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X=746

27歳 以前のこと 内省 日常 文学 東京

 1から始まって、その次に2がきて3がきて、数はどんどん増え続ける。今ではもう1000をゆうに超えてしまったことだろう。そしてこれから先も、この数はどんどん増え続ける。増えるスピードはゆるやかになっていくかもしれないが、減ることはなく、増え続ける。そして一つとして、同じ数はない。

 そんな中で、もしも746が好きになったとしたら、たとえ他のすべての数もそれぞれにユニーク(もちろん「一意」の意味で)であるとしても、746の代わりを見つけることなどできはしない。746はどこまでいっても746なのであって、745や747とは決定的に異なる数である。そして746から拒絶され、746と違う数を求めて846や155などを検討したところで、どうすることもできない。かけがえがないというのはそういうことなんだろう。

 数字で人間の個性を考えるなど言語道断だという考え方の人もいるかもしれない。ナイーブなロマンチシズムや魔術主義的思考様式に拘泥するならそれでもいいだろう。しかし数字で考えた方がわかりやすくなることも多い。それは彼らが思っているよりもずっと多い。

 毎週毎週、日曜になると決まった喫茶店で746がやってこないかと待ち続ける。もちろん746はやってこない。これから先も、やってこないだろう。そうこうするうちに、私の「出会った人々カウンター」の数字はどんどん増え続ける。いずれ2000を超える日がやってくるのかもしれない。それでも私は、100人中99人が「それはただのストーカーだよ」と判定するであろうような執着をもち続けたまま、今でも746にこだわり続けている。

 豆乳シフォンケーキを食べ終え、コーヒーをもうすぐ飲み干してしまう。キーボードの上を右へ左へと動き続ける私の指は、近頃どこかぎこちなくなっている。心にためらいがあるせいなのだろうか。いちいちタイピングする文字列について意識しなければ、タイプミスも減るし、スピードも早くなるのに、私は一体何を意識しているのだろう。何にこだわっているのだろう。Xは746だけとは限らないのに。

 もう店を出なければならない時間だ。