本
湯船にずっと浸かっていると、指に皺ができてくる。その皺をぼんやりと見ていると、二つのことを考えさせられた。 一つは、自分の脳ではなく、生体全体の側から見たら、自分の悩みや喜びなどの精神的な問題と、今まさに刻まれつつある指の皺と、どっちが本質…
こんな動画を見た。もうすでに3回見ている。なんといっても漱石の作品を丁寧に読み解いていくことによって話があっちこっちへつながり、内容がどんどん膨らんでいくのが面白い。専門分野にとらわれずに関連する他の領域の議論もどんどん取り込みながら自説を…
ある対話 表音文字と表意文字 インターネットと検索エンジンとことば 書くことの中に私を求めて ある対話 今日は久々に元彼女と会って渋谷のスターバックスで話した。11:40頃から15:40頃までの間であるから、おおよそ3時間半から4時間というところだ。この長…
ブックオフへ行くと、少し前に人気があったはずの本、世間を賑わせた本、ベストセラーとされていたはずの本があるのを見かける。そういう本が一体どうして、所有者の手を離れて、今やこの棚に静かに収まっているのだろう。そういう本をぼんやりと見ていると…
世界を動かすものは経済か。そうではない、思想である、或いは権力である。そう考えることはたやすいが、いきなり思想や権力に注目するのでなく、あえて経済に注目し、そこに潜む思想性を明らかにしていくという迂回路を経た方が、世界を動かすものについて…
今日の夕方頃、彼女と家で「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(「あの花」)*1を見ていた。作品の内容についてはここでは語らない。私にとっては4周目で、作品自体よりもそこから連想するものや比喩的に描かれているもの、象徴しているものにつ…
アメリカで金融工学(financial engineering)という分野が流行り、さらにはHFT(High Frequency Trade:高頻度取引)が発達したのは、アメリカ人にとって「リスク」(risk)というものが、もっと言えば「恐怖」(terror)に対する観念が、彼ら・彼女らの様…
ジャン・ジャック=ルソーの社会契約論(Social Contract Theory)とジョン・スチュアート=ミルの代議制(Representative Democracy)は、必ずしも論理的に結びつかない。今では運命の赤い意図で結ばれた男女のごとく結びついているが、そこに運命の赤い糸…
施光恒さんの『英語化は愚民化』という本の出版記念イベントの動画を見つけ、ここ最近の自分の関心リストのひとつである「日本人にとってのことば(日本語)とはなにか」ということと関係しそうだと思い、見てみた。対談の相手は柴山桂太さん。柴山さんが語…
先日書いた記事*1の中で、「~ということは統計によって示されている」という形の構文がネット上の実に色々な領域の色々な人々によって使われていて、それが読む人間の思考停止につながっているのではないかということについて触れた。ここで「思考停止」と…
小さい頃からずっとそうなのだが、私は政治や社会というものに対して、あまり親近感というか、「自分自身がその一部である」という実感を持つことができない。この疎外感というか傍観的な態度というようなものは、東浩紀のいう「オタク」*1的なものとは少し…
今日は久々に大学時代の友人と会って話をした。話は多岐に渡ったので、話題ごとに切り分けて記事を書いていこうと思う。まずは「要約」、論文でいうと「アブストラクト」(abstract)について。 人が何かを書くとき、実はその文章或いは作品がすでに「要約」…
ここにあるプログラマーがいる。彼は昼夜逆転の生活を送り、昼頃からもぞもぞと起き出してきて、コーラを飲みながら画面とのにらめっこを始める。そういう生活スタイルが、彼の描くコード(プログラム)と完全に無関係とは言えないのではないか、とふと思っ…
ここ数年、特に一企業や産業、或いは社会を論じる文脈で「多様性」(diversity)の重要性が強調されるのを目にすることが増えた。しかしその中の多くはビジネスに関するもので、多様性がイノベーションをもたらすとか、もうちょっと小利口な理屈をつけられて…
霊、妖怪、化け物、エイリアン、モンスター…。国は違えど人間は恐怖の対象に形を与えずにはいられないものらしい。それは「形がない」(対象自体を認識できない)という事態を少しでも解消したいという欲望がそうさせるのではないか。それらは姿形が与えられ…
