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文字の美しさについて

 汚い字に共通するのは、ある文字が画数によらず、線が離れ切っておらず、続け字のように連続的になっているという特徴をもっている点である。それは「止め跳ね払い」がしっかりしていないという言い方もできる。それに対して美しい字というのは離散的である。つまり各画がしっかりと分離し、それでいて一つの文字として調和している。そのような字が美しい。

 

 それは音楽でも同様なのかもしれない。もしもある音から出発して、すべての音が一つずつ上や下に移動しながら曲が展開していくとしたら、(つまり「ラ」の音からは「ソ」か「シ」へしか移動できず、間をとばして「レ」などの音に移動することができないとしたら)その音楽はひどくつまらないものになってしまう。音が互いに離散的に、それでいてなお全体としてはある一つのまとまりを持つことに成功しているような曲こそ、美しい曲の最低条件なのではないか。

 調和というと通常は「連続性」の方にその本質があるように思われやすいかもしれないが、実はそうではなく、それぞれの要素の断絶という意味で「離散性」が全体としてひとつのまとまりを持っている場合に、そこに調和があると感じるのではないか。