある場合には殺人は許されるが、別の場合には許されない」とは表現されず、「すべての場合について、殺人は許されない」としか表現されないのである。

 しかしそうはいっても、殺人と赤信号のケースは、本質が異なると私は考える。赤信号のケースでわかりにくければ、道路の片側通行で考えてもよい。道路のどちら側を走るかは、国によって右か左かにわかれる。それは本質的にはどちらでも構わず、とにかくどちらかに決めておくことによって、とりあえず事故が起こるのを避けられるという効率についての判断を基礎としている。右側通行でなければ許されないということを道徳的に判断することなどできないのである。そして多くの場合、ルールというのは赤信号や道路の片側通行のようなケース、つまり「こういう風に決めておいた方が効率がいいから」という理由で生まれているものが多いのではないか。ルールについて考える場合に、「ルールはルールだから」とか「だめなものはだめ」というようなトートロジーに陥ることなく、まずはルールを分類し、次にそれが効率と道徳のどちらの観点から考えられるべきものかと考えることが重要である。

*1:これは私のこれまでの観察に基づく単なる仮説にすぎない。が、長財布をタッチして改札を通る人間はどうも頭の悪い人間のように見えてしまう。単なる偏見かもしれないが…。

*2:すでに他の記事でも述べたことであるが、念のために述べておくと、ここでいう「偏見」とは厳密にいえば「好ましくない偏見」を指す。

*3:以下の記事における「トートロジーの形式的定義」の項を参照。

plousia-philodoxee.hatenablog.com