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Interdisciplinary Democracy

26歳 ネットワーク科学 学問 情報科学 政治学 社会心理学 生化学 院試対策 生物学

【2687字   目安時間:6分】

TPPに参加すべきかどうか、原発廃炉すべきかどうか、米軍基地を辺野古に移設すべきかどうか…。

 世の中にはいろいろな問題があって、要領が良くないくせに凝り性の私は、納得のいく結論を出すのにかなりの時間を要するだろう。だから少し考えた。個別の問題について考えると時間が足りない。だからどの問題にも共通する一般的な問題を考えよう。

みんなでやるか、一部の人にやってもらうか

 世の中で起きる問題は、関わる人間が「みんな」「一部の人間」かによって 

①はじめから終わりまで一部の人間だけで議論され、対処されるもの

②みんなが一部の人間に議論を任せ、一部の人間に対処してもらうもの

③みんなが議論し、みんなで対処するもの

④②と③をつなげたもの(みんなで議論しつつ、同時にそれが一部の人間の議論にも反映され、対処法は一部の人間またはみんなが決定し、実行するもの)

の4つに分類できるとしよう。問題の中身がなにかはひとまず問わないことにすれば、一般的な問題に集中することができる。

①については、経営学社会心理学を中心に相当の数の研究がすでに存在している。

②については、あまり明示的に記されることはないかもしれないが、ある意味「資本主義」(capitalism)の定義といえる。その意味ではマクロ経済学の領域であり、食品にしろ鉛筆にしろホテルにしろ、「会社」(firm / company / corporation)という単位に任せ、自由な市場で互いに競わせることによって、よりよい対処法が引き出せるだろう、というふうに考えられる。

③については、政治の問題、経済の問題、社会の問題など、まとめて「大きな問題」とひとまず言っておくことにすると、「それらについてはみんなが議論し、みんなで対処すべきだ」とよく言われる。言っているのは誰か。それは「一部の人」ということになるのだが、まあそれはひとまず置くことにする。「民主主義」(democracy)「世論」(public opinion)についての議論は、基本的には③についての議論だ、といえる。「熟議」(deliberation)の話も、みんなで話し合うときの、その「話し合い方」「なぜ話し合うことが大事なのか」についての議論だという意味では、③のについての議論とみなせる。

さて、それでは①から④のどれについて考えようか。学部生のころは、経済学を専攻していたから②がいいか? いや、その後の関心の移り変わりをもとにアップデートすると、いま最も関心があるのは④だ。

集団の情報処理についての2つの論文

Verlin B. Hinsz, R. Scott Tindale, David A. Collrach (1997) "The Emerging Conceptualization of Groups as Information Processors" Psychological Bulletin Vol.121, No.1, 43-64

R. Scott Tindale, Tatsuya Kameda (2000) "'Social Sharedness' as a Unifying Theme for Information Processing in Groups" Group Processes & Intergroup Relations Vol 3(2) 123-140

という2つの論文を読んでいる。どちらも「集団」(group)という単位での "information process"(あえて日本語にすれば「情報処理」)というのを扱っている。ざっと目を通したところ、どちらも数式はなく、ひたすら言葉での説明が続いている。最近はやりのエージェントベースのシミュレーションや数理モデルのようなものは見当たらない。特に前者は、これまでの集団研究にはこういうものがあった、という先行研究の紹介が多く、サーベイ論文のような印象を受ける。

 とはいえどちらも、私の関心と重なるところを扱っていて、「目指すところ」は同じだと思われる。私はどちらかというと数理モデルを使うアプローチを取りたいものの、参考になる視点、モデルを作るにあたってどんな変数を導入するかについてのヒントは得られそうなので印刷した。この「印刷した」というところについてはまとまった考えがあるので、またの機会にひとつ記事を書こうと思っている。

「集団で議論してなんらかの決定を下す」ということを、「集団で情報処理を行うこと」というふうに言い換えてみる。すると、それを突き詰めれば「なにか」をあちらからこちらに運び、こちらから今度はあちらに運び・・・ということを考えることになる。

いろいろなところに潜む、集団による情報処理

 そこで「なにか」の中身を考える。それが電子情報であれば、光や電波を利用してインターネットがものすごい速さでやってのけている。それが物資であれば物流(ロジスティクス)が、フェロモンであればアリの集団(ant colony)が、神経伝達物質であれば神経系が、生体電気信号であれば特に脳が、(交通のための)信号であれば結合振動子としての信号機がネットワークでやっていることと、同じだ。もちろんプロセスの方にはいくつかのバリエーションがある。つまりそれは、一般的に捉えてみれば、いろいろな領域で見られる問題(「分野横断的」な問題)だ。

 一般的な問題を考えれば、考える問題は減り、集中できると思っていたが、どうも失敗した。それはそうだ、一般的な問題を考えるということは、あれにもこれにも当てはまる問題を考えるということであり、私はそうしたあれこれをヒントにして、一般的な問題の解決策を考えようという立場をとるのだから、かえって難しくなるに決まっている。

 私は民主主義や世論について考えるために、一般化することで共通点が明らかになったいくつかのこと、つまりTCP/IPやルーティング、ロジスティクス、アントコロニー最適化、生化学、ニューラル・ネットワークと人工知能、そして同期現象などについて学ばなければならないかもしれない。

まとめ

 「集団の情報処理」は一般的な問題だ。私は民主主義や世論についての定義を書き換えてみた。別の言い方をすれば「あるものごとの捉え方」を変えた。すると考えるべき問題群はそれに応じてずいぶん変化した。

 「個別の問題」について頭を悩ますのはひとまずやめて、まずはTCP/IPから進めていこうと思う。こんなアプローチは面倒なはずなのだが、それを本当のところは面倒に感じていないところをみると、案外失敗でもないということなのかもしれない、とひとまず考えることにして。笑

 

 

 

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