『弱いつながり』を読む婦人

休日出勤。山手線の電車に乗っていると隣に座っていたご婦人が東浩紀さんが最近出した新作『弱いつながり 検索ワードを探す旅』を読んでいた。

 

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

 

 

自分はまだこの本を読んではいないのだが、まあタイトルの「弱いつながり(weak tie)」については、最近というかここ2、3年くらいの間に、色々なところで目にするようになった言葉だというくらいの認識は持っている。

 

元々はアメリカの社会学マーク・グラノヴェッターの転職活動に関する研究で用いられた言葉で、ある個人が転職しようとする場合には、「強いつながり(strong tie)」で結ばれた会社の同僚や親類などのアドバイスよりも、最近あまり会っていなかった友人や異業種の知人など、比較的「弱いつながり(weak tie)」で結ばれた人間からの意見を参考に意思決定を行う傾向がある、というもの。

 

一見すると社会は強いつながりによって物事は進んでいくものばかりかと思いきや、案外そうでもなくて、弱いつながりが力を発揮することもある、そんな現実を描き出した概念だ。

 

東浩紀さんは、近頃はどんな活動をされているのかさっぱりフォローできていないのでわからないけれども、以前までの様子だと日本の言論会で若手評論家、言論人を引っ張るような位置(と思われる、実際には違うかもしれない)にいた人、というのが自分の中での認識で、そのご婦人がその東さんの著作を読んでいるというのがなんとも不思議な感じがした。いや、「新鮮だった」と言った方がいいのかもしれない。

 

いったいそのご婦人はどんな動機でその本を手に取り、そして購入し、電車の中で読むに至ったのか。友人・知人の紹介なのか、もともとそういう言論なり社会学なりの分野に関心のある方だったのか、色々想像はできるのだけど、どうもスッキリする解が出てこない。出すには情報不足か推理力が欠如しているということもあるんだろう。

 

世の中では誰がいつ、どんな原因で何に関心をもってどんな行動を起こすかを前もって知ることは難しいのかもしれないけれど、そうは言ってもプロファイリングというか、やっぱり「こういう人はこういうことに関心をもつ、みたいなことって結構言えたりするでしょ」とも思っていたので、なかなか興味深く面白い体験だった。