読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

情報と時間

 近頃、情報と時間の関係について考えることが多くなった。それぞれの情報は、その属性に応じて、必要とする人へ届けられるべき「タイミング」というものがあるが、現在のインターネットはそういうところがうまく設計されていないのではないかと感じることがある。リアルタイムの情報はどんどん忘れ去られ、アーカイブはほとんど活用されていない。それは新聞を読んだりニュースを読む人が多くても、図書館へ足を運ぶ人が少ないことから推してもわかる。ネットであれば解決する問題とも限らない。

 TwitterFacebook、ニュースサイトやRSSフィード購読では、個人の他愛ないつぶやきから近況報告、これからやろうとしていることの宣言、今のこの自分を認めてもらえないことへの不満、叙情たっぷりのポエム、どこかのサイトの記事のシェアなど、良くも悪くもあらゆる情報がリアルタイムに更新される。RSSフィードならば、記事を後からまとめ読みすることもできなくはないが、TwitterFacebookともなると、過去の情報はタイムラインの下へ下へとどんどん押し流されていくため、後からまとめて読むのが面倒だ。ニュースアプリともなれば、そもそも「後からまとめて読むもの」としては設計されていないだろう。例えば、Yahoo!ニュースはあとからまとめ読みができるが、Smartnewsは政治のタブや経済のタブなど、それぞれのタブにタイル表示される記事は時間に応じてどんどん変わっていくため、過去の記事を読むのには向いていない。もしも過去の記事を読みたければ、GizmodoならGizmodo、東洋経済オンラインなら東洋経済オンラインというように、それぞれのサイトを訪問する必要がある。もっともそこで読むことができるのは、それぞれのサイトごとの過去記事であって、他のサイトの過去記事を読みたければまたそのサイトを訪問し…ということになってしまう。

 ある問題があって、それを解決するのに必要な情報がまさに必要なタイミングでもたらされるためには、情報を共有するタイミングが重要だが、ある人が今日共有した情報が、他の誰かにとっては昨日必要な情報であったり、或いは1年後に必要な情報であったりということは十分考えられる。ではそれぞれの人がそれぞれ必要なタイミングで、必要な情報をうまく入手できるためにはどういう条件が必要であるか。

 例えば私は今日、こんな記事をSmartnewsで目にした。

j-town.net

 タクシーを降りるとき、もしも忘れ物をした場合にタクシーの番号が特定でき、その忘れ物を届けてもらえるため、レシートは受け取っておいた方がいいという趣旨の記事である。私はこの記事を19時過ぎに読んだ。別の人は朝、或いは仕事の合間、或いは電車に乗っているときに読んだかもしれない。しかしまさにタクシーに乗っているときにこの記事を読んだ人間はかなり少ないだろう。この記事がもっとも役に立つとき、つまりタクシーを降りる直前に、この記事のことを思い出しやすくするためには、タクシーに乗っているときにこの記事を読むのが最適であるにもかかわらず、である。

 ネットで公開されるそれぞれの記事をいつ読むかということは個人の選択の自由であるから、もちろんこの記事もいつ読まれるかは自由である。各自が時間のあるときに読めばいいだろう。しかしその一方で、それぞれの情報には知られるべきタイミングというものがあることも確かである。各自の選択の自由に任せておいて、タイミングがうまく合う保証はない。冒頭に「ネットであれば解決する問題とも限らない」と書いたのは、ネットであれリアルであれ、情報の入手とそのタイミングは各自の選択の自由に委ねられているからだ。自由であればよいというわけではない問題もある。タクシーのレシートを受け取っておくべきという内容の記事の場合、それをベッドで寝転んで読もうが電車の中で読もうが、彼女がトイレに立ったレストランの席で暇つぶしに読もうが、それは各自の自由だと考えるよりも、タクシーでレシートを受け取らず、かつ忘れっぽい人間は一律に「タクシーに乗っているとき」にこの記事を知った方がいいだろう。忘れっぽいというのは、「タクシーの中にものを忘れてしまうような」という意味だけでなく、「まさにこの記事を必要なタイミングで思い出すことが苦手な」という意味もある。

 ネット上の様々な情報について、それぞれの情報が閲覧されるべきタイミングを機械学習で学習させ、分類器で属性ごとに分類し、タイミングを分散させるというアイデアが浮かんだ。本が優れているのは、家にいれば必要なときにいつでも手にとって閲覧(ブラウズ)できるからだ。「確かこれについてはあの本に書いてあったな…」ということがわかりさえすれば、その本を手にとって必要な情報を見つけ出して活用することができる。ネットともなるとそうはいかない。Evernoteにどんどん記事を保存する人もいるが、必要なときに必要な情報を取り出すのに、Evernoteは本ほど最適化されてはいない。キーワードが思い出せればいいが、思い出せなければ該当記事はEvernoteの記事の海の中に沈んだままである。タグである程度の分類を行なっているとしたら、毎回毎回タグの分類を行う手間が生じる。それを手間と考えない人間ならばそれもいいだろうが、万人向けではないことは確かだ。タグの分類基準が変わることもある。

 そういうわけで、やはり機械学習の技法に習熟して、情報と時間の関係を最適化した仕組みを作ってしまう方が効率がよいということになりそうだ。