増刷のタイミングを予測するには

 以前から気になっていながら、結局読まないままでいた柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』がアニメ化され、アニメの方を見てみたら面白かったので、原作の文庫本を買った。アニメの放送に合わせて、アニメ版のキャラクターの絵が載った特別の表紙が期間限定で被せられている。

 ただこの『ジョーカー・ゲーム』、アニメがスタートしてからすぐに増刷*1…という風にはいかず、本屋に並べられた原作本は、経年による摺り切れを起こしていた。私はこういうところには割と神経質な方で、普段だったらこういう状態では買わず、版を重ねるまで待つことにしている。

 もっとも書店の方たちの名誉のために付け加えておくと、ここで私が「こういう状態」というのは、多くの人々からしたら「そんなの気にしないよ」というレベルの話であって、決して書店に新品として並べておいても一向に問題ないレベルだ。ただ私個人は、それでもやはり気になってしまうということだ。それこそジョーカー・ゲームの中で結城中佐が言っているように、余計なこだわりなど捨ててしまった方がマシだと思う部分もあるが、なかなかそうもいかないこだわりが私の中にはまだまだいくつもある。

 さてそんな私が、「たまには思い切って状態の悪いものでも買ってみよう」と先日思いたち、シリーズ4作のうち2作目までを購入した。最新作の4作目は、まだ出てから日が浅いので、状態のいい本が簡単に手に入るものの、3作目は状態のいいものが見つからず、これも諦めて状態の悪いものを買おうと今日もぶらっと書店に立ち寄った。

 すると角川文庫のコーナーにはいつもの様に平積みされた『ジョーカー・ゲーム』のシリーズがあり、私は3作目と4作目に手を伸ばした。そこで3作目の方の状態を何気なく目にして驚いた。ページの状態が新刊本のように綺麗だ。奥付を見ると4月30日に増刷が出ていることが知れた。

 私はこのシリーズの2作目までを購入するとき、アニメ版の人気いかんによっては、増刷がかかって綺麗な状態の本が購入できるようになるかもしれないと考え、それまでしばし待ってみようかと思ったこともあった。だが結局、それまでの自分の「余計なこだわり」を捨てる意味でも、思い切って(少なくとも私にとっては)「状態のよくない」ものを購入した。

 私の行動は早計だったのだろうか、それともさっさと原作本が読めたのだから、増刷を待つよりも合理的だったではないかと考えるべきだろうか。何を目的と考えるか、あるいは何が優先されるべき事柄であるかということによって、私の判断と行動の評価は変わってきてしまう。

 しかしせめて、私は増刷について、「もう少し待ってみよう」というよりも一歩踏み込んだ行動がとれるよう、増刷のタイミングを何らかの指標から推測する方法がないかということを考え始めた。すぐに浮かんだのは次の2つ。

①アニメの視聴率が高いほど、増刷までの時間は短くなる傾向があるだろう

②出版社が増刷を決定する際の社内での手順・仕組みがわかればいいのではないか

 ただ①も②も簡単に調べられない。視聴率については、あまりにもひどい場合*2や、とてもよい場合*3には、メディアが記事にして取り上げたりするので、それを参照することもできる。しかし、「そこそこ」の数字の場合には、わざわざそれが取り上げられることはない。

そこで、視聴率を間接的に把握することができるような別の指標が必要で、例えばネット上のアニメサイトにおける作品の再生回数やTwitter上での盛り上がりぶり、YouTubeでの主題歌の再生回数、関連グッズが出ている場合にはその人気ぶり(もっとも「人気ぶり」は、関係者の場合を別として、一般人がそれを数字で捉えるのは難しい)などから、アニメ版の視聴率がある程度推定できるのではないかと思ったりする。

 

 何かを判断するときに、そのための指標をどれくらい作れるものなのか、またその指標というのは、一部の利害関係者だけでなく、なるべく多くの人が使えるものであることが望ましい。そういうものを探すトレーニングの一環として、この問題を考えてみようと思う。

 

【追記】 

 視聴率の予測に使える指標として声優は 重要かどうか聞いてみると、「声優や制作会社、制作スタッフは重要だ」という指摘をもらった。最近少しずつ声優は誰かということを気にするようになったが、今回は事前に調べていなかった。

 ジョーカー・ゲームの場合は、声優のメンバーがかなり豪華で、曰く「女性にとってはたまらない」ような豪華メンバーらしい。また監督もすごい人物だという。私は制作会社がProduction IGということは知っていたが、所詮その程度の知識でしかなく、声優や監督までは気にしていなかった。まだまだ勉強不足だなあ。

 

 ということは、一旦まとめると

A: 声優も含めた制作スタッフ*4の知名度→B: 視聴率→C: 原作本の増刷までの時間

という流れで考えていけばいいと言える。この仮説に基づいて、過去にジョーカー・ゲームの声優さんや制作スタッフの方々が手がけたアニメについて、原作の増刷の状況を調べれば「裏付け」はできることになる。これは少し手間だが、やってみる価値はありそうだ。その上で、Twitterなどでこれらの人々の登場回数なども考慮しながらデータを取っていけば、視聴率との相関がとれそうだ。

 

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

 
ダブル・ジョーカー (角川文庫)

ダブル・ジョーカー (角川文庫)

 
ラスト・ワルツ (角川文庫)

ラスト・ワルツ (角川文庫)

 
パラダイス・ロスト (角川文庫)

パラダイス・ロスト (角川文庫)

 

 

*1:そもそも増刷というのは、書店に在庫がなくなったら起こるものであって、書店に並んでいる本が完全に売り切れなければ、増刷はかからない。もちろんこれは書店ごとの話であって、丸善ジュンク堂といった大手の書店の場合には、他店舗からの取り寄せによって対応することもあるだろう。

*2:こういう場合は「テレビドラマの〇〇、初回は9.7%からのスタート 打ち切りの可能性も…」という様なタイトルの記事が出たりする

*3:こういう場合には「テレビドラマの〇〇、初回は32.4%と好発進」という様なタイトルの記事が出たりする

*4:監督:野村和也、

シリーズ構成・脚本:岸本 卓

キャラクター原案:三輪士郎

キャラクターデザイン・総作画監督:矢萩利幸

チーフリサーチャー:白土晴一

美術監督:谷岡善王

美術設定:成田偉保

3DCGI:サブリメイション

色彩設計:野田採芳子

特殊効果:村上正博

撮影監督:田中宏

編集:植松淳一

音楽:川井憲次

音響監督:岩浪美和

アニメーション制作:Production I.G

〔声優〕

結城中佐→堀内賢雄

三好→下野 紘

神永→木村良平

田切細谷佳正

甘利→森川智之

波多野→梶 裕貴

実井→福山 潤

福本→中井和哉

田崎→櫻井孝宏

蒲生次郎→津田健次郎

佐久間中尉→関 智一