集団内の情報伝達コストの効率化について

【4488字 目安:10分】 今週号のジャンプのこち亀が面白い。何が面白いかというと、「集団における情報処理」の興味深いパターンがそこに登場するからである。どういうことか。 作品の中で、両さんが祭りの運営に関する詳しい知識を元に、迷子になった子供の…

人とコンテンツの関係について

【1927字 目安:4分】 書店の本というのは、トピックやテーマ、概念、キーワードなど、つまり「何が書かれているか」ではなく、著者、つまり「誰が書いたか」を基準に並べられていることが多い。人文思想の「人格化」という言葉をとある動画で聞いて「確かに…

設計するということ

トヨタのTNGAとTCP/IPの共通点 生物における階層化 モジュール化について トヨタのTNGAとTCP/IPの共通点 2015年5月2・9日合併号の週刊東洋経済のトヨタ特集を読んでいる。トヨタの自動車設計についての新しい構想「TNGA」(「トヨタ・ニュー・グローバル・ア…

来る水素社会について考える

【2037字 目安:5分】 以前から書店で見かけては気になっていたpen+をようやく購入した。 Pen+(ペン・プラス) 大いなる可能性を秘めた 下水道のミライ (メディアハウスムック) 出版社/メーカー: CCCメディアハウス 発売日: 2015/03/24 メディア: ムック この…

集団が情報を処理するしくみ

【3797字 目安:8分】 ①民主主義(democracy) …政治システム。構成員による「話し合い」で解決できるものが問題の中心で、専門的な問題、解決に高度な知識や技術を必要とする問題*1には、専門家の関与が不可欠。決議を構成員全員が行うタイプ(直接民主制*2…

両極端に走りがちな世論

【1745字 目安:3分】 ISIS=イスラム教徒=悪者 という謎の方程式がでっちあげられている印象を受ける。 そしてメディアではその反動として、「イスラム教徒は危ない人達ではない」と主張する記事も増えている。直近で見たものだと例えばこれ。 <a href=…

新聞とテレビについて

メディアの偏向報道が取りざたされることが増えた。いつからか。安倍政権になってからか?安倍政権はイカれてるのだろうか?私としては正直そんなことはどうでもいい。というより、そういう捉え方で実りある議論が成り立つとは思えず、あくまで自分が解決に…

群選択における群の階層

「群選択」(group selection)という言葉を使う場合、通常は自分個人ではなく、自分の所属する集団にとって望ましい選択とされる。気になるのはこの「自分の所属する集団」というところで、互いに階層の異なる複数の集団にある個人が所属している場合、個人…

世論について考える

「世論」(public opinion)がどのように生まれ、変化していくかということに、近頃の私の関心は集中している。その一環として、ジョン・デューイの『公衆とその諸問題』(ちくま学芸文庫)を読んでいる。彼はウィリアム・ジェイムズの影響を受けたプラグマ…

世論の物理学は可能か

世論はどうやって決まるか 代議制民主主義が政治的意思決定のプロセスの基礎を担うようになって久しいが、その一方で「世論」(public opinion)がいかに形成され、変動し、政治や文化、経済、社会というサブシステムを介して特定の決断を下すに至るかという…

社会の中に「うなり」はあるか

時系列上で、ある量が増えたり減ったりする「振動」を繰り返すことによって、そこにはあるリズムが生まれる。週に一度のドラマを例にすると、ドラマを見る日は1、見ない日は0である。なんらかの行動をするかしないかで考える場合には、1か0かという形で…

言葉以前の世界にどう触れるか

世界は言葉よりも前に生まれている。たとえこのことを言葉を使わなければ表現できないとしても、世界は言葉に先立つという事実は揺らがない。 「◯◯以前の世界」という言い方に少し興味がわいている。たとえば男女以前の世界はどうだったのかと言われれば、無…

コロイド的なもの

近頃、塾の生徒を教えるのに高校の化学を学んでいて、「コロイド」(colloid)というのを知った。大きいものが小さいものに溶け込んでいる物質の状態を指すもので、その「大きいもの」のサイズは直径1nm〜100nmの粒子(コロイド粒子という)で、この大きさの…

私は他者と出会っているか

前回の記事では、「祭り」において私と他者とが互いの異質性を失い、同質な存在として集合するということを考えた。或いはもう少し前の記事では、「叶わぬ願望」を契機として、偶像化された他者と、現実とは反転した「理想としての私」とがどのような形で関…

祭りをめぐる集合意識と個人の同質性

最近、木村敏さんの『時間と自己』(中公新書)を読んだ。もともと興味があった本ということで読み始めたのだが、近頃の関心である「大衆」や「集団と個人」というところとも関係する内容であることに気付かされた。 大衆については「多数決で正しいことを決…