次から次へと新しい記事や本を読むということが自分にとってはどんな意味をもっているのかについて、最寄り駅から自宅に戻る途中で、特にセブンイレブンの近くを歩きながら考えたことについて書こうと思う。 新しい言葉や言説を読むと、それがきっかけとなっ…
Googleで私が私のiPhoneで「タミル語」と検索するのと、別の人間がその人のiPhoneで同じ語句を検索するとき、その2つは違うものだとみなされる。それぞれの検索履歴上に「タミル語で検索し、これこれのページを見た」という記録が残り、そこから先の検索で…
『なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術』*1という本を書いたバリー・シュワルツ(Barry Schwartz)という人がいる。TEDで講演*2もしている。私が彼のことを知ったのはTEDの「The Paradox of Choice」(選択のパラドックス)という講…
「レールの上を進む人生」という表現がよく使われる。レールとはそもそもは鉄道のレール(線路)のことだから、これは隠喩である。隠喩とは、「まるで〜」とか「〜のように」という表現を付けず、何を例えたのかはっきりさせないままで使う比喩表現である。 …
「もっと他のことを考えたい!」という欲求から、いろいろなことを「自動化」(=習慣化)していきながら、そうやって習慣化されたことは無意識に沈殿し、意識の領域に影響を及ぼす。 意識の領域で考えられることを増やすために習慣化したのに、皮肉なことに…
井の頭線吉祥寺駅の改札近くにスターバックスがある。久しぶりにそこで読書をしながら過ごしている。窓際の席だから、窓から駅の構内を移動するいろいろな人が歩いたり走ったり誰かを待っていたりするのが見える。 さっき、金髪で深緑のコートを着た女性が駅…
自宅の近くに餃子とラーメンが食べられる(定食もある)店がある。さっき久しぶりにその店で食べてきた。 注文した札幌ラーメン(味噌)とチャーハンを待っている間、店の入り口に並べられた漫画の中から面白そうなものを探していると、以前から書店で見知っ…
よくツイッターなどでハッシュタグ(#)のついたツイートを検索したりする。そこで新しいものが見つかるかもしれないと思って、いろいろなユーザーのツイートを見るのだが、基本的には新しいものに出会えることはない。それはどうしてか考えていて、さっき…
第2章 第1の変化「すべてのデータを扱う」 1. ジェフ・ジョナスの「データに語らせる」見解に関する2010年12月パリでのジェフ・ジョナスとの対話について:リンクなし 2. 米国の国政調査の歴史 U.S. Census Bureau, "The Hollerith Machine" Online histor…
第1章 世界を変えるビッグデータ 1. インフルエンザの流行に関する論文 Jeremy Ginsburg et al., "Detecting Influenza Epidemics Using Search Engine Query Data" Nature 457 (2009), pp.1012-14 2. ジョンズホプキンス大学研究チームによるGoogle Influ T…
いつもどおりバイト先から帰っている途中、電車の中で『ビッグデータの正体』の第5章を読んでいたら、その中でScience誌の論文が紹介されている箇所があった。そこで、より詳しい情報を確認しようと思い、巻末の注を見ていたらふと思った。 どうして紙の本の…
先日こんな記事を読んだ。 diamond.jp 記事の中で述べられていることだが、マッキンゼーの人たちはプレゼンをするとき、難解な専門用語はほとんど使わず、あくまで日常の言葉でプレゼンするらしい。下手に「ファネル」だの「マトリクス」だのと「それらしい…
少し前の記事に書いたように、最近は自分の関心がコンピュータ科学の領域に絞られてきた。 plousia-philodoxee.hatenablog.com そこで人工知能に関する書籍のうち、いわゆる「人工知能は人類を滅ぼす」というような思想方面の書籍は避け、機械学習やディープ…
【目安時間:10分】 関心の変化 検索エンジンの役割について再考する あえて情報を引き出す手間をかけることの意義 人工知能と検索エンジンの関係という問題 関心の変化 久々にブログを更新する。前回の記事は大学院の院試の直前で、まだそれに向けてルベー…
2ヶ月以上も更新していなかった。今年は割とちゃんと記事を書き続けてきたものの、最近になって急に記事を書く気がなくなってしまっていた。いろいろと悩んだりすることもあり、精神的に停滞しきっていた。 それでもひょんなことがきっかけであっさり元通り…