コミュニケーション

情報との向き合い方について

情報の時代だとか情報爆発などと言われる。私個人についていえば、フィード購読アプリFeedlyを使って、毎日色々なメディアの記事をチェックしている。精読するのはごく少数の記事に限られるけれども、それでも色々な記事を読むことになる。新聞を隅から隅ま…

隠喩としての鉄道或いは自転車

「レールの上を進む人生」という表現がよく使われる。レールとはそもそもは鉄道のレール(線路)のことだから、これは隠喩である。隠喩とは、「まるで〜」とか「〜のように」という表現を付けず、何を例えたのかはっきりさせないままで使う比喩表現である。 …

オリジナリティとはなんだろう

塾で高校生に英語の授業をしていた時、いつもの調子で何気なく生徒が言った「うまく言えないんだけど〜」という表現について、ふと考えていた。 言葉というのは、「空気を読む」や「やばい」など、特定の言葉をみんなが使うようにしておくことで、話し手と聞…

ロードバイクを買って思ったこと

ロードバイクを購入した。以前はネットで30000円クラスのものに乗っていたが、パーツ交換などでやたらお金がかかることもあって、ある程度値段のするちゃんとしたロードバイクを実店舗で買おうと考えた。 自分がここへきて突然のようにロードバイクの購入を…

私たちが対話の相手ではなく画面を見つめるようになって何が変わったか

高校生の現代文で出てくる評論の文章からは学べることがかなりあるのでたまに読み返してみたりする。昨日も若林幹夫「メディアと市民的公共性」という文章を読んだのだが、メディアと人間の関係について改めて考えさせられるいいきっかけになった。こういう…

「人間は変わらないさ」とアルゴリズムは考える

Feedlyで購読しているTechCrunchのサイトで「Past Behavior Does Not Determine Future Purchase」というタイトルの記事を見つけた。*1 タイトルを意訳風に訳すと「ネット上での過去の行動によって、これから買うものは決まったりしないよ」というところ。最…

言葉の問題、検索の問題

昨日、母とメールで「格差」についてのやりとりをした。私は最近読んでいるモイセス・ナイム『権力の終焉』の内容などを引き合いに出しながら、こんな風に書いた。 「世間ではトマ・ピケティの書いた『21世紀の資本』などを中心に、格差、格差と言っているが…

言葉にこだわることは、ロジックにこだわること

先日こんな記事を読んだ。 diamond.jp 記事の中で述べられていることだが、マッキンゼーの人たちはプレゼンをするとき、難解な専門用語はほとんど使わず、あくまで日常の言葉でプレゼンするらしい。下手に「ファネル」だの「マトリクス」だのと「それらしい…

集団内の情報伝達コストの効率化について

【4488字 目安:10分】 今週号のジャンプのこち亀が面白い。何が面白いかというと、「集団における情報処理」の興味深いパターンがそこに登場するからである。どういうことか。 作品の中で、両さんが祭りの運営に関する詳しい知識を元に、迷子になった子供の…

どの範囲から何を引き出すか

自分の頭とシステム上の記録 時間 検索エンジンの基本を振り返る 結局どれが一番効率的か 自分の頭とシステム上の記録 「どの範囲から何を引き出すか」というのはけっこう難しい問題で、自分自身はどうかということを振り返っていくつかに分類してみると、次…

電車の中のセル・オートマトン

【432字 目安:1分】 電車の中で、音出してスマホのゲームしてるヤンキーみたいな格好した若いあんちゃんがいて、シャンシャンシャンシャン音がうるさいから直接言おうかと思ったけど、今日はできなかった。 彼は他の人に言われることもなく、したがって自分…

高校の数学Aを日常に応用する

【509字 目安:1分】AならばBが成り立つとき、BだからといってAとは限らない。日本人だから人間だ、が成り立つからといって人間であれば日本人であるとは限らない。能力や人格が優れた人ならばお金をたくさん稼げる、が成り立つからといって、たくさん稼げた…

様々なる情報処理

【1462字 目安:2分】 名前からして当然といえば当然なのかもしれないが、情報処理の効率性についての研究が一番進んでいるのはやっぱり情報科学の分野だろう。 情報処理に使う「要素」の数の多さに対する効率性という点で。 この分野の技術進歩は著しく、今…

両極端に走りがちな世論

【1745字 目安:3分】 ISIS=イスラム教徒=悪者 という謎の方程式がでっちあげられている印象を受ける。 そしてメディアではその反動として、「イスラム教徒は危ない人達ではない」と主張する記事も増えている。直近で見たものだと例えばこれ。 <a href=…

新聞とテレビについて

メディアの偏向報道が取りざたされることが増えた。いつからか。安倍政権になってからか?安倍政権はイカれてるのだろうか?私としては正直そんなことはどうでもいい。というより、そういう捉え方で実りある議論が成り立つとは思えず、あくまで自分が解決に…