道具の使用を禁止するというのはナンセンス

ある道具を巡って問題が起きた時に、その道具を使うことを禁止するという対応が取られることがある。最近こんな記事を見つけた。 生徒との私的LINE禁止 教諭5人免職で埼玉県:朝日新聞デジタル 生徒との私的LINE禁止 教諭5人免職で埼玉県:朝日新…

バレンタインデーの1日

今日は日記風に書いてみようと思う。 バレンタイデーということでGoogleのトップページも案の定面白いことをしている。 去年の10月以来、久しぶりに髪を切った。すっかり前髪が伸びてしまっていて、風の強い日は少し鬱陶しさを感じるような状態だったが、そ…

天気みたいなもの

トピック「本屋」について、幾つかの本をもとに「天気」について考えていることを書いてみようと思う。 天気といえば、国境などおかまいなしに広がって刻々と変化していて、ある時ある国の上空にあった雲が、風に流されて他の国の上空に移動したり、あるいは…

クァンタン・メイヤスー『亡霊のジレンマ』(岡嶋隆佑)を読んで

現代思想 2015年1月号 特集=現代思想の新展開2015 -思弁的実在論と新しい唯物論-作者: 千葉雅也,中沢新一,大澤真幸,赤坂真理,クァンタン・メイヤスー,フィリップ・デスコラ,篠原雅武,重田園江出版社/メーカー: 青土社発売日: 2014/12/27メディア: ムックこの…

正しいことは多数決で決められるか

近頃、大衆(mass)や世論(public opinion)、公衆(public people)という言葉に敏感になっている。それらの言葉をもとにいろいろ想像力をはたらかして、考えることが増えた。たとえば下の記事もそのきっかけのひとつである。 <a href="http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41776" data-mce-href="http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41776">SmartNews鈴木健【第2回】「</a>…

メディアは知性を評価できるか

知性の優れた人が、「優れた人」であることを示すには、わかりやすい「目印」がなければならない。それは例えばノーベル賞であったりする。そのような目印がなければ、いや、本当は目印があったとしても、人はその人の知性に気付かず、したがってそれを評価…

よい面を活かすことのむつかしさ

アニメ「もやしもんリターンズ」の第10話を見ていて思ったことを書いてみようと思う。 そこではワイン作りについて登場人物が会話するシーンがあるのだが、そのシーンを見ていて、 「ああ、何かを科学的に営むというにしても、結局それが人間の手によるのだ…

言葉と冗長性

例によって、全く関係のなさそうなことから始まって、いつの間にか本題に移っている、そんな構成の文章になってしまった。※この一文は冒頭にあるが、順序としては途中に書かれた。 年末年始にかけて、実家にも帰らずに自宅にずっとこもっていた間、勉強をし…

本が読めないのは何が原因か

26歳になって初の投稿は、読書について。 近頃、前に比べて読んでいる本の内容が頭に入ってきにくくなった。 それは本の内容が面白いかどうかということよりも、むしろ自分の側の集中力が衰えているからなんじゃないかという気がしている。どうしたものか。 …

問題と解答はホモトピー?

最近にわかに海外ドラマにハマり、ここ1週間は『ナンバーズ 天才数学者の事件ファイル』を見続けている。尤も、これは海外ドラマにハマっているのか、それとも数学の色んな応用事例に興味があるということのか、錯綜していてよくわからない部分があるけれど…

辞書から見えてくる社会

辞書には、その時の社会が、色々なことをどんな風に捉えているのかが映し出されている。だから、辞書はある意味で、社会を映す鏡であると捉えることができる。 数学的に言うならば「ある種の写像(mapping)の集合体が辞書である」ということになる。個人的…

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(1巻)を読んで

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 1 (ビッグコミックススペシャル) 作者: 浅野いにお 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/09/30 メディア: コミック この商品を含むブログ (6件) を見る 買いました。グノシーで下の記事を見てどうも気にな…

昨夜から起きているちょっとした変化

昨夜、仕事帰りに彼女と3ヶ月ぶりくらいに「タロー」(大森)に食べに行った。そこで2年ぶりくらいに「マゼタロー」(油そば)を食べたのだが、以前はかなり苦労して食べきったのに、昨夜は信じられないくらいさらっと完食してしまった。 店を出て彼女と駅の…

マッチングってなんだろう

テクノロジーが進歩しても、買いたい人と買いたいモノのマッチングは未だに洗練されていないと感じる。 最近はこのマッチングにも科学的な視点が活用される部分が増えてきた。いや、「浸透してきた」と言った方が正確かもしれない。ニューロマーケティング、…

コンピュータの誕生を促したもの

ジョージ・ダイソン『チューリングの大聖堂』を読み始めた。アラン・チューリングが考え出した「チューリング・マシン(Turing Machine)」という、実体のない純粋な概念を、フォン・ノイマンがどうやって形のあるものとして実現したかというところに関心を…