しるしのつながり

私はよく誤解をする。「〜は〜だからではないか?」「〜と言ったあの人の意図は〜ということなのではないか?」「〜というこの状況は〜ということを意味しているのではないか?」など、それはもう色々なしかたで誤解する。 「精神的な距離は物理的な距離とし…

「かわいそう」と「ひいてる」の使い方

「かわいそう」という言葉は、「かわいそうだ」と思う人のいるその場で使ってはいけないんだと思う。「かわいそう」という言葉もまたその人を傷つける。 同じように、「〜さんひいてるじゃん」という言い方も、その「ひいてる」ように見える人のいるその場で…

群選択における群の階層

「群選択」(group selection)という言葉を使う場合、通常は自分個人ではなく、自分の所属する集団にとって望ましい選択とされる。気になるのはこの「自分の所属する集団」というところで、互いに階層の異なる複数の集団にある個人が所属している場合、個人…

陰謀論はどうしてこんなに流行るのか

政権批判の材料として、しばしば「陰謀論」(conspiracy theory)が語られる。 現政権は〜しようとしているのではないか?(主観的な確率20%) →〜しようとしているしたら◯◯や△△にも合点がいく(勝手に確率50%を上回る) →◯◯や△△は現政権が〜しようと…

誰かが1を言えば、すぐに100になってしまう風潮への違和感

安部総理の「我が軍」発言が左翼(「安部政権は日本を滅ぼす」論者、日本亡国論者、「軍国主義」*1反対論者など)の間で問題になっている。20日の参院予算委員会で自衛隊を指してこのように発言した。総理自身のその後の発言では、 「共同訓練に関する質疑の…

SNSにおける「悪意」の拡散

SNSを見ていると、「悪意」をもった書き込みがすごい勢いで拡散・展開していくのをよく目にする。「いいね!」や「RT(リツイート)」など、SNSは個人の投稿を拡散することがシステムの根幹をなすように設計されている。特にFacebookは「羨み(Envy)」を拡…

世論について考える

「世論」(public opinion)がどのように生まれ、変化していくかということに、近頃の私の関心は集中している。その一環として、ジョン・デューイの『公衆とその諸問題』(ちくま学芸文庫)を読んでいる。彼はウィリアム・ジェイムズの影響を受けたプラグマ…

世論の物理学は可能か

世論はどうやって決まるか 代議制民主主義が政治的意思決定のプロセスの基礎を担うようになって久しいが、その一方で「世論」(public opinion)がいかに形成され、変動し、政治や文化、経済、社会というサブシステムを介して特定の決断を下すに至るかという…

私は他者と出会っているか

前回の記事では、「祭り」において私と他者とが互いの異質性を失い、同質な存在として集合するということを考えた。或いはもう少し前の記事では、「叶わぬ願望」を契機として、偶像化された他者と、現実とは反転した「理想としての私」とがどのような形で関…

道具の使用を禁止するというのはナンセンス

ある道具を巡って問題が起きた時に、その道具を使うことを禁止するという対応が取られることがある。最近こんな記事を見つけた。 生徒との私的LINE禁止 教諭5人免職で埼玉県:朝日新聞デジタル 生徒との私的LINE禁止 教諭5人免職で埼玉県:朝日新…

天気みたいなもの

トピック「本屋」について、幾つかの本をもとに「天気」について考えていることを書いてみようと思う。 天気といえば、国境などおかまいなしに広がって刻々と変化していて、ある時ある国の上空にあった雲が、風に流されて他の国の上空に移動したり、あるいは…

正しいことは多数決で決められるか

近頃、大衆(mass)や世論(public opinion)、公衆(public people)という言葉に敏感になっている。それらの言葉をもとにいろいろ想像力をはたらかして、考えることが増えた。たとえば下の記事もそのきっかけのひとつである。 <a href="http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41776" data-mce-href="http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41776">SmartNews鈴木健【第2回】「</a>…

集団で決めること

集団で正解を考え、判定すること、つまり「民主的手続きによる決定」において、集団の中ではたらく力学と、議論の参加者の間で著しい情報の非対称性が存在する状況での情報強者の役割について考えている。それは互いに異なる者どうし、私と他者との相互作用…

答え合わせのないまま進む議論と、それについていく人々

近頃、知識や思想、体系の伝わり方ということについて、心配に思うことが多い。 例えばある著名な人の講演会やトークライブなどで、専門知識のない人が専門家同士の議論を聞いていても、内容が専門的でどちらが正しいか判断できないということがある。専門家…

情報化時代で問題になるのは「意識」だと思う

「無意識」について考えていて、そこから発展した、情報化と意識の関係についての考えを書いてみようと思う。 人間が普段やっている判断の9割以上は無意識によって決定されている、と言われる。人間というのはともすると、「意識してものを考えたり感じたり